近年、がん保険はがんと診断されたときに受け取れる一時金が主流となっています。
がん保険を検討している人の中には、「一時金だけで良い?」「その他の特約も付加したほうが良い?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
がん保険の保障内容が一時金のみで良いかどうかは、がん治療に対する考え方や毎月の保険料予算によってことなります。
今回は、がん保険の保障の決め方について、保険のプロが詳しく解説していきます。
この記事を読んでわかること
がん保険の一時金は診断時にすぐ受け取れるため、治療費や収入の補填などに活用できる
自由診療や先進医療など公的制度対象外の治療を受ける場合、一時金だけでは不十分な可能性がある
一時金の適正な保障額は、高額療養費制度の自己負担額を参考に決めるのがおすすめ
目次
がん保険の一時金(診断給付金)とは
がん保険の一時金(診断給付金)とは
がんと診断された時点で受け取れるまとまったお金のこと
保険会社によって、受け取れる回数が1回切りの場合と、条件に当てはまれば何度でも受け取れる場合があります。
がん保険の一時金について、詳しく見ていきましょう。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?

がん保険の一時金(診断給付金)はいつもらえる?
がん保険の一時金は、がんと診断されたことを証明する診断書を保険会社に提出することで受け取れます。
診断されてすぐに受け取ることができるので、その後の治療や収入の補填など、さまざまな目的で活用できるのがメリットです。
ただし、がん保険は加入してからの90日間は免責となっていることがほとんどです。
加入してすぐにがんと診断されても、一時金を受け取れなかったり、がん保険自体が無効になることもあるため、注意してください。
一時金が複数回受け取れるがん保険の場合、2回目以降は、1回目を受け取ってから1年や2年ごとに、保険会社が定める条件に該当したときに受け取ることができます。
保険会社によって2回目の受取り条件は異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
がん保険の一時金(診断給付金)は何回受け取れる?
一時金を受け取れる回数は、保険商品によって異なります。
1回切りしか受け取れないものや、条件に該当すれば回数無制限で受け取れるものもあります。
がんの再発や転移に備えたい人は、複数回一時金を受け取れるタイプを選んでおくのがおすすめです。
一時金を何回受け取れるかによって、適正な保障額も変わってきます。
がん保険選びの際は、一時金の受取回数を確認しましょう。
Q.がん保険の一時金には税金がかかりますか?
A.受け取った一時金は非課税です。
がん保険で受け取った給付金は課税対象とはならないため、所得税などがかかることはありません。
受け取った一時金はすべて、治療や収入の補填に使うことができます。
がん保険は一時金(診断給付金)のみで良い?3つの判断ポイント
がん保険は一時金だけで良いのかを判断するためのポイントを紹介します。
保険選びをするうえで、ぜひ参考にしてください。
1.早期発見のがんで保障を受け取りたいか
がん保険の一時金は、がんに罹患した時点で受け取ることができ、用途は自由です。
早期でがんが発見され、入院と手術のみで治療を終えられたとしても、まとまったお金を受け取ることができます。
検査精度が向上している現在、早期発見のがんに備えておきたいようであれば、一時金保障のみでも十分な可能性があります。
ただし、保険会社によっては早期発見の「上皮内がん」の場合、一時金を100%受け取れないものもあります。
がん保険選びの際は、上皮内がんの保障額についても確認しておきましょう。
参考)上皮内新生物(上皮内がん)とは
上皮内がんとは、がん細胞が上皮にとどまっている状態の、比較的早期発見のがんのことです。
多くの場合、手術でがん細胞を取り除くことができ、再発や転移のリスクも低いとされています。
特に上皮内がんの状態で発見されることが多いがんとして、子宮頸がんが挙げられ、全体の67.5%が上皮内がんで見つかるとされています。
また、男性に多い膀胱がんは46.0%、大腸がんは20.9%が上皮内がんで見つかっています。
上皮内がんの状態で早期に発見されると比較的予後は良好で、抗がん剤治療が不要なケースも多いです。
2.自由診療や先進医療などの新しい治療を選択する可能性があるか
自由診療や先進医療といった公的医療保険制度対象外の治療を受けると、自己負担額は数百万円以上に及ぶこともあり、がん保険の一時金のみでは治療費に備えられない可能性が高くなります。
治療の選択肢を幅広く持っておきたい人は、自由診療特約や先進医療特約を付加しておくことをおすすめします。
一時金と組み合わせることが多い「がん治療給付金」の場合、保険会社によって保障対象の薬剤が「抗がん剤」「ホルモン剤」などと定められています。
長引くがん治療には効果的ですが、将来的に新しい薬剤が出てきたときには対応できない可能性もあります。
「長い目で見てどんな治療にも対応出来る方が安心」「公的医療保険の範囲内で治療を受ける」など考えが決まっているのであれば、診断一時金のみで備えておくのも良いでしょう。
3.一時金で十分な保障を確保しても保険料が予算内か
がん保険の一時金は、罹患時にまとまったお金が支払われる分、保険料は高くなりがちです。
治療費や収入の減少を補える額に設定しても、毎月の保険料が予算内に収まっているのであれば一時金のみのプランでも問題ないでしょう。
逆に保険料が予算を超えそうであれば、がん治療給付金と組み合わせ、一時金の額を抑えるプランがおすすめです。
一般的には、一時金の保障を高額にするよりも、少し保障額を下げ、その分がん治療給付金を付加するほうが保険料を抑えることができます。
がん保険の一時金(診断給付金)はいくら必要?
実際にがん保険の一時金はいくらが適正なのでしょうか。
ここからは、がん治療にかかる費用を確認し、一時金の適正額をシミュレーションしていきます。
がん治療にかかる費用
厚生労働省が発表している「令和4年度 医療給付実態調査」などから、がん治療にかかる費用を見ていきましょう。
がんの種類や進行度によっても異なりますが、1回の入院にかかる医療費は平均100万円前後であることがわかります。
また、がんは入院・手術だけでなく、通院による外来治療が長引くことも特徴です。
外来治療にかかる医療費は、約6.7万円となっています。
実際の自己負担額は、公的医療保険制度で現役世代の場合3割負担となり、さらに高額療養費制度が利用できるケースもあります。
しかし、治療が長引くことで医療費の負担がかさみ、徐々に家計への影響が大きくなっていくおそれもあります。
がん保険について考えるときは、治療が長引いたときのことも検討しておくようにしましょう。
(参考:令和4年度 医療給付実態調査|厚生労働省)
参考)高額療養費制度
がんによる入院や手術、抗がん剤治療によって高額な医療費が必要になったとき、公的医療保険制度である「高額療養費制度」を利用することができます。
高額療養費制度とは、1カ月の医療費負担が上限額を超えたとき、その差額が返還されることで実質負担額を軽減できる制度です。
1カ月の医療費負担上限額は年齢や収入によって異なります。
現役世代の場合は次の通りです
例えば、年収500万円の人が1カ月入院した場合、高額療養費制度を利用すると自己負担額は約9万円になります。
また、過去12カ月間に高額療養費制度による払い戻しが3回以上あった場合、4回目からは「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに4万4000円まで減額されます。
がん保険の一時金の保障額を決めるときは、高額療養費制度を使った場合の自己負担額を参考にすると良いでしょう。
一時金(診断給付金)を何度でも受け取れる場合
一時金を複数回受け取れるがん保険の場合、そもそも一時金として設定できる金額は50万円~200万円程度と定められていることが一般的です。
1年に1回、条件に該当すれば一時金を受け取れる商品であれば、1年分の治療費と収入の補填として保障額を決めていきましょう。
年収500万円の人が1年間毎月治療を受けたと仮定すると、必要になる医療費は次の通りです。
約9万円×3カ月+4万4000円×9カ月(多数該当)=約66.6万円
治療費の負担に加え、雑費や収入の減少にも備えるのであれば、保障額は100万円~150万円にしておくと良いでしょう。
一時金(診断給付金)を1回しか受け取れない場合
保険商品によりますが、一時金を1回しか受け取れない場合、複数回受け取れる商品と比べて大きな保障額を設定できるケースがあります。
1回切りの受け取りであれば、その金額で生涯のがん治療にかかる費用をまかなわなければなりません。
また、がんに一度罹患すると、その後がん保険に入りなおすことは基本的に難しくなります。
最低でも5年間の治療費をまかなえるくらいの金額設定にしておくと安心です。
年収500万円の人が5年間治療を継続したと仮定すると、必要になる医療費は次の通りです。
【初年度】約9万円×3カ月+4万4000円×9カ月(多数該当)=約66.6万円
【2年目~5年目】4万4000円×12カ月×4年=約211.2万円
合計:約277.8万円
※上記の例は12カ月間に3回以上の高額療養費による給付を、毎年受けたものとして仮定
医療費に関しては、約300万円の保障があればまかなえることになります。
しかし、入院時の差額ベッド代や、がんと診断されたことによる収入減少に備えるのであれば、さらに必要な保障額は大きくなります。
また、先進医療や自由診療など公的医療保険対象外の治療を受ける場合、自己負担額は数百万円に及ぶ可能性があります。
一時金の保障を確保することはもちろん、必要に応じて先進医療特約や自由診療特約の付加を検討しましょう。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?

一時金のみのがん保険を選ぶときのポイント
ここからは、一時金のみのがん保険を選ぶときのポイントについて解説していきます。
がん保険選びで後悔しないよう、参考にしてください。
主契約が一時金(診断給付金)タイプの商品を選ぶ
まず、がん保険を一時金のみで用意したい場合、主契約が一時金タイプの商品を選ぶ必要があります。
主契約とは、保険契約の中で基本になる、必ず契約しなければならない保障のことをいいます。
保険会社によって主契約の保障内容は異なっており、主な種類は次のとおりです。
- 一時金タイプ
- 薬剤治療給付金タイプ
- 入院日額タイプ
がん保険の中には、抗がん剤治療などに備える薬剤治療給付金や、がんの入院に備える入院日額保障が主契約となっているものもあります。
一時金のみでがん保険を持っておきたい人は、いくつかの保険会社を比較し、主契約が一時金タイプのものを選ぶようにしましょう。
2回目以降の受取条件を確認する
一時金が何回受け取れるか、2回目以降の受取条件はどうなっているかを確認しましょう。
保険会社によっては、条件に該当すれば回数無制限で一時金を受け取れると定めているものもあります。
また、2回目以降の一時金受け取りには、「がんによる入院」「抗がん剤治療」「再発や転移」などいくつかの条件が定められています。
保険会社によって細かく条件が異なるため、加入前に確認しておくようにしましょう。
上皮内がんが保障対象かを確認する
上皮内がんの場合でも一時金の保障対象となっているか、保障額の満額を受け取れるか、事前に確認しておくこともポイントです。
がん保険の一時金は、治療の種類や長さに左右されることなく、決まった額をまとめて受け取れることが特徴です。
早期発見で治療が比較的短く済んだ場合でも、一時金で保障されることはメリットといえるでしょう。
上皮内がんにも備えておきたいのであれば、がんの進行度にかかわらず一時金が受け取れるタイプにしておくのがおすすめです。
複数の保険会社で比較する
がん保険を選ぶときは、1社で決めてしまうのではなく、いくつかの保険会社で比較して決めるようにしましょう。
保険会社によって一時金の受取り要件などには細かい違いがあります。
また、同じような保障でも保険会社によって毎月支払う保険料は異なります。
いくつかの商品で比較したうえで、最も自分に合っていると思うもの、保険料を抑えられるものを選ぶと、より納得感のある保険選びにつながります。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?

がん保険の必要性
ここからは、統計データをもとにがん保険の必要性について考えていきます。
がんの罹患者数
国立がん研究センターのがん統計によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性で62.1%、女性で48.9%となっています。
一方、がんで死亡する確率は男性で24.7%、女性で17.2%と、がんと診断される確率よりも低くなっています。
数十年前であれば、がんに罹患すると死亡する確率が高かったため、がん保険もがんによる死亡を保障するものが一般的でした。
現在では、がんは適切な治療を受けることで治る可能性がある時代になっています。
時代に合わせて、がん保険も治療保障を中心としたものに変化しています。
(参考:最新がん統計|国立がん研究センター)
部位別がん罹患数の順位
全体で罹患者数が最も多いのは大腸がんです。
男女別に見ていくと、男性は前立腺がん、女性は乳がんが最も多い結果になっています。
男性・女性特有のがんは、ホルモン剤治療が長期間必要になるリスクが高いため注意が必要です。
特に女性の場合、比較的若い20代や30代でも乳がんに罹患するリスクがあります。
若くて健康なうちに、がんへの備えを検討しておくのが良いでしょう。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?

がん保険を請求するときのポイント
ここからは、いざというときにがん保険で給付金請求をするときのポイントを紹介します。
加入中の保険会社に給付金請求したい旨を伝える
がんと診断されたら、まずは加入中のがん保険で保障対象となるかを確認しましょう。
一時金など、診断された段階で受け取れる保障があれば、すぐに給付金請求ができる可能性があります。
自分ひとりではよくわからない場合は、直接保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。
給付金請求は、保険会社の専用ダイヤルに連絡するか、最近ではWEB上で請求が可能な保険会社も増えています。
必要書類を用意する
保険会社に給付金請求を依頼したら、必要書類が自宅宛てに送られてきます。
自分自身で記入が必要な書類と、医療機関に提出して記入してもらう書類があります。
給付金請求で必要になる書類の例
- 保険会社所定の給付金請求書
- 医療機関発行の領収書
- 診断書
- 身分証明書(改姓手続きなどが済んでいない場合)
診断書は保険会社所定のフォーマットが用意されているケースが一般的です。
医師に提出して、記入してもらいましょう。
WEB上で給付金請求ができる保険会社の場合は、診断書等の写真を添付して送信します。
保険会社による審査を待つ
保険会社は、受け取った給付金請求書類をもとに、支払対象になるかどうかの審査を行います。
審査には平均して1週間ほどかかります。
書類を返送してから一定期間進捗がない場合は、一度保険会社に問い合わせしてみると良いでしょう。
着金があったら、金額が正しいか確認する
審査の結果問題がなければ、保険会社から指定口座に給付金が振り込まれます。
併せて、給付金支払明細が送られてくることが一般的です。
着金があったら、念のため金額が間違っていないかを支払明細と照らし合わせて確認しておくと安心です。
まとめ
今回は、がん保険は一時金のみで良いのか、一時金の保障額はいくらが良いのかを解説してきました。
がんは治療が長引くリスクのある病気です。
がんと診断されたときに受け取れる一時金は、その後のがん治療の大きな味方になります。
自分はどれくらいの保障が必要になるのか、その他の特約を付加する必要はないかを検討したうえで保険選びを進めましょう。
ほけんのコスパでは、複数の保険会社のがん保険を掲載しています。
年齢と性別を入力するだけで、簡単に保険料の見積もりが可能です。
ぜひ保険選びの参考にしてみてください。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?
