働けなくなった時に備える
就業不能保険
就業不能保険とは、病気やケガで一定期間働けない状態になったときの、収入の減少に備える保険です。働けなくなった後の、毎月の生活費や住居費用をまかなうことを目的としています。
就業不能保険保険料シミュレーション
就業不能保険を知る
病気やケガで長期間働くことができなくなった場合、収入が減少してしまうことが考えられます。就業不能状態になった場合の公的な制度を確認したうえで、生活費の不足分を補う保険を検討しましょう。
監修者 元生命保険会社ソリシター/バックオフィサー
大野 貴史
大学卒業後、地方銀行へ入行。法人・個人融資業務、リテール営業に従事。その後、大手生命保険会社にて代理店営業に携わり、経営サポートや営業員の育成、ガバナンスの構築など、企業経営に関わる数多くの業務を経験。現在は株式会社モニクルフィナンシャルに入社し、銀行・生命保険会社の経験で培った経験を基に、自社営業員の育成、金融商品に関する調査・分析等の業務を行う。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員(証券外務員一種)の資格を保有。
執筆者 元生命保険会社ソリシター/バックオフィサー
小甲 将大
大学卒業後、大手コンビニエンスストア会社に入社し、スーパーバイザー業に従事。発注業務や顧客目線を意識した売り場づくりを通じて調査力や分析力を養う。その後、大手生命保険会社にて代理店営業に携わり、営業員の育成やガバナンス態勢の支援などの業務を経験。現在は株式会社モニクルフィナンシャルに入社し、生命保険商品に関する調査・分析や、保険EC事業の立ち上げ等に従事。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)の資格を保有。
就業不能保険とは
生命保険の多くは、万が一(死亡や病気・ケガなど)が起きてしまった場合に発生する支出(費用)に備える仕組みとなっていいます。
例えば、医療保険は病気やケガをしてしまった際にかかる医療費(入院や手術などの治療費)をカバーするための保険です。
一方で、就業不能保険とは、病気やケガにより長期間働けなくなることで起きる収入減少に備える仕組みの保険です。
長期間働けなくなる状態を就業不能状態といいます。
保険会社所定の就業不能状態が続く限り、給付金を受け取り続けることができます。
就業不能状態とは
保険会社によってその定義はさまざまです。
ある保険会社では就業不能状態を「病気やケガの治療のため入院している状態」や「病気やケガで、医師の指示を受けて在宅療養をしている状態」と定義しています。
その保険会社でどういった状態を就業不能状態と指すのか、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
日本には、傷病手当金など就業不能状態になった際に受けられる公的保障がありますが、それだけでは足りないといったケースも多々あります。
とりわけ、自営業者やフリーランスは有給休暇や傷病手当金といった保障がないため、会社員や公務員と比べ就業不能保険の必要性が高いといえます。
以下では、日本の公的保障制度や、就業不能保険の必要性、メリット・デメリットを解説します。
働けなくなったときの公的保障制度
健康保険の傷病手当金
傷病手当金とは、会社員や公務員が病気やケガにより働くことができなくなってしまった場合に、加入先の健康保険から受け取れる手当のことです。
病気やケガで休んだ期間のうち、最初の3日を除き4日目から支給されます。
・支給期間:
支給を開始した日から通算して1年6カ月
・支給金額:
(支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日) ✕ 3分の2
・支給の条件:
①健康保険に加入している
②仕事に就くことができない状態
③業務外の病気やケガの療養で休んでいる
④連続3日間を含む4日以上、病気ケガの療養で休んでいる
⑤休業期間中に給与が支払われていない
労働災害補償保険(労災)の休業補償
労働災害補償保険(以下、労災)の休業補償とは、労働者が業務中や通勤中に負った病気やケガ等の損害に対して、被災した労働者や遺族に保険金を支給するものです。
病気やケガで休んだ期間のうち、最初の3日を除き4日目から支給されます。
さらに労災における「休業補償」には、以下の2つに分類されます。
・休業補償給付:業務中に労働災害が発生した場合に支払われる労災保険金
・休業給付:通勤中に労働災害が発生した場合に支払われる労災保険金
【支給金額】
「休業補償給付」「休業給付」どちらの給付であっても平均給与日額(直近3カ月の給料をその日数で割った金額)の60%です。
また、労働者が業務中や通勤中の災害で負った傷病による療養のために、仕事ができず給料がもらえなくなった場合には、上記に加え「休業特別支給金」が休業の4日目から支給されます。
金額は平均給与日額の20%です。
そのため、労災の休業補償としては平均給与日額の80%が支給される計算となります。
【支給の条件】
①療養していること
②就労できないこと
③賃金の支払がないこと
支給に期間はありませんが、上記の条件が1つでも当てはまらなくなった場合は、休業補償は打ち切られます。
国民年金、厚生年金の障害年金
障害年金とは、病気やケガで障がいを負った場合に、認定された等級に応じて支給される年金です。
国民年金に加入している場合は「障害基礎年金」が、厚生年金の場合は「障害厚生年金」が支給されます。
子の加算:2人目まで1人につき22万3800円、3人目以降は1人につき7万4600円
就業不能保険の必要性
就業不能保険の必要性は、ご自身の職業(会社員や自営業など)でも大きく変わります。
会社員・公務員の場合
病気やケガによって仕事を長期間働けなくなってしまった場合、会社員や公務員であれば、まずは有給を使うことで収入減少を防ぐことが可能です。
有給を使い終わった後は「傷病手当金」や「障害年金」などの公的保障を受け取ることができます。
しかし上記の図のように、公的保障を受けられるからといっても、健康時の給与と比較して収入額は小さくなります。
そのため、会社員や公務員であっても、長期療養等による働けないリスクに備える必要があります。
自営業・フリーランスの場合
自営業者やフリーランスの場合、会社員や公務員と異なり、「有給休暇」や「傷病手当金」といった制度がありません。
そのため、就業不能の状態になってしまった時点ですぐに収入減少が発生します。
国民年金に加入している場合、障害基礎年金を受給できる可能性はありますが、
障害年金は原則として、「所定の障がい状態が1年6カ月経過した日」以降、もしくは「障害認定日(症状が固定した日)」以降から年金の請求が可能になります。
つまり、年金が支給されるまでにはかなりの時間を要し、その間は貯蓄等を取り崩して生活することになります。
自営業者やフリーランスの場合は、就業不能保険の必要性が高いといえます。
専業主婦(主夫)の場合
保険会社によっては、専業主婦(主夫)の方であっても就業不能保険に加入することができます。
専業主婦(主夫)の場合、自身の収入がないため就業不能保険は必要ないと思われるかもしれません。
しかし、小さなお子さんのいるご家庭で、専業主婦(主夫)が大きな病気や障がい状態になってしまった場合、健康時のように「子育て」をはじめとした「家事」「炊事」等ができなくなります。
その場合、収入源である配偶者が休暇や時短といった対応を迫られる可能性があり、仕事を減らした分だけ収入が減少してしまいます。
また、ベビーシッターを雇う場合であっても、ベビーシッター代の費用が掛かってしまいます。
そのため、収入のない専業主婦(主夫)であっても、家事・炊事・子育てができなくなってしまった場合に備える必要があります。
就業不能保険のメリット・デメリット
メリット①:公的保障や医療保険の不足分をカバーできる
会社員や公務員であれば、有給休暇の取得や、通算1年6カ月の間は傷病手当金を受給することができます。
また、その後に認定された障害等級によっては障害基礎年金や障害厚生年金の受給も可能です。
ただ、公的保障だけでは収入のすべてをカバーすることは困難であり、健康時と比べて少なくなるのが一般的です。
また、医療保険でカバーできるのはあくまで入院や手術で発生した「医療費」です。
そのため、食事や日用品をはじめとした生活費や、学費、住宅ローン(家賃)といった固定費までをカバーすることはできません。
就業不能保険を活用することで、上記のような公的保障や医療保険で補えない部分をカバーできる可能性が高くなります。
メリット②:経済的な不安を軽減できる
働けなくなった時に、最も懸念点として挙げられるのは収入減少による「経済面」といえます。
公的保障があるとはいっても、金額にすれば健康時の収入には及びません。
その間は貯蓄を取り崩したり、生活を切り詰めたりするなど、生活に大きな負担がのしかかることになります。
そういった経済的不安を解消(軽減)できるのも、就業不能保険の強みだといえます。
デメリット①:免責期間がある
就業不能保険のデメリットの一つとして「免責期間がある」という点が挙げられます。
一般的に就業不能保険には所定の就業不能状態になってから60日や180日といった期間が免責期間として設けられます。
※免責の期間については各保険会社で異なります。
就業不能状態になってすぐに受給できるものではない点には注意が必要です。
デメリット②:精神疾患(うつ病など)の扱いは保険会社によって異なる
近年では、うつ病をはじめとする精神疾患を原因に働けなくなる人が増加しています。
そうした背景から、保険会社から精神疾患を保障範囲としてカバーする就業不能保険も出てきています。
しかし、受給する条件として「精神疾患を原因として60日以上の入院をした場合」など、非常に厳しいのが一般的です。
また、「いつ精神疾患になったのか」「回復したのはいつなのか」など、見た目では判断が難しいのが精神疾患の特徴でもあります。
そのため、就業不能保険の保障範囲に、精神疾患を組み込まない保険会社も多いです。
就業不能保険の選び方
[step1]必要保障額を決める
まず就業不能状態に陥ってしまった場合に受けられる公的保障を、自身の月収に照らし合わせて確認しましょう。
特に会社員や公務員などの場合、公的保障が受けられるため、「万が一の時に公的保障からどれだけお金を受け取れるのか」を事前にしっかりと把握し、不足部分を過不足ない保険金額となるよう検討しましょう。
一方で、設定できる保障金額には上限があります。
金額の上限は保険会社によって異なりますが、前年度の年収などを参考に設定されます。
[step2]保険期間・受け取り方を決める
就業不能保険の満期は「55歳〜70歳の間の5年刻み」で設定できる商品が一般的です。
自身のライフステージや家族構成、退職時期などによって必要な保険期間は変わってきます。
退職するまでの間はずっと備えておきたいということであれば、65歳や70歳を満期として設定するのが良いでしょう。
また、子どもが独立するまでは備えておきたいということであれば、子どもが独立するタイミング(大学を卒業するまで等)を満期として設定するのも良いでしょう。
さらに保険会社によっては、保険金額を「短期間(1年6カ月未満)の保険金額は少なめ」といったように受け取り方を調整できる商品もあります。
会社員や公務員のように公的保障がある場合には、短期間の保険金額を少なくする受け取り方を選択することで、毎月の保険料を抑えることもできます。
[step3]対象となる就業不能状態の確認
就業不能保険に限らず、民間の生命保険は保障内容や加入条件は保険会社により異なります。
就業不能状態になったにも関わらず、「給付金を受け取ることができない」という事態にならないようにすることが重要です。
加入を検討する場合は、まずはじめに「どういう状態になったら保険が受け取れるのか」を確認しましょう。
[step4]給付金がもらえない事由や期間を確認
給付金がもらえない期間、いわゆる「免責期間」を必ず確認しましょう。
一般的には免責期間は60日や180日となっているケースが多いですが、「いつから数えて」60日間や180日間なのかといった点にも注意する必要があります。
就業不能状態になったにも関わらず、給付金を受け取れなかったという最悪の事態が起こらないようにしっかり確認しておくことが大切です。
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