家族を亡くした後、遺族年金が「いつまで、いくらもらえるのか」という不安は尽きないものです。
特に、遺族年金が途中で打ち切られるケースがあることをご存知でしょうか?
本記事では、遺族年金の基本的な受給期間から、再婚や収入増加といった具体的な受給終了条件、さらに将来の生活設計まで、専門家の視点で網羅的に解説します。
この記事を読んでわかること
受給期間は、子どもの年齢や受給者の年齢、婚姻状況などによって決まる
再婚や年収の増加、子どもの独立など、特定の事由で年金が停止・終了することがある
65歳以降は、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金を併給できる特例がある
目次
1-1.遺族年金の種類と受給要件
1-2.生計維持が受給の絶対条件
3-1.再婚したとき
3-2.自身の収入が増加したとき
3-3.子どもが独立・結婚したとき
3-4.自身の老齢年金を受給開始したとき
4-1.遺族基礎年金の受取額
4-2.遺族厚生年金の受取額
8.まとめ
遺族年金とは?種類と基本的な仕組み
遺族年金は、一家の働き手や年金受給者が亡くなった場合に、のこされた家族の生活を支えることを目的とした公的な年金制度です 。
故人が加入していた年金制度によって、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」のいずれか、または両方が支給されます。
日本の年金制度が2階建ての構造になっているように、遺族年金も同様に2階建ての仕組みになっています 。
(参考:遺族年金|日本年金機構)
遺族年金の種類と受給要件
遺族年金を受け取るためには、故人の年金納付状況や遺族の年齢、優先順位などの条件をすべて満たす必要があります 。
- 遺族基礎年金:主に自営業者などが加入する国民年金がベースとなります。受給できるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子どものいる配偶者」または「子ども」に限られます 。
- 遺族厚生年金:会社員や公務員などが加入する厚生年金がベースとなります。遺族基礎年金の対象となる遺族は、遺族厚生年金も合わせて受け取ることができます 。受給対象となる遺族の範囲は、配偶者や子どもだけでなく、父母、孫、祖父母も含まれますが、優先順位が定められています 。
(参考:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構)
(参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構)
生計維持が受給の絶対条件
遺族年金を受給するための最も重要な要件の一つが、「亡くなった人によって生計を維持されていたこと」です 。
この要件を満たすには、主に次の2つの条件をどちらも満たす必要があります。
- 収入要件:遺族の前年の年収が850万円未満、または所得が655万5000円未満であること 。
- 生計同一要件:亡くなった方と生計を同じくしていたこと。原則として同居している必要がありますが、別居の場合でも、仕送りをしていたり、健康保険の扶養に入っていたりすれば認められます 。
なお、亡くなった時点で年収が850万円以上であっても、退職や廃業などによりおおむね5年以内に年収が850万円未満になる見込みがある場合は、支給対象となります 。
(参考:令和7年度版 遺族年金ガイド|日本年金機構)
遺族年金は非課税。ただし税申告には注意が必要
遺族年金は所得税法や国民年金法で「非課税」と定められており、税金はかかりません 。
ただし、遺族年金とは異なり、老齢年金は課税対象となる場合があります。
公的年金以外の所得(給与所得、不動産所得など)が年間20万円を超える場合など、確定申告が必要になるケースもあります 。
(参考:障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか。|日本年金機構)
遺族年金はいつまでもらえる?受給期間と終了条件
遺族年金の受給期間は、年金の種類や受給者の状況によって大きく異なります。
特に、子どもの年齢や受給者のライフイベントが深く関わってきます。
遺族基礎年金を受け取れるのはいつまで?
遺族基礎年金は、子育て期間中の生活を保障することを主な目的としています。
そのため、受給期間は子どもの年齢によって決まります。
子どもの年齢と受給終了の関係
遺族基礎年金は、すべての子どもが18歳に到達した年度の3月31日に到達するまで支給されます。
子どもが障害等級1級または2級の状態にある場合は、20歳に到達するまで受給期間が延長されます。
配偶者が受け取る場合でも、子どもの年齢が受給期間の要件となります。
子どもが要件を満たさなくなると、配偶者の遺族基礎年金も終了します。
子どもが複数いる場合は、末の子どもが18歳になる年度の3月31日までが支給期間となります 。
(参考:令和7年度版 遺族年金ガイド|日本年金機構)
遺族厚生年金を受け取れるのはいつまで?
遺族厚生年金の受給期間は、遺族基礎年金よりも複雑で、受給者(遺族)の属性によって細かく定められています。
妻・夫・子で異なる受給期間
- 妻:
- 子どものいる妻: 子どもが18歳に達した年度の末日を経過した後も、原則として一生涯にわたって受給できます 。
- 子どものいない妻: 夫の死亡時に30歳未満の場合は、受給期間が5年間に限定されます 。一方、30歳以上の場合は、原則として生涯受給可能です 。
- 夫、父母、祖父母: 故人の死亡時に55歳以上であることが受給の要件となりますが、原則として60歳になるまで年金の支給が停止されます 。ただし、遺族基礎年金を受給できる夫は、60歳未満でも遺族厚生年金を受け取ることができます 。
- 子・孫: 遺族基礎年金と同様に、18歳に達した年度の末日を経過するまでが原則的な受給期間です(障害等級1級・2級の場合は20歳未満) 。
なお、遺族基礎年金の支給が終了した後、妻が自身の老齢年金を受け取れる65歳までの間、遺族厚生年金に上乗せして支給される「中高齢寡婦加算」という制度もあります 。
遺族年金が打ち切られるのはどんなとき?
遺族年金は、受給者が特定の事由に該当した場合、期間に関わらず権利が失われ、支給が停止・終了します。
再婚したとき
遺族年金の受給者が再婚した場合、または内縁関係(事実婚)になった場合、遺族年金の受給権は消滅します 。
遺族年金制度が、故人との婚姻関係によって形成された生計維持を保障することを目的としているためです。
ただし、子どもに受給権がある場合は、再婚によって配偶者の受給権が消滅しても、子どもが年金を受け取れる可能性があります 。
子どもが18歳未満であり、婚姻していないなどの要件を満たしている場合、支給が停止されていた子ども自身の遺族年金が支給開始となります 。
自身の収入が増加したとき
遺族年金の受給には、生計維持の要件として、前年の年収が850万円未満であることが原則です 。
そのため、就労などにより年収が850万円以上になった場合、遺族年金の支給は停止されます 。
ただし、この停止は永久的な打ち切りではなく、再び年収が850万円未満になれば、年金事務所に届け出を行うことで支給が再開されます 。
子どもが独立・結婚したとき
遺族基礎年金は、子どもの年齢が受給の要件となります。
すべての子どもが18歳に到達した年度の末日を経過する、または結婚すると、受給権が消滅し、遺族基礎年金は終了します 。
自身の老齢年金を受給開始したとき
日本の公的年金制度は「一人一年金」が原則であり、複数の年金の受給権があっても、通常はいずれか一つを選択して受け取ります 。
しかし、65歳以降は特例として、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金を併給することが可能になります。
この場合、自分の老齢厚生年金が優先的に全額支給され、遺族厚生年金がその金額を上回る場合は、その差額が遺族厚生年金として支給されます。
遺族年金はいくらもらえる?受給額の計算方法と注意点
遺族年金の金額は、故人の年金加入状況や、遺族の状況によって異なります。
遺族基礎年金の受取額
遺族基礎年金の金額は、原則として一律に定められています 。
これに子どもの人数に応じた子の加算額が上乗せされます 。
- 遺族基礎年金の年額(令和7年度): 83万1700円
- 子の加算額(令和7年度):
- 1人目と2人目:各23万9300円
- 3人目以降:各7万9800円
遺族厚生年金の受取額
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間や報酬額に基づいて計算されます。
基本的な計算式は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する金額です 。
Q.遺族基礎年金と遺族厚生年金は併給できる?
A.故人が国民年金と厚生年金のどちらにも加入していた場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金は両方とも受け取ることができます。
あなたはいくらもらえる?ケース別の受給額シミュレーション
具体的なケースを想定して、遺族年金の受給額をシミュレーションします。
子どもがいる夫婦のシミュレーション
夫(自営業・国民年金加入)が死亡、妻と子ども2人(10歳・8歳)がのこされた場合
このケースでは、遺族基礎年金のみが支給されます。
妻が受け取れる年額: 83万1700円(遺族基礎年金)+23万9300円(子1人目)+23万9300円(子2人目)=131万300円。
遺族基礎年金は、末の子どもが18歳になる年度の3月31日まで支給されます。
夫(会社員・厚生年金加入)が死亡、妻と子ども2人(10歳・8歳)がのこされた場合
遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。
遺族基礎年金:上記の自営業者の場合と同様に、131万300円が支給されます。
遺族厚生年金: 亡くなった夫の厚生年金加入期間や報酬額に応じて計算されます。
夫婦のみの世帯のシミュレーション
夫(自営業・国民年金加入)が死亡、子どもがいない妻がのこされた場合
遺族基礎年金は子どものいる配偶者または子どもが対象のため、このケースでは遺族基礎年金は受け取れません。
ただし、一定の要件を満たせば寡婦年金や死亡一時金を受け取れる場合があります。
夫(会社員・厚生年金加入)が死亡、子どもがいない妻がのこされた場合
妻の年齢が30歳以上であれば、原則として一生涯にわたり遺族厚生年金が支給されます。
妻が40歳以上であれば、65歳になるまで中高齢寡婦加算が上乗せされることがあります。
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遺族年金が終了したら?未来の生活設計と備え方
遺族年金は、多くの場合、受給期間が終了します。
そのため、遺族年金に依存しない自立した生活設計を立てることが極めて重要です。
遺族年金に頼りすぎない生活設計の重要性
公的な年金制度だけでは、生活を十分にカバーできないケースがあります 。
特に、遺族基礎年金のみを受給している自営業者の遺族は、子どもの成長とともに年金が終了するため、公的年金制度に明確な空白期間が存在します 。
空白期間に備えるために、民間保険(収入保障保険など)や、NISAやiDeCoといった資産形成制度の活用が重要になります。
公的制度の恩恵を最大限に活用しつつも、それだけに頼らない生活設計を検討しましょう。
老齢年金と遺族年金、どちらを選ぶのが得?
65歳以降は、自身の老齢年金と遺族年金の両方を受け取る権利が生じることがあります。
日本の年金制度は一人一年金が原則のため、どちらか一方を選択して受給するか、特定の条件で調整されて支給されることになります。
具体的な調整方法は複雑なため、年金事務所で個別に相談しましょう。
(参考:年金の併給または選択|日本年金機構)
遺族年金が途切れた後が不安な人は専門家へ相談
遺族年金が終了した後の生活に不安がある場合、様々な公的支援制度や専門家への相談を活用できます。
公的支援制度
遺族年金だけでは生活が苦しい場合や、受給終了後に経済的な困難に直面した際には、年金生活者支援給付金や、就労支援、住居確保給付金など多岐にわたるサポートを提供する生活困窮者自立支援制度、資格取得を支援する高等職業訓練促進給付金などがあります。
専門家への相談
制度の仕組みや複雑な手続きについては社会保険労務士に、長期的な家計の見直しや資産形成についてはファイナンシャルプランナーに相談することで、個別の状況に応じた具体的なアドバイスを得られます 。
まとめ
遺族年金は、遺された家族の生活を支えるための重要な制度ですが、受給期間や条件は複雑で、個々の状況によって大きく異なります。
ご自身の状況に合わせた具体的な受給額や手続きについては、日本年金機構の「ねんきんダイヤル」や最寄りの年金事務所、街角の年金相談センターなどに相談することをおすすめします。






