出産を控えている人の中には、「帝王切開で出産するといくらかかる?」「保険に入っていたほうが良い?」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
帝王切開は基本的に公的医療保険制度の対象となるため、治療費は3割負担となり高額療養費制度も利用できます。
また、民間の医療保険に加入していると給付金を受け取れる可能性もあります。
今回は、帝王切開にかかる費用や医療保険の必要性について、保険のプロが詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
帝王切開は公的医療保険と民間の医療保険どちらも対象になる
女性医療保険であれば、妊娠・出産時のトラブルにさらに手厚く備えられる
妊娠してから医療保険に加入すると、不担保条件が付く可能性が高い。早めに検討しておくのがおすすめ
目次
帝王切開にかかる費用はいくら?
帝王切開で出産した場合、公的医療保険制度が適用されます。
帝王切開の治療費負担額は次の通りです。
緊急帝王切開
診療報酬点数 :22200点
医療費 :22万2000円
自己負担額(3割):6万6600円
選択帝王切開
診療報酬点数 :20140点
医療費 :20万1400円
自己負担額(3割):6万420円
帝王切開自体の自己負担額は6万円前後ですが、別途入院費用や食費、個室利用料(差額ベッド代)などが必要になるため注意が必要です。
自然分娩と異常分娩の違い
自然分娩の場合、公的医療保険制度や民間の医療保険の対象とならないのに対し、帝王切開などの異常分娩であればいずれも対象となります。
また、治療費負担が一定額を超えた場合は高額療養費制度も利用できるため、異常分娩の場合自己負担額は軽減させることができます。
ただし、自然分娩と比べて入院日数は長引く傾向にあり、その分費用負担も体の負担も大きくなるリスクがあります。
医療保険に加入していれば、異常分娩で給付金が受け取れるため、差額ベッド代や医療費に充てることできるメリットがあります。
(参考:出産費用の状況等について 令和6年11月21日|厚生労働省)
(参考:出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について|厚生労働省)
(参考:令和5年(2023)患者調査 統計表|厚生労働省)
参考)帝王切開で出産する割合
帝王切開での出産は、年々増加傾向にあります。
分娩件数に対して帝王切開が占める割合は、2023年で29.1%となっており、3~4人に1人が帝王切開で出産している計算になります。
また、2011年と比較すると、5%の増加となっており、年々帝王切開の出産件数が増えていることがわかります。
帝王切開が増加している背景としては、女性の結婚年齢が高くなったことにより35歳以上での出産、いわゆる「高齢出産」が増えていることが挙げられます。
併せて不妊治療の実施件数も増加しており、ハイリスク出産が増えていることも帝王切開の増加の要因と考えられます。
(参考:令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告|厚生労働省)
帝王切開は民間の医療保険で保障される?
帝王切開は異常分娩とみなされるため、民間の医療保険の保障対象となります。
入院日額給付金や手術給付金を受け取れる可能性があるので、医療保険に加入している人は保障内容を再度確認しておくようにしましょう。
また、女性特約を付加している場合、上乗せで給付金を受け取れる可能性があります。
保障範囲は保険会社によって異なるので、事前に約款を確認するか、保険会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。
今後子どもを考えていて、妊娠・出産時のトラブルに備えておきたい人には、女性特約を付加した女性医療保険がおすすめです。
保険会社によって受け取れる給付金の額や保障内容が異なるため、いくつかの保険会社で比較しながら検討してみましょう。
帝王切開で受け取れる給付金
帝王切開で出産したときに受け取れる可能性がある給付金は、次の通りです。
・入院日額給付金
・入院一時金(特約を付加している場合など)
・手術給付金
・女性疾病給付金(特約を付加している場合)
入院日額給付金と手術給付金は、医療保険の主契約になっていることが一般的です。
主契約が入院一時金タイプになっている場合は、入院日数に関係なく一時金を受け取ることができます。
特約として入院一時金を付加できる医療保険も多いので、保障内容や受け取れる金額は事前に確認しておきましょう。
また、帝王切開の場合、女性特約を付加していれば主契約に上乗せする形で給付金を受け取ることができます。
Q.帝王切開したら医療保険でいくら受け取れる?
例として、次のケースで考えてみましょう。
入院日額給付金と女性疾病給付金は、入院日数に応じて受け取れます。
また上記に加え女性特約では、特定の手術も保障対象となって上乗せの給付金を受け取れるケースもあります。
女性医療保険を新規で検討する場合は、保障範囲の違いなどをいくつかの保険会社で比較して決めると良いでしょう。
Q.帝王切開は共済でも保障される?
A.帝王切開での出産も、共済の保障対象となる可能性があります。
多くの共済では異常分娩を保障対象としているため、帝王切開で出産した場合に給付金を受け取れる可能性があります。
ただし、加入から1年以内の帝王切開では手術給付金は支払われないと定められている場合もあるため、注意が必要です。
帝王切開に備えて医療保険に入るべき?
帝王切開で出産した場合、公的医療保険が適用されるため、高額療養費制度を利用することで自己負担額を軽減させることができます。
収入によって自己負担額は異なりますが、年収370万円~770万円の人であれば、1カ月の医療費の自己負担額は9万円前後になります。
この程度であれば、貯蓄や出産育児一時金でまかなえると感じる人もいるかもしれません。
一方で、出産時のトラブルにより入院が想定以上に長引いたり、個室療養をすることで費用が大きくなってしまうリスクもあります。
民間の医療保険では、帝王切開はもちろん、その後の病気やケガのリスクもカバーできます。
子どもができたら、何かとお金が必要になります。
自分の病気やケガのリスクに事前に備えておくことには、メリットがあるといえるでしょう。
ただし、すでに妊娠している場合、特別条件が付いて今回の帝王切開は保障対象外になる可能性が高いので注意してください。
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帝王切開で医療保険の給付金請求をするときのポイント
帝王切開で出産したら、加入中の医療保険で給付金を受け取れる可能性があります。
ここからは、医療保険の給付金請求のポイントをお伝えします。
加入中の保険会社に給付金請求したい旨を伝える
まずは、加入中の保険会社に給付金請求の旨を伝えます。
基本的に、退院後の連絡で問題ありません。
保険会社の加入者専用ダイヤルに電話をかけるか、最近ではWEB上で給付金請求を受け付けている保険会社も増えています。
給付金請求の連絡をする際は、加入している保険の証券番号、入院期間や出産日を控えておくとスムーズです。
必要書類を用意する
給付金請求依頼をしたら、保険会社から必要書類が送られてきます。
必要書類の記入をして、診断書と併せて保険会社へ返送しましょう。
給付金請求で必要になる書類の例
- 保険会社所定の給付金請求書
- 医療機関発行の領収書
- 診断書
- 身分証明書(改姓手続きなどが済んでいない場合)
保険会社による審査を待つ
必要書類を提出したら、保険会社が給付金請求の内容に不備が無いかや、支払対象となるかを確認する審査が行われます。
審査には平均1週間程度かかります。
もし、書類を返送してから一定期間進捗が無ければ、一度保険会社に連絡してみるようにしましょう。
着金があったら、金額が正しいか確認する
給付金請求の内容に問題が無ければ、指定口座に給付金が振り込まれます。
また、保険会社から給付金支払明細が送られてくるので、金額に誤りがないかを念のため確認しておきましょう。
Q.医療保険の給付金請求はいつまでにすれば良い?
A.給付金請求の事案が発生してから3年以内に給付金請求を行うようにしましょう。
保険法の95条には、保険給付をする権利は3年間と定められています。
3年以上経過してしまうと、時効となり給付金請求の権利を失いますので注意してください。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2025年4月1日-2025年4月30日)
妊娠中でも医療保険に入れる?
現在妊娠中の人で、もしもに備えて医療保険に入っておきたいと考えている人もいるでしょう。
妊娠中でも医療保険に加入できる可能性はありますが、注意点もいくつかあります。
妊娠中だと特定疾病・部位不担保が付く可能性がある
妊娠中の場合、医療保険への加入自体は可能ですが、今回の出産は保障対象外とする条件が付くことが一般的です。
そのため、今回の出産での帝王切開に備えたい場合は、希望に沿うことができなくなります。
保険会社によっては、年齢によって条件が付かないケースもありますが、ほとんどの場合1年間の不担保条件が付くことになります。
できるだけ妊娠前に保険の検討を済ませておくと良いでしょう。
Q.過去に帝王切開を経験していても医療保険に入れる?
A.加入自体に大きな影響はありませんが、場合によっては特別条件が付くことがあります。
過去に帝王切開を経験していても、医療保険には問題なく加入できる可能性が高いでしょう。
しかし、帝王切開をした時期によっては特別条件が付くこともあります。
完治から3年以上経過していたり、40歳以上の場合や、実子が2名以上いる場合、特別条件が付かずに契約できる可能性があります。
Q.2回目の帝王切開は保障される?
A.加入中の医療保険に特別条件が付いていなければ、保障の対象となります。
基本的に、帝王切開で給付金を受け取れる回数に制限はありません。
しかし、妊娠や出産に係わる特定疾病不担保の条件が付いている場合、その期間は保障外となります。
いま一度、加入中の保険の保障内容や、特別条件の有無を確認しておくと良いでしょう。
帝王切開とは
帝王切開とは、母体か赤ちゃんに何らかの問題が生じたとき、手術で子宮から赤ちゃんを取り出す出産方法のことです。
帝王切開について、詳しく見ていきましょう。
帝王切開で出産するケース
帝王切開には、「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」の2つがあります。
【予定帝王切開】
妊娠中の検査などから自然分娩(経腟分娩)に適さないと判断され、事前に計画して行う帝王切開
【緊急帝王切開】
自然分娩(経腟分娩)を予定していたが、妊娠経過中や出産中に異常があり緊急で行う帝王切開
予定帝王切開をすることが多いケース
- 逆子
- 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 前置胎盤
- 以前に帝王切開の経験がある
- 以前に帝王切開以外の子宮の手術をしたことがある
- 子宮筋腫など合併症がある など
緊急帝王切開をすることが多いケース
- 出産中に赤ちゃんがひっかかって出てこれない
- 出産中に赤ちゃんの心拍が弱まって危険な状態
- 妊娠高血圧症候群等が原因で、お母さんの具合が悪くなった
- 前置胎盤から出血があった など
実際に帝王切開になるかどうかは、事前の検査や、お母さんと赤ちゃんの状態から判断されます。
出産前で帝王切開になるか不安な人は、かかりつけ医に相談しましょう。
帝王切開の方法
帝王切開には、下腹部を縦に切る「腹部正中縦切開」と、横に切る「下腹部横切開」の2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
一般的に、縦切開のほうが赤ちゃんを取り上げるまでの時間が早く、術野が広いという利点があるとされています。
しかし、おなかを縦に切るので傷跡が目立ってしまうというデメリットがあります。
一方、横切開は傷跡が目立ちにくいというメリットがあり、術後感染などの可能性が低くなるという報告もあります。
通常は横切開が推奨されますが、すぐに赤ちゃんを取り出す必要があるような緊急事態では、手術時間が短い縦切開が選択されるようです。
(参考:腹壁切開|公益社団法人 日本産婦人科医会)
帝王切開のリスク
主な帝王切開に伴うリスクは次の通りです。
- 傷の痛み
- 出血
- 傷跡が残る
- 肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)
帝王切開で出産すると、傷の痛みに加え、傷口が広がって出血するリスクもあります。
また、子宮の戻りが悪いことで弛緩出血を起こすこともあるといわれています。
弛緩出血は、出産が終わっても出血が止まらない状態のことで、割合は高くありませんが子宮の全摘出が必要になるケースもあります。
さらに症状がひどいと、母体死亡に至る恐れもあります。
帝王切開のリスクとして、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)も挙げられます。
自然分娩の場合、出産時に歩くなどしてある程度体を動かすことができます。
しかし帝王切開の場合、麻酔をしているため1時間前後ベッドに寝たままの状態になります。
すると、赤ちゃんの重みが加わることで静脈に血栓ができやすくなり、血栓が詰まるエコノミークラス症候群になる恐れがあります。
帝王切開時のエコノミークラス症候群を防ぐため、出産前に弾性ストッキングを着用したり、脱水予防の点滴を行うこともあるようです。
帝王切開で利用できる公的制度
帝王切開で出産したときに利用できる公的制度について見ていきましょう。
高額療養費制度
帝王切開で出産した場合、医療費は公的医療保険の対象となります。
高額療養費制度は公的医療保険制度のひとつで、1カ月の医療費負担が上限額を超えたとき、差額が変換される仕組みです。
自己負担額の上限は年齢や収入によって異なります。
現役世代の場合は次の通りです。
年収が370万円~770万円の人であれば、1カ月の実質自己負担額は約9万円前後になります。
ただし、この金額には個室料金(差額ベッド代)や、食費などは含まれません。
実際に支払う金額はこれよりも高くなる可能性がある点には注意しておきましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、帝王切開に限らず出産した場合に受け取ることができる給付金です。
支給額は令和5年4月から、42万円から50万円に引き上げられました。
支給を受ける条件は、健康保険の被保険者または被扶養者が、妊娠4カ月(85日)以上で出産したことと定められており、早産や死産、流産、人工妊娠中絶も支給対象となります。
(参考:出産育児一時金の支給額・支払方法について|厚生労働省)
(参考:子どもが生まれたとき|全国健康保険協会 協会けんぽ)
医療費控除
帝王切開での出産費用も含め、1年間に支払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を差し引いて10万円(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額×5%)以上だったときは、医療費控除を受けることができます。
医療費控除の申請をすることで、住民税や所得税の負担を軽減させることができます。
医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。
会社員が年末に行う年末調整では申請できないので注意してください。
(参考:医療費控除を受ける方へ|国税庁)
出産手当金
会社員や公務員の場合、産休期間に出産手当金を受け取ることができます。
出産手当金は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社からの給与支払いがなかった期間を対象として支払われます。
支払われる金額は、過去12カ月の標準報酬月額の平均の約3分の2です。
(参考:出産手当金について|全国健康保険協会)
傷病手当金
会社員や公務員であれば、傷病手当金を受け取れるケースもあります。
出産手当金と傷病手当金を両方受け取ることはできませんが、出産手当金の額が傷病手当金の額よりも少ない場合、差額を受給することができます。
傷病手当金が受給できるのは、医師の診断により働けないと診断されたときのみになります。
(参考:傷病手当金について|全国健康保険協会 協会けんぽ)
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育児休業給付金
育児休業給付は、子どもの年齢や養育の状況に応じて雇用保険から支給されます。
原則、子どもが1歳になるまでの間に育児休業を取得した場合に受給できると定められています。
保育所が見つからないなどの事情がある場合は、最長2歳になるまで、給付金を受け取ることができます。
(参考:Q&A~育児休業等給付~|厚生労働省)
国民年金保険料の免除
国民年金第1号被保険者(自営業やフリーランス)の場合、出産日が属する月の前月から4カ月間、国民年金保険料が免除されます。
免除期間も保険料を納付したものとして扱われ、老齢基礎年金の受給額に反映されます。
国民年金保険料の免除の届け出は、出産予定日の6カ月前から可能です。
出産後の届け出も可能ですが、出産後は何かと忙しく体調もすぐに回復しない可能性があるため、早めに届け出を済ませておくのがおすすめです。
(参考:国民年金保険料の産前産後期間の免除制度|日本年金機構)
社会保険料の免除
会社員や公務員の場合、産前産後休業期間は厚生年金保険料が免除されます。
免除される期間は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までの間で、被保険者負担分と事業者負担分の両方が免除されます。
申請は基本的に事業主が日本年金機構へ行います。
(参考:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構)
まとめ
今回は、帝王切開にかかる費用や、医療保険の必要性についてお伝えしてきました。
帝王切開での出産は公的医療保険制度が適用されますが、差額ベッド代や食費は自己負担が必要になります。
入院が長引くと医療費負担も大きくなるリスクがあるので、必要に応じて民間の医療保険で保障を用意しておくと安心です。
ほけんのコスパでは、帝王切開など女性疾病が手厚く保障される女性医療保険を複数掲載しています。
年齢と性別を入力するだけで簡単に保険料のシミュレーションも可能です。
ぜひ保険選びの参考にしてください。
あなたの年齢で医療保険の保険料はいくら?
