人生における大きなリスクの一つである「がん」。
もしものときの経済的な支えとなるがん保険ですが、本当に必要なのか、加入すべきか悩ましいと感じる方もいるでしょう。
「がん保険はもったいない?」「未加入だと後悔する?」といった疑問について、保険のプロが解説します。
この記事を読んでわかること
いま加入している保険にがん特約や三大疾病保障がある場合は追加でがん保険に加入する必要性は低い
保険の見直しをすると保障を充実させたり、保険料を節約できる場合がある
がん保険は免責期間があるため、他社の保険に切り替える場合は保障が途切れないよう対策が必要
目次
がん保険とは?
がんと診断された際や、がんによる所定の治療を受けた際に給付金が支払われる保険のこと
がん保険は、がんになった際に手厚い保障内容を受けられます。
しかし、がん以外の病気やケガなどは原則支払いの対象にはなりません。
そのため、「保障の範囲が狭いがん保険はもったいない」と考える人もいます。
がん保険がもったいないといわれる理由について、保険のプロが詳しく解説します。
がんに罹患しなければ保障が無駄になる
がん保険は、治療が長期に及んだり医療費負担が高額になりやすいことから、すべての保険商品の中で唯一、ひとつの病気に特化した保険です。
がん保険は掛け捨てタイプが主流で、比較的保険料を抑えて、万が一がんに罹患した際の治療費に備えておくことができます。
しかし、がん保険はがん以外の病気やケガの場合は保障されません。
がん以外のリスクに対しても必要な保障を検討したうえで、バランスよく備えることが大切です。
医療保険での保障で十分
医療保険ではすべての病気やケガによる入院と手術が保障の対象となります。
そのため、がんで入院や手術をした場合も給付金を受け取ることができます。
しかし、がんは入院と手術だけで治療が終わらないケースも多くあります。
退院後、通院で抗がん剤治療を続けることもあり、その場合、医療保険では特約を付加しない限り保障対象となりません。
そのため、がん治療に備えておくにはがん保険に加入するか、医療保険にがん特約を付加する必要があります。
医療保険の入院保障を手厚くしても、保険料が高額になり、効率的にがん治療に備えることは難しいため、注意が必要です。
高額療養費制度で医療費が抑えられる
高額療養費制度とは、1カ月間(同じ月の1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った額が自己負担限度額を超えた場合に、その超えた額が後から支給される制度です。
自己負担額の上限額は、年齢と年収によって異なりますが、70歳未満で年収が500万円の人は、毎月約9万円~14万円程度に医療費が抑えられるため、医療保険は不要という人もいるようです。
例えば70歳未満の人で年収が500万円の人の場合、医療費の自己負担限度額は「8万100円+(医療費-26万7000円)×1%」で計算できます。
仮に入院した際の医療費の合計額が100万円だった場合は、自己負担限度額は「8万100円+(100万円-26万7000円)×1%」の8万7430円になります。
入院中の食事や個室で入院した場合の差額ベッド代などは、高額療養費制度の対象外です。
また、先進医療や自由診療などの公的医療保険制度対象外の治療は、自己負担額が数百万円にのぼるケースもあります。
そのほか、入院期間中の収入減少など、逸失収入についても考慮しておく必要があります。
近年は、少子高齢化の影響もあり、制度の見直しにより年収目安等が変更になる可能性もあるため、一生涯公的保障の内容が確約されているわけではない点も注意が必要です。
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傷病手当金で収入の減少を補える
企業に勤めている方は、働けなくなった場合に傷病手当金の制度があるため、収入がまったくなくなるといったことはありません。
しかし、給与の全額は保障されず、給付対象期間も通算1年半までのため、注意が必要です。
また、自営業者やフリーランスは傷病手当金がないため、働けなくなった場合に収入の保障はありません。
会社員や自営業者など、働き世代は、いずれにしても、がんなどの大病になったとき、ケガで働けなくなった場合への備えは検討しておく必要があります。
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障害年金や介護保険などの公的保障が充実している
日本は世界的に見ても介護費用などに対する公的保障が充実しています。
病気やケガで働けなくなって、障害等級で一定の条件のもと認定受けた場合は、障害者手帳の交付を受けることができます。障害者手帳があれば、所得税住民税の控除、鉄道やバスなどの公共機関の割引などの経済支援や助成金を受けることができます。また、障害状態が1年半以上と長引き、一定条件をクリアすれば障害年金の受給ができます。
介護に対しては現物支給となり、介護認定を受けた場合は、介護サービスを原則1割負担で受けることが可能です。
がんが原因で障害認定を受けたり介護が必要な状態になった場合でも、公的保障が充実しているため、がん保険は必要ないと考える人もいるようです。
しかし、がんに罹患してすぐ介護が必要になる人は稀で、何年も治療をしたのちに病状が進行し、最終的に介護状態になるのが一般的です。
がんに罹患してからの治療費負担や、収入減少には注意しておく必要があるでしょう。
がんに罹患する確率
国立がん研究センターの最新データによると、日本人が一生のうち、がんと診断される確率は男女ともに2人に1人となっています。
しかし、20代や30代でがんに罹患する人は40代以降と比べると少ないため、もったいないと感じる人もいるようです。
とはいえ、これまで健康だったからといって、この先もがんに罹患しないと言い切ることはできません。
一度がん検診などで異常を指摘されると、がん保険への加入は難しくなります。健康なうちにいざというときのために備えておくことが大切です。
また、がんによって死亡する確率は男性が4人に1人、女性が6人に1人となっています。
最新の統計データから、診断される確率は高く、死亡する確率が低いことがわかります。
医療技術の進歩によりがんの早期発見が増えたこと、治療方法がある程度確立され、がんが治る病気になりつつあります。
がんに罹患した場合、生存する確率が高くなっている傾向から、治療の選択ができるようにがん保険で備える必要性が高まっています。
(参考:全国がん統計|がん情報サービス)
がんに罹患した場合に必要なお金
がんに罹患すると、治療費が高額になったり、長期の治療が必要になることが考えられます。
治療費がどれくらい必要か、治療期間がどれくらいになるかは、がんの進行度やがんの部位によって異なります。
治療費は公的保険の対象治療であれば、高額療養費制度により、1カ月あたりの自己負担額が抑えられています。
自己負担額は各々の年収によりますが、70歳未満で年収が500万円の人であれば約9万円となります。
健康保険対象外の治療法においては、自由診療や先進医療がありますが、これらの治療は高額化しやすいのが特徴です。
また、がんに罹患したときにかかる費用は、治療費だけではありません。治療費以外にかかる費用は、入院中の差額ベット代や食事代、通院時の交通費、投薬治療の副作用で発生した時のウィッグ代、がんで働けなくなったときの生活費があげられます。
(参考:診療アウトカム評価事業|全日本病院協会)
がん保険の加入率
生命保険文化センターの年代別がん保険加入率のデータによると、男女ともに30代から加入者が増えていることがわかります。
30代から加入率が高くなる要因のひとつに、結婚や子どもの誕生があります。
一般的には、ライフステージの変化により、万が一があったときに家族が困らないように「リスク」に対して備えたいと考えます。
また、「保険料が安いうちに加入したい」「健康なうちに加入を検討しておきたい」と考える人が増えることが、30代以降から加入率が高くなる要因と考えられます。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2025年4月1日-2025年4月30日)
がん保険は加入したらもったいない?悩んだときの判断ポイント
がん保険が自分には必要なのか悩んだときの判断ポイントについて、プロが解説します。
医療保険や三大疾病保険など他の保険でがんへの備えができているか
がん保険を検討する前に、既に加入している保険があれば保障内容を確認しましょう。
医療保険でがん特約を付加している場合や三大疾病保障がある場合は、がん保険を追加で検討する必要性は低いといえます。
しかし、保障を既に備えている場合も、数年前に加入しているものは、現代の治療法にあっていなかったり、保障が十分でない場合があります。
保障内容を確認した上で、必要に応じて、がん保険の見直しを考えておくことも大切です。
がんの治療中に貯蓄が減る不安を感じないか
がんに罹患した場合、保険で備えているか否かで経済的な負担、精神的な負担が大きく変わります。
がんと闘うための治療費や生活費は、大きな経済的負担になります。
保険での備えがなかった場合は、貯蓄や金融資産から取り崩すことになり、治療が長期的になった場合は資金が大きく減ることになります。
貯蓄や資産運用は、「子どもの教育費のため」「老後の生活のため」など、目的を決めて計画的に行っている人がほとんどです。
保険に加入しておらずがんに罹患すると、ライフプランの先行きが不安になり、精神的負担につながる可能性があります。
筆者は以前、資産運用の相談を承った方にいくつかの運用商品をはじめていただきましたが、数年後、そのお客様より、すべての商品を解約したいとお申し出がありました。
理由は、がんになり治療費が必要になったからです。
がんに罹患すると、将来のために貯蓄していたお金を使うことになる可能性があります。
貯蓄に取り組んでいたとしても、別の用途が決まっているのであれば、がん保険で治療費に備えておくことが必要です。
Q.いくら預貯金があれば、がん保険はいらない?
A.希望する治療費によっても異なりますが、健康保険適用の治療のみで考えた場合、最低300万円前後の貯蓄があると良いでしょう。
がんの治療費を支払っても生活に影響がないくらい、潤沢な預貯金があればがん保険の必要性は低いといえます。
健康保険適用の治療をすると仮定し、年収500万円の人が5年間がん治療を受けたとします。
3カ月目までは約9万円の自己負担となりますが、4カ月目からは多数該当で自己負担が4万4000円まで軽減されます。
【初年度】約9万円×3カ月+4万4000円×9カ月(多数該当)=約66万円
【2年目~5年目】4万4000円×12カ月×4年=約211万円
合計:約277万円
※上記の例は12カ月間に3回以上の高額療養費による給付を、毎年受けたものとして仮定
治療費としては300万円ほどの預貯金があれば対応できる可能性がありますが、差額ベッドや食費、がんによる収入減少もふまえておく必要があります。
また、先進医療や自由診療など、全額自己負担になる治療を受けた際は1回で数百万円の費用が必要になることがあるため、注意が必要です。
今後がん保険に加入したいと思うことがないか
がん保険は加入するタイミングが大切です。
理由は大きく分けて3つです。
1つ目が「保険料」です。
保険料は加入する時点の年齢で計算されるため、若いうちに加入をしておくと、低廉な保険で備えることが可能です。
2つ目が「健康状態」です。
保険は申込時に健康状態について、告知をする必要があります。
特にがん保険の場合、がん検診などで異常を指摘されたり、すでにがんの罹患歴があると加入は難しくなります。
3つ目が「免責期間」です。
通常の生命保険は加入時点で保障が開始されますが、がん保険は加入時点から90日間の免責期間が設けられるため、保障がすぐ開始されるわけではありません。
3つの理由から、今後がん保険に加入しようと考えている場合は、早めにがん保険に加入したほうが良いといえます。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら

がん保険の見直しが必要な人【ケース別】
がん保険の見直しをすることで、保障を充実させることができたり、保険料が節約できる場合もあります。
ここからは、がん保険の見直しが必要なケースを解説します。
定期タイプのがん保険に加入している場合
がん保険は保障期間が決まっている定期タイプと、保障が一生涯の終身タイプがあります。
定期タイプは一定期間、比較的低廉な保険料で備えることができます。満期になれば保障は終了します。
保険を継続する場合、更新して保障を続けることができるものがありますが、更新時の年齢で保険料が再計算されるため、更新前より保険料が高くなります。
一方で終身タイプは期間の定めがないため、加入時の保険料が変わることなく一生涯の保障を備えることができます。
がんは年齢が高くなるほど罹患リスクが高まるため、基本的には終身タイプのがん保険で備えておくのがおすすめです。定期タイプのがん保険に加入している人は、更新後の保険料を事前に確認しておき、一生涯の保障を希望するのであれば、早めに終身タイプに切り替えておくのが良いでしょう。
加入してから3年以上経過している場合
保険は、公的保険制度の改定や医療技術の進歩に合わせ、毎年のように商品が改定されたり、新商品が発売されています。
何年も前に加入しているがん保険は、入院中の治療に対しての保障がメインになっている場合があります。
数十年前までは長期で入院して治療することがあたり前でしたが、現代は医療技術の進歩により、がんは通院しながら治療できる時代となりました。
そのため、入院中の治療がメインになっている保障内容は、長期で通院治療が必要となった場合に保障が不足する可能性があるため、保障を追加するか見直しを検討する必要があります。
また、先進医療や自由診療が保障されるかの確認も必要です。
通常のがん保険では、公的健康保険対象の治療は保障されますが、先進医療や自由診療は全額自己負担になります。
先進医療を希望する可能性のある人は、先進医療特約が付けられる保険を検討しましょう。
先進医療特約は、毎月数百円程度で付加できるケースもあります。
保険料の支払いが家計を圧迫している場合
保険は、無理のない範囲の保険料で、長期間継続できるようにしておくことが大切です。保険料の支払いが困難になり、解約をすると必要な保障を必要なタイミングで受けることができなくなります。
そのため、保険加入を検討する際は、現状から必要な保障を選択したうえで、公的保障から不足する分を保険金額として設定することが大事です。
必要保障額については、各世帯の年収や資産状況によって異なるため、定期的に確認しましょう。
必要保障が決まったら、複数の保険会社を比較をしましょう。
同じような保障内容でも、保険会社によって毎月の保険料は異なります。比較検討した上で、必要な保障をなるべく低廉な保険料で備えられると良いでしょう。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら?

がん保険は解約しても大丈夫?解約の前の注意事項
がん保険を解約する前に注意すべきことを解説します。
健康状態によっては新しいがん保険に加入できない
保険は契約者同士の公平性を保つために、職業や健康状態の告知が必要になります。
保険会社は告知により加入可否の判断をするため、告知内容によっては加入ができない場合があります。
健康告知では、現在抱えている持病や過去の傷病歴について申告が必要です。
保険会社は、健康状態が今後どうなっていくかのリスクを鑑みて判定するため、医師から問題ないと診断されている場合でも厳しく判断されるケースもあります。
特に女性の場合は、健康診断や女性健診などで、子宮や乳房に指摘を受けたことが原因で、がん保険に加入できないこともあります。
今後保険に入れなくなるリスクもふまえたうえで、今入っているがん保険を解約するかどうかを決めるようにしましょう。また、がん保険の見直しをする際は、新しいがん保険の保障が始まってから、古いがん保険を解約しましょう。
がん保険には免責期間がある
がん保険には、「免責期間」が設けられています。
免責期間とは、がん保険に加入してから保障が開始されるまでの期間のことです。
そのため、加入してから保険料の支払いが発生していたとしても、実際に保障が開始されるのは、91日目以降からとなります。
免責期間が設けられている理由は、しこりなど異変を感じている人が、がん保険の加入直前に病院を受診し、加入後すぐに給付金を受け取るといった不正を防ぐためです。
がん保険やがん特約の見直しを検討する際は、免責期間があることから90日間は加入中の保険と重複させるなど対策を取るようにしましょう。
契約時の年齢が上がると保険料も上がる可能性が高い
保険料は契約時点の年齢で計算されます。
保険会社によっては、誕生日の半年前から年齢が上がった金額で計算されるものや、誕生日の1カ月前までは上がらない年齢で保険料が計算されるものがあります。
基本的には同じ保障内容であれば年齢が上がるほど保険料は高くなります。
保険の見直しを検討する際は、加入中の保険の内容を確認したうえで、比較して条件の良い保険を選ぶと良いでしょう。
がん保険に関するよくある質問
がん保険に関するよくある質問に、保険のプロが回答します。
Q.がん保険と医療保険のどちらに加入したほうが良い?
A.年代や備えたいリスクによって異なるため、一概にはいえない。
医療保険はすべての病気やケガで入院、手術をした場合に保障されるため、がんで入院、手術した場合も保障されます。
がん保険は、がんに罹患した場合のみの保障ですが、がんによる通院治療や収入の減少にも備えることができる特徴があります。
ちょっとした入院や手術でも不安がある人は、医療保険から検討すると良いでしょう。数日の入院費用や手術費用への備えが必要ない人やがんになった際の不安が大きい人は、がん保険を検討しましょう。
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Q.がん保険は若いうちに加入したほうが良い?
A.若いうちに加入しておくことで、比較的低廉な保険料で一生涯の保障を確保できるため、早めに検討しておくのがおすすめです。
保険料は加入時点の年齢で決まるため、若いうちは比較的低廉な金額で備えられます。
また、年齢が上がるにつれ健康状態に不安を抱える人が多くいます。
毎年の健康診断や人間ドックで指摘を受けると、がん保険は検討できなくなる可能性があります。健康状態に問題ないうちに、がん保険を検討しましょう。
まとめ
がん保険は、「がんにならなかったら払った保険料がもったいない」といわれることもあります。
しかし、がん保険に加入することで「まとまった給付金」や「継続治療にも対応できる保障」があるため、預貯金が少ない人・貯金はあっても治療費に使いたくない人には、必要性の高い保険といえるでしょう。
また、医療保険に入っておらず、先進医療を希望する可能性がある人にも、がん保険に加入するメリットは大きいといえます。
がん保険には免責期間が設けられているため、加入するだけでなく、がんになったときに保障される状態を整えておく必要があります。
自分にはがん保険が必要かどうか、自分に合ったがん保険にはどんなものがあるのか、悩んでいる人はほけん必要度診断をしてみてはいかがでしょうか。
あなたの年齢でがん保険の保険料はいくら
