【専門家に訊く!】生命保険と共済の違い、賢い選び方とは?リスクマネジメントのプロ・岡田太教授に訊く

【専門家に訊く!】生命保険と共済の違い、賢い選び方とは?リスクマネジメントのプロ・岡田太教授に訊く

(最終更新日:

インターネットで手軽に保険を選べる時代になりました。

しかし、保障の種類や仕組みは複雑で、「結局どれを選べばいいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、リスク・マネジメントの専門家である岡田太教授に、生命保険と共済の違いから、自分に合った保険の選び方、そして人生におけるリスクへの備えについて、お話を伺いました。

岡田 太 氏

日本大学 商学部 教授

岡田 太 氏

保険、共済、リスク・マネジメントを専門とし、この分野における第一人者。 1999年から日本大学商学部に着任し、2017年より教授を務めている。 また、日本保険学会や日本協同組合学会の理事、常任理事を歴任するなど、研究活動と並行して学会運営にも深く貢献。 著書には『はじめて学ぶリスクと保険』(共著)などがあり、アカデミックな知識を社会に広めることにも力を入れている。

そもそも何が違う?共済と保険の基本

女性編集部

編集部

岡田教授は共済や保険について研究されていらっしゃると伺いました。

保険についてあまり馴染みがない場合、ふたつの違いがよくわからない人も多いかと思います。

どちらも病気やケガなどのリスクに備えるイメージですが、どのような違いがあるのでしょうか?

岡田教授

一般的に、共済は農協(JA)や生協などの協同組合が提供する保障保険は保険会社が提供する保障として区別できます。

また、協同組合は、組合員の生活の向上を目的に共同で事業を運営する非営利組織です。

女性編集部

編集部

保障内容にも違いがあるのでしょうか?

岡田教授

病気やケガなどのリスクに備える点では、共済も保険も目的は同じですが、商品内容には多少の違いが見られます。

それぞれのメリットを比較

女性編集部

編集部

生命保険と共済、それぞれメリットとされるのはどんなことでしょうか。

岡田教授

生命保険は、多様なニーズに対応できるよう商品開発力が高いのが特徴です。

例えば、健康状態や健康増進への取り組みに応じて保険料が割引・割増されたり、キャッシュバックされたりする「健康増進型保険」や、払い込まれた保険料が外貨で運用される「外貨建て保険」などがあります。

女性編集部

編集部

生命保険は、保険の種類が豊富なんですね。共済はどういった点が優れているのでしょうか。

岡田教授

共済は主に手ごろな掛金でシンプルな保障を提供している点がメリットです。また、剰余金の一部が割戻金として契約者に還元される仕組みがあります。

ただし、相互会社組織の生命保険会社も契約者配当で還元を行っています。

商品性の違いと選び方のヒント

女性編集部

編集部

生命保険と共済を比較して、どちらに入ったら良いか悩んでいる人もいるかと思います。

それぞれ商品性の違いなど、特徴はありますか?

岡田教授

大手の生命保険会社は、手厚く充実した保障を提供していますが、その分保険料は高くなる傾向があります。

女性編集部

編集部

どういった理由で、保険料が高くなってしまうのでしょうか?

岡田教授

多くの営業職員による保険募集にかかるコストが影響しています。

対照的に、共済は募集コストを抑えることで、手ごろな掛金でシンプルな保障を提供しています。

女性編集部

編集部

保険料を抑えたい場合は、共済を選んだ方が良いのでしょうか?

岡田教授

大手生保が共済が得意とする保障内容で価格競争をするのは難しいでしょう。

ただし、募集コストの低いネット系生保は、共済と似たような商品も見られ、競争関係にあります。

女性編集部

編集部

手ごろな保険料の民間保険会社もあるんですね。共済独自の保障はありますか?

岡田教授

一部の共済では、妊娠中から生まれてくるお子さんの保障を申し込める独自のサービスを提供しています。

これは、健康上のリスクが高いとされる妊婦や乳幼児への保障を重視し、加入者間の助け合いという共済の理念に基づいています。

女性編集部

編集部

民間保険会社にはない保障もあるんですね。

岡田教授

妊娠中の場合、民間保険会社では「ハイリスク」とされ、加入が難しいケースも多いため、共済ならではの特徴といえるでしょう。

女性編集部

編集部

共済は「熟年型」のように、一定の年齢になると保障が減少するタイプの商品があります。

一方、民間の保険では「終身型」で一生涯保障を持てるものも多い印象です。

それぞれどんなメリットとデメリットがありますか?

岡田教授

一部の共済では、加入時の年齢に関わらず掛金が一律という体系を採用しています。高齢になるほど割安に加入できるため、高齢者にとっては有利に働きます。

しかし、保険の原則である「リスクに見合った保険料」とは逆の現象であるため、経済学では「逆選択」と呼ばれます。

女性編集部

編集部

若い人は不公平に感じてしまうのではないでしょうか。

岡田教授

年齢にかかわらず一律の掛金体系は、加入者間の助け合いという共済の理念に基づいていると考えられます。

しかし、逆選択が進むと制度の維持が難しくなるため、一部の共済では一定年齢以降に保障を段階的に減らすことで財務的な影響を抑えています。

女性編集部

編集部

不公平にならない仕組みがあるんですね。

岡田教授

高齢期は一般的に医療費の負担が増えるため、保障内容の縮小は加入者にとって不安要素となるでしょう。

一方、民間の終身保険は一生涯保障が続くメリットがありますが、年齢に応じて保険料が設定されます。加入するタイミングによっては保険料負担が大きくなるため、共済と比較すると保険料が高くなることもあるでしょう。 

女性編集部

編集部

共済のほうが合っている人、民間保険会社の生命保険のほうが合っている人はいますか?

岡田教授

年齢、家族構成、収入などによって最適な選択は異なりますが、一般論として、保障内容よりもコストを重視する人には共済が適しているといえるでしょう。

一方、手厚く充実した保障を求める方には、大手の保険会社の保険が適していると考えられます。

女性編集部

編集部

保険料を抑えたい場合は共済、充実した保障を希望する場合は民間保険会社が適しているんですね。

共済に加入する際に注意すべきことはありますか?

岡田教授

共済だけで十分な保障を確保できているかどうかは注意が必要です。

配偶者が専業主婦(夫)でお子さんが小さい家庭の場合、必要な保障額は大きくなる可能性があります。

女性編集部

編集部

子どもがいる家庭の場合は、手厚い保障を持てる民間保険会社も検討する必要がありそうですね。

岡田教授

人生の段階に合わせて保険を見直すことも重要です。

女性編集部

編集部

どんなタイミングで保険を見直せば良いのでしょうか?

岡田教授

例えば、独身時代は最低限の保障で良いかもしれませんが、結婚して子どもが生まれたら手厚い保障が必要になりますし、子どもが独立したら死亡保障の必要性は低くなるかもしれません。

高齢者に共済が支持される背景

女性編集部

編集部

共済・保険の加入をめぐる実態-共済・保険に関する意識調査をふまえて-』の中で、年齢が高い人に共済が支持されている理由には、何があると考えられますか?

岡田教授

高齢者層に共済が支持される理由の一つとして、かつて生協活動に熱心だった方々が高齢になったことが考えられます。

また、先ほどお話しした年齢一律の掛金制度は、年齢が高くなるほど割安になるため、逆選択の結果として高齢者の加入が増加したと推察されます。

女性編集部

編集部

同調査で共済加入者の満足度として最も多かったものが「保険金や共済金が正確(誠実)に支払われそう」という回答でした。

しかし近年、民間の保険会社も給付金支払に対して、WEB請求システムを導入したり、迅速な対応のために取り組んでいると思います。

共済・保険の給付金支払に対する満足度の差は、なぜあるのでしょうか。

岡田教授

その調査は2012年のものです。

現在同様の調査を行えば、共済と保険の給付金支払いに対する満足度の差は縮まっていると推察されます。

女性編集部

編集部

満足度の差が縮まった要因はどんなことが考えられますか?

岡田教授

過去には、共済の方が迅速な給付をアピールし、それが加入者の安心感に繋がっていました。

共済は店舗網などの接点が充実しており、対面での手続きがスムーズだったことも影響しているでしょう。

また、保険会社はより複雑な商品が多い分、請求手続きも煩雑になりがちでした。

女性編集部

編集部

安心感が満足度に繋がっていたんですね。

岡田教授

しかし現在、共済・保険業界全体で「顧客経験価値(CX)」が非常に重視されています。

保険金や共済金の支払いは、目に見えない「保障」が具体的なサービスとして提供される瞬間です。

正確、迅速かつ丁寧な対応は、加入者の情緒的価値を高め、満足度の向上に繋がります。

女性編集部

編集部

民間保険会社もわかりやすい手続きと迅速な対応になってきているんですね。

岡田教授

日本生産性本部が実施する「顧客満足度調査(JCSI)」によると、共済を含む生命保険部門では、大手の生協共済が例年上位を占めています。

女性編集部

編集部

民間保険会社の商品がわかりづらいといわれていた理由はどんなことが考えられますか?

岡田教授

保険会社が多様なニーズに応えようと商品開発を進めた結果、商品の選択肢が増え、複雑になったためです。

しかし、最近ではインターネット専業の保険会社(ネット系生保)の台頭により、シンプルでわかりやすい商品も増え、より手軽に加入できるようになっています。

自分に合った保険を見つけるために

女性編集部

編集部

現在では、共済はもちろん民間の生命保険会社でもさまざまな商品が販売されており、消費者の選択肢が多いと感じます。

そんな中、自分にあった保険を選ぶためには何をポイントに比較すれば良いでしょうか。

岡田教授

まず、ご自身の年齢、家族構成、財産、収入、そしてリスクに対する考え方を考慮することが重要です。

その上で、一度ライフプランを立ててみることをおすすめします。人生は計画通りにはいかないものですが、将来を見据えることは大切です。

女性編集部

編集部

ライフプランはどのように考えればよいでしょうか?

岡田教授

金融庁の「ライフプランシミュレーター」や生命保険文化センターの「e-ライフプランニング」など、便利なツールを活用してみるのも良いでしょう。

女性編集部

編集部

ライフプランを立てたら、次は何を考えればよいでしょうか。

岡田教授

価格を重視するのか、保障内容を重視するのか、ご自身の優先順位を明確にすることで、保険の選択肢を絞ることができます。

必要な保障を明確にするためには、公的保障(社会保障)に関する知識も大いに役立ちます。

公的医療保険と民間の備え

女性編集部

編集部

日本は公的医療保険制度が充実しており、医療保険など個人での備えは必要ないという考え方もあると思います。

岡田教授は医療保障の必要性についてどのようにお考えですか?

岡田教授

公的医療保険の高額療養費制度は、国民にとって非常に重要なセーフティネットであり、保険本来の役割を果たしています。

しかし、先日国会でも議論されたように、公的医療保険制度の持続可能性は重要な課題です。

医療保険不要論は、現在の公的医療保険制度が今後も変わらず存続することを前提としているようですが、厳しい財政状況を考えると、加入者の負担が増える方向で制度改正が行われる可能性は高いと予想されます。

女性編集部

編集部

今まで受けられていた保障がなくなるリスクもあるということですね。

岡田教授

制度改正後、必要になってから民間の医療保険に加入しようとしても、健康状態によっては加入が難しい場合も考えられます。

民間の医療保険や共済は、公的保険制度を補完する役割が期待されるのではないでしょうか。

女性編集部

編集部

公的保険制度で不足する部分を民間の医療保険で補うことが大切ということですね。

岡田教授

海外には、公的と民間の役割分担を前提に医療保険制度が設計されている国もあります。

日本も将来的にはそのような方向へ進む可能性もあると見ています。

保険不要論とリスクマネジメント

女性編集部

編集部

近年、「資産形成を優先するべき」「保険はもったいない」といった保険不要論も聞かれます。

人生の中で考えられるリスクに対し、保険で備えておくメリットはありますか?

また、どのように保険でリスクマネジメントしていくのが良いでしょうか。

岡田教授

保険の最も重要な機能は、リスクの移転と分散です。

もし保険という仕組みが社会に存在しなければ、私たちはそれぞれが貯蓄などで将来のリスクに備える必要がありますが、その合計額は実際に支払われる金額を大きく上回り、社会全体の資源配分の無駄が生じます。

岡田教授

全員が万一に備えて大金を貯蓄した場合、実際にそのお金を使うのは一部の人だけであり、残りの貯蓄は社会全体で見れば使われないまま滞留することになります。

保険の存在意義は、まさにそのような非効率性を改善することにあります。

女性編集部

編集部

必要以上の貯蓄が発生してしまうことにも問題があるんですね。

岡田教授

また、十分な資産が積み上がる前に事故や病気などのリスクが発生した場合、資金が不足してしまう可能性もあります。

保険に加入していれば、貯蓄が少ないときのリスクにも対応できます。

したがって、保険で備えるべきリスクは、発生頻度は低いものの、発生した際の経済的インパクトが大きいものが中心となります。

女性編集部

編集部

リスクが大きいことはわかっていても、自分が事故にあうことは想像しづらく、保険はもったいないと感じてしまいます。

岡田教授

行動経済学のプロスペクト理論では、人は低い確率のリスクに対して、保険料が掛け捨てになることを嫌い、加入をためらう傾向があると説明されています。


一方、確率加重関数を用いると、人は低い確率を過大に評価する心理が働き、保険に加入するという説明もあります。

女性編集部

編集部

事故や病気のリスクを実際よりも高く感じる人もいるんですね。

岡田教授

これらの点を踏まえると、健康増進型保険のように、予防活動によってリスクを低減させ、保険料が安くなるような商品が望ましいといえるでしょう。

読者へのメッセージ

女性編集部

編集部

生命保険選びに悩んでいる読者に、プロとして一言アドバイスを頂けますでしょうか。

岡田教授

現在、生命保険商品は非常に多様化しており、適切な選択は容易ではありません。

理想の保険が見つかるまで加入を先延ばしにしてしまうと、健康上の理由で希望する保険に加入できなくなる可能性もあります。

ある保険学者は「保険は最初の選択であり、最後の選択である」という言葉をのこしています。

これは、保険に入っていなければ、万が一の事態が起こっても保険金を受け取ることができないという意味です。

生命保険選びに悩んでいる方は、完璧な選択でなくても、まずは加入することを検討すべきです。

もちろん、保険には取引コスト(付加保険料)がかかるため、可能な範囲でリスクを軽減してから加入するのが本来の意味ですが、ここでは定期的に保険を見直し、必要に応じて新たな保険を手配するなど、常に最善の選択を心がけていただきたいと思います。

女性編集部

編集部

ありがとうございました!

まとめ

生命保険商品は多様化しており、適切な商品を選ぶことは難しく感じる人も多いでしょう。

しかし、人生の段階に合わせて保険を見直すことは重要です。

人生におけるリスクに備え、安心して毎日を送るために、自分のライフプランに合った保険選びを始めてみてはいかがでしょうか。

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執筆者 編集・ライター

ほけんのコスパ編集部

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