ほけんのコスパ
がん保険は重複して加入すべき?複数加入するときのポイントと自分に合った保険の選び方をプロが解説
がん保険

がん保険は重複して加入すべき?複数加入するときのポイントと自分に合った保険の選び方をプロが解説

執筆者:
橋本 優理
橋本 優理
監修者:
宮澤 顕介
宮澤 顕介

がん保険に複数加入しても意味はある?」「がん保険と医療保険の重複が気になる」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

がん保険は商品ごとに強みが異なっているため、複数のがん保険に加入することでより手厚い保障を用意できるのではないかと考える人もいるでしょう。

また、医療保険だけではがん保障が不十分と思い、がん保険を追加で検討している人も多いでしょう。

今回は、そもそも複数のがん保険に加入することはできるのか、保障内容が重複していても給付金を受け取れるのかといった疑問を解消していきます。

また、がん保険の賢い選び方についても保険のプロが詳しく解説します。

この記事を読んでわかること

  • がん保険に重複して加入していても、受給要件を満たしていればそれぞれの保険から給付金を受け取ることができる

  • がん保険だけでなく、必要に応じて医療保険を組み合わせておくことでより幅広い保障を準備できる

  • がん保険に重複加入することで、保障過多にならないよう注意

がん保険に重複加入しても給付金は受け取れる

がん保険に重複加入していても、それぞれの支払基準を満たしていればどちらからも給付金を受け取ることができます。

複数のがん保障を持っていても無駄になることはありません。

また、医療保険とがん保険の保障内容が一部重複する場合もあります。


保障内容が重複しているケースでも、医療保険とがん保険の両方から給付金を受け取ることが可能です。

そのため、医療保険の保障内容だけではがん保障に対して不安を感じることがあれば、追加で新たにがん保険に加入するのも良いでしょう。

注意点

ただし、複数の保険会社や商品に分けて保障を準備する際、あまりに保障額の合計が大きくなると「通算制限」で加入できないこともあるため注意しましょう。

そもそもがん保険の複数加入は必要?

がん保険に複数加入する必要があるかどうかは、人によって異なります。

がん保険には、診断一時金をメインとするものと治療給付金をメインとするものの、大きく2つのタイプに分けられます。

例えば、すでに治療給付金をメインとするがん保険に加入しており、追加で診断一時金を検討したい場合は、新たに診断一時金をメインとするタイプのがん保険を検討するのが良いでしょう。

また、がん保険の中には入院保障が充実しているものや、女性特有のがんに手厚く保障できるものなどさまざまな種類があります。

現在加入中のがん保険だけでは保障が十分でないと感じているのであれば、がん保険の複数加入を検討してみましょう。

そのほか、給付金の支払条件だけでなく、保険に付帯されているサービス内容にも違いがあります。

セカンドオピニオンの紹介サービスや、メンタルケアサービスなどを提供している保険会社もあるので、加入時に確認しておくのがおすすめです。

がん保険と医療保険の違い

がん保険は文字通りがんという病気を保障する保険であるのに対し、医療保険はさまざまな病気やケガでの入院・手術を保障する保険です。

主な保障の目的が異なっていますが、医療保険にはがん保険のような特約を付加することができるので、医療保険1つの契約でがん保障を持つことも可能です。

一方で、がん保険に医療保険のような保障を付加することはできないため、契約をまとめたい場合は医療保険を検討するのが良いでしょう。

すでに医療保険に加入していて、がん保障を追加したい場合はがん保険を別途検討しましょう。

がん保険は、がんと診断されたときに受け取れる一時金の保障や、抗がん剤治療に対応した保障を用意することができます。

それぞれの保険の違いを理解したうえで、自分のニーズに合った保障の組み合わせを選ぶことが大切です。

がん保険と医療保険どっちに加入すべき?

基本的には、病気やケガでの入院・手術を幅広く保障する医療保険で、保障の基礎を作っていくのが良いでしょう。

しかし、医療保険だけではがんによる通院治療や、収入減少に備えることはできません。

がんに備えたいと考える人は医療保険と併せてがん保険に加入するか、医療保険にがん特約を付加するのがおすすめです。

一方で、ある程度の貯蓄があり、少しの入院や手術くらいであれば貯蓄で対応できるようであれば、医療保険の必要性は低くなります。

経済的負担が大きくなることが予想されるがんにだけ備えていれば安心な人は、がん保険のみ加入しておくのも良いでしょう。

参考)がんの治療費

実際にがんに罹患した場合、どれくらいの治療費が必要になるのでしょうか。

2022年度の調査によると、がんによる入院1回あたり必要になる費用は90万円~120万円ほどとなっています。

がんの種類やステージによって異なる部分もありますが、平均して100万円前後の治療費が必要になることがわかります。

ここから、公的医療保険制度を利用することで自己負担額を軽減させることができます。

入院など医療費が高額になるケースでは公的制度である高額療養費制度を使うことができますが、実際の自己負担額は世帯の収入によって大きく異なります。

まずは、公的医療保険制度を理解したうえで、保険の必要性について考えるのが良いでしょう。

加えて、個室療養のための差額ベッド代や入院時の食費は、全額自己負担になることにも注意しましょう。

(参考:2022年度重症度別急性期グループ医療費:診療アウトカム評価事業 | 公益社団法人全日本病院協会

参考)先進医療費用

先進医療とは、厚生労働省が認めた高度な治療法のことで、公的医療保険制度を適用できない特徴があります。

そのため、全額自己負担が必要で、費用が高額になることも考えられます。

特に、がんの治療で利用される「重粒子線治療」や「陽子線治療」は、自己負担額が200万円~300万円にのぼるとされています。

いざというときに費用を気にせず最善の治療をしたいと考えるのであれば、先進医療に備えておく必要があるでしょう。

保険広告画像

がん保険に重複加入するメリット・デメリット

がん保険に複数加入することは可能ですが、メリットとデメリットがあります。

自分にとってがん保険を重複して持つことはメリットが大きいのか、事前に考えてから選択することが大切です。

メリット

がん保険に重複加入することで、より手厚い保障が得られるメリットがあります。

さらに詳しく解説していきます。

充実した保障を備えられる

がん保険は、商品ごとに強みとする部分が異なっています。

そのため、複数のがん保険を組み合わせることでより充実した保障を用意することができます。

例えば、診断一時金に手厚いがん保険と、通院でのがん治療に手厚いがん保険を組み合わせることで、それぞれ異なるタイミングで給付金を受け取ることができます。

また、保障を重複させることで受け取れる給付金の額も大きくなるため、今加入しているがん保険の保障額が物足りないと感じているのであれば、新たながん保険に追加で加入するのも良いでしょう。

現状のがん保険では保障が不足していると考える人や、各商品の強みを活かして手厚い保障を準備したい人には、重複してがん保険に加入するメリットがあるといえます。

保険ごとの役割が明確になる

保険には主契約といわれる契約のメイン部分と、特約といわれるオプション部分があります。

特約部分は契約後も解約できるものが多いですが、主契約を解約すると契約すべてが消滅してしまいます。

そのため、保険契約をいくつかに分けておけば、特定の保障が不要になったときにその契約だけを解約することが、より自由にできます。

将来的に保険の見直しなどを柔軟にできるようにしておきたいようであれば、複数の保険に加入するのも選択肢のひとつとなります。

その分、自分の契約を管理していくことも必要になりますが、契約をひとつにまとめるよりも自由度が高く見直しできるため、メリットもあるといえるでしょう。

デメリット

一方で、がん保険に重複加入することによるデメリットもあります。

どのようなデメリットが考えられるか、詳しく解説していきます。

保険料が増える

がんに対する不安が大きいからといってたくさんの保険に加入しすぎると、その分毎月の保険料負担が大きくなってしまいます。

年間の保険料の目安の1つとして、年収の6%〜8%程度が良いといわれています。

この保険料の合計は、がん保険だけでなく医療保険やその他の保険もすべて合わせたものです。

各家庭の世帯構成や家計の状況によって異なるため、資産形成目的の保険については単純に保険料合計に加えるべきではありません。

あくまでも参考として考えましょう。

保険は、今後も継続可能な保険料の範囲内で安心できる保障を用意する考え方が大切です。

保険料負担が大きすぎて解約することにならないように予算を決めておきましょう。

給付金を請求する手間や費用が増える

POINT

複数の保険会社の商品に加入していると、給付金を請求する際にいくつもの会社に連絡をして手続きをする必要があります。

場合によっては、加入している会社分の診断書を用意しなければならないこともあり、費用がかかります。

保険は加入したらそれで終わりではなく、実際にいざというときには給付金請求をしなければなりません。

保険加入後の管理についても考慮しておく必要があります。

手続きの手間や費用を減らしたい場合は、保険契約をできるだけひとつにまとめたほうが良いでしょう。

保障内容が重複しやすい

がん保険は商品ごとに強みとなる部分が異なっているとはいえ、大まかな保障の範囲は重複しています。

そのため、必要以上の過剰な保障にならないかは注意が必要です。

例えば、がん保険で一般的な保障の「診断一時金」は、受け取れる回数や条件などは保険会社によって細かい違いがあります。

しかし、がんと診断された段階でまとまったお金を受け取れる点は同じです。

複数のがん保険に加入していても、実際は保障が重複していて必要以上に保険料を支払っていることが起こりえます。

自分にとって必要な保障を効率よく準備しておくことも大切なポイントです。

受け取れる給付金のシミュレーション【ケース別】

実際にがん保険に加入していた場合、どれくらいの給付金を受け取ることができるのかをシミュレーションしてみましょう。

40代男性の場合を例に挙げます。

持ち家で住宅ローンを契約しており、この年代に多い「大腸がん」に罹患してしまったとします。

入院手術に加え、一般的な通院治療をした場合、どのタイミングでどれくらいの給付金が受け取れることになるでしょうか。

2つのがん保険に加入していた場合

もし、診断一時金の保障と通院治療ごとに給付金を受け取れる保障のどちらにも加入していた場合、給付金を受け取れるタイミングは、がん診断時と、通院での薬剤治療を受けた月です。

がん診断一時金100万円のがん保険に40歳で加入していた場合、平均的な月々の保険料は3000円~4000円程度になることが多いでしょう。

治療給付金が月10万円受け取れるがん保険に同じく40歳で加入していると、平均的な月々の保険料は1500円~2500円程度※になることが一般的です。

上記2つの保険に加入していた場合、まずは大腸がんと診断された時点で診断一時金の100万円を受け取ることができます。

その後の通院治療は個人差がありますが、仮に1年間毎月抗がん剤治療を受けたとすると、治療給付金を合計120万円受け取ることができることになります。

入院と手術のみで寛解しその後の通院治療が必要なかった場合であれば、受け取れるのは診断一時金の100万円のみとなります。

※終身払いを想定。特定の保険商品の保険料を示すものではありません。

がん保険と医療保険に加入していた場合

一時金タイプのがん保険と医療保険に加入していた場合、がん診断時と、入院や手術をしたときに給付金を受け取ることができます。

保険料イメージは、がん診断一時金100万円のがん保険に40歳で加入していた場合、平均的な月々の保険料は3000円~4000円程度、医療保険は付加する特約や保障額によって変わりますが平均2000円前後※と想定できます。

上記2つの保険に加入していた場合、まずは大腸がんと診断された時点で診断一時金の100万円を、その後の入院で日額保障や手術保障を受け取ることができます。

がんの入院は平均18日程度なので、日額5000円の医療保険に加入していた場合、受け取れる金額は以下の通りです。

※終身払いを想定。特定の保険商品の保険料を示すものではありません。

5,000円×18日=9万円

手術を受けた場合は上記に加えて、数万円~数十万円の給付金が受け取れます。

ただし、医療保険は入院を保障する保険のため、退院後通院で薬剤治療を受けた場合には受け取れる給付金はないので注意しましょう。

(参考:令和2年度患者調査|厚生労働省

がん団信とがん保険に加入していた場合

がん団信とがん保険に加入していた人ががんに罹患した場合、ローンの残額が免除となり、加えてがん保険で給付金を受け取ることができます。

死亡時のみ対象となる一般的な団信に比べ、がん団信は住宅ローンの金利が高くなりますが、いざというときに住宅費用を支払わなくてよくなるのは大きなメリットです。

また、がん診断時に住宅費が不要になることで、がん保険の保障内容も最低限治療費をまかなえる範囲で十分かもしれません。

しかし、がん団信では上皮内がんなどの初期発見のがんは、保障対象とならないこともある点には注意が必要です。

がん団信の保障範囲を確認したうえで、上皮内がんが対象外である場合は民間のがん保険で備えておくのが良いでしょう。

保険広告画像

自分に必要ながん保険に無駄なく加入する方法(選び方)

必要な保障は人それぞれの経済状況や考え方によって異なります。

ここからは、自分にとって必要ながん保険に無駄なく加入するための選び方についてご紹介します。

保障は必要最低限で保険料を抑えたい人

がんに対しての保障は必要最低限で、可能な限り毎月の保険料を抑えたい場合、最低でもがん診断一時金がもらえるタイプの保険に1つ加入しておくのがおすすめです。

診断一時金タイプであれば、がん診断時にすぐにまとまったお金を受け取ることができるため、その後の治療費負担や収入の減少などさまざまなリスクに備えることが可能です。

診断一時金にさまざまな特約を付加できるがん保険もありますが、保険料を抑えたいようであればシンプルなプランを選ぶのが良いでしょう。

診断一時金の額は、おおよそ年間でがん治療に必要になる金額をまかなえる金額に設定しておきましょう。

高額療養費制度などの公的医療保険制度を利用したとしても、1年間継続した治療を受けた場合には100万円前後の負担が必要になるケースもあります。

そのため、診断一時金の目安として100万円前後で設定する人が多い傾向にあります。

保険料は抑えつつ幅広く保障を持ちたい人

保険料は抑えたいけれど、がんだけでなく幅広い病気やケガに備えておきたい人は、がん保険と医療保険に併せて加入しておくのがおすすめです。

医療保険は、原因を問わず病気やケガで入院・手術をした際に保障される保険ですが、それだけではがんによる収入減少や通院治療での費用負担に備えることはできません。

シンプルなタイプの医療保険に加え、診断一時金タイプのがん保険を組み合わせることにより、保険料を抑えながら充実した保障を用意することができます。

もし、2つの契約に分かれることで将来的な管理が難しいと感じる場合は、医療保険にがんの診断一時金特約を付加することで、1つの医療保険でがんの保障にも加入しておくことができます。

将来的に保険の見直しをしたい人は医療保険とがん保険で別の契約にしておくのが良いでしょう。

自分の考え方やニーズによって保障の組み方を選ぶのがおすすめです。

保険料を抑えつつがんに対する保障を手厚く持ちたい人

がんに対する保障を手厚く持ちたい場合、診断一時金と治療給付金のどちらもがん保険で準備しておくのがおすすめです。

診断一時金と治療給付金では給付金を受け取れるタイミングが異なっており、それぞれ違う使い方が可能です。

例えば、診断一時金は向こう1年間の生活費の補填や、ウィッグの購入費や雑費など、お金が必要になった段階で好きなように活用することができます。

治療給付金は、治療を受けた月ごとに受け取ることができるため、病院に支払う医療費として活用できます。

手厚く保障を持っておきたいようであれば、診断一時金と治療給付金のどちらも準備しておくことで、いざというときに治療費だけでなく収入の減少や思わぬ出費にも備えられるでしょう。

先進医療の選択肢を持ちたい人

がん治療と向き合うとき、先進医療などの公的医療保険制度対象外の治療も選択肢として持っておきたい人は、がん保険に先進医療特約を付加したプランを選びましょう。

また近年、がんによる自由診療を保障対象としているがん保険も増えています。

自由診療とは、日本では未承認の薬剤などを使う治療のことを指します。

公的医療保険制度が適用できず、数百万円にのぼる自己負担が必要なケースもあるため、がん保険で備えておく人も増えています。

なお、先進医療特約は1つの保険会社で被保険者1人につき1つまでしか付けられません。

したがって、医療保険とがん保険を同じ保険会社で申込む場合には注意が必要です。

まとめ

今回は、がん保険に重複して加入するメリットやデメリットについてお伝えしてきました。

手厚い保障を求める場合や、今加入している保険で不足している部分がある人は、がん保険の複数加入を検討するのも良いでしょう。

一方で、必要のない保障を重複して持っていても、あまり意味がないかもしれません。

自分にとって必要な保障を効率よく準備しておくことが大切です。

とはいえ、自分ひとりで必要な保障を決めるのは難しいと感じる人も多いでしょう。

ほけんのコスパの「ほけん必要度診断」では、いくつかの質問に答えることで自分にとってどんな保障が必要かを診断することができます。

1分で簡単に結果を見ることができるので、ぜひ保険選びの際には活用してみてはいかがでしょうか。

宮澤 顕介

監修者 ファイナンシャルアドバイザー

宮澤 顕介

明治大学商学部卒業後、みずほ銀行、オリックス等をはじめとした金融機関で勤務。現在は、一種外務員、生命保険募集人、FP2級等の資格を保有し、ファイナンシャルアドバイザーとして活動。個人向けマネーセミナーでも登壇。長期・分散・つみたて投資の重要性を発信するとともに医療保険の見直しも得意としている。

橋本 優理

執筆者 元保険代理店プランナー/保険ライター

橋本 優理

大学卒業後、ほけんの窓口グループ株式会社へ入社。約300組のライフプランニングを行い、保険販売業務に従事。その後、異業種にて法人営業を経験し、株式会社エイチームフィナジーで保険EC事業の立ち上げに参画。インターネット上で保険の無料相談ができるサービスの責任者として、自身も多くの世帯のライフプランニングを行う。2023年に株式会社モニクルフィナンシャル入社。現在は、より多くの人に、より気軽に、自分に合った保険の選び方を知ってほしいとの思いでコンテンツ制作や執筆作業に従事。

がん保険

がんに備える

がん保険 さがす

本記事の内容は記事公開時や更新時の情報です。国が定める法律・規約の変更等により、サイト掲載情報に一時的に相違が生じる可能性がございます。 また、本記事の内容は予告なしに変更することがあります。予めご了承ください。