保険への加入を検討する際、最低限入っておくべき保険を知っておきたい人は多いのではないでしょうか。
備えたいリスクによって加入するべき保険は異なります。
本記事は最低限入っておくべき保険をリスク別、年代別、ケース別に分けて、保険のプロがわかりやすく解説します。
さらに、自分に合う保険の選び方も併せてご紹介します。
この記事を読んでわかること
最低限入っておくべき保険は備えたいリスクによって異なる
最低限入っておくべき保険をリスク別に見ると「病気や怪我に備える保険」「遺族の収入減に備える保険」などがある
自分に合う保険を選ぶときは備えておくべき保障の優先度と全体のバランスを見ることが大切
目次
最低限入っておくべき保険の種類【リスク別】
保険選びで悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
備えたいリスクによって加入した方が良い保険の種類は異なります。
最低限入っておくべき保険は下記の通りです。
リスク別に、各保険の特徴について解説していきます。
①病気やケガに備える保険
娯楽費や教育費などは計画的に貯めることはあっても、医療費を意識的にしっかり確保できているケースは少ないのではないでしょうか。
日々生活を送る中で予期せぬ高額な医療費が必要になった時のために、入っておきたいのが「病気やケガに備える保険」です。
病気やケガに備えるには、以下の保険を検討すると良いでしょう。
- 医療保険
- がん保険
医療保険
健康上のトラブルが起きた時に活躍するのが「医療保険」です。
病気やケガによる入院・手術を幅広く保障しているため、年齢を問わず加入している人が多い保険です。
医療保険は保障される期間によって「終身型」と「定期型」に分けることができます。
定期型は一定期間を保障するタイプで、満期を過ぎても契約を続ける場合は契約の更新や新しい保険への切替を行う必要があります。
更新時は保険加入時よりも年齢が高くなっているので、保険料が高くなる場合がほとんどです。
一方、終身型は保障が一生涯続き、基本的に保険料や保障内容が変わることはありません。
保険料の支払い方法は、一生涯保険料を支払う方法と、一定の期間や年齢まで支払う方法などがあります。
どちらもメリット・デメリットがあるので家計の状況に合わせて検討すると良いでしょう。
がん保険
がん保険は、がん治療に関わる費用負担に備えることができる保険です。
がん治療は一度発症すると、治療が数年にわたるケースもあり、高額化しやすいのが特徴です。
そのため、多くのがん保険は入院や手術、通院への備えだけでなく、がん診断確定時や放射線治療・抗がん剤治療を受けた時、先進医療を受けた時など、さまざまな治療が給付金の対象となっています。
がん保険は治療の多様化に伴い、新商品が開発されやすい保険です。
自分の入っている保険が、現在のがん治療に合っているか、定期的な見直しが必要な保険ともいえるでしょう。
②働けなくなった時の収入減に備える保険
長引く治療や緊急手術、リハビリ、後遺症など、病気やケガ(事故)を原因とした「働けなくなるケース」は日常にも潜んでいます。
働けなくなった時の収入減に備えるには、以下の保険を検討すると良いでしょう。
- 所得補償保険
- 就業不能保険
所得補償保険
損害保険会社が販売する所得補償保険は、一時的(短期的)に減少した収入を補うための保険です。
「7日程度の免責期間」「1年〜最長5年程度の保険期間(※長期補償型もある)」「契約前の年収の約50〜70%程度が保険金の上限」という特徴から、傷病手当金に近い補償となっています。
働けなくなってから補償を受けられるまでの期間が短いというメリットがある反面、社会復帰が難しい状況でも補償が終わってしまうデメリットがあります。
公的保障が少ない自営業者、フリーランスの場合などは短期間でも収入に影響が出やすいため、傷病手当金の代わりに加入を検討しても良いでしょう。
就業不能保険
生命保険会社が販売する就業不能保険は、長期的な収入減に備えるための保険です。
一般的に「免責期間は60日」「保険の満期は60〜70歳を上限に選択」「設定できる給付金は年収により月額10〜50万円程度」という特徴があり、長期的に生活を維持することを目的としています。
傷病手当金だけでは不足する部分を補填したり、傷病手当金の給付終了後や治療等による退職後の生活費に活用することができます。
会社員や公務員でも働けなくなった場合に備え、毎月必要な社会保険料や生活費を最低限でも準備しておくと安心でしょう。
③老後に備える保険
老後は身体が弱り病気がちになるだけでなく、長生きによる金銭的なリスクが考えられます。
ここでは、老後資金向けの保険のうち、個人年金保険について見てみましょう。
個人年金保険(定額・変額)
個人年金保険は老後に向けた貯蓄型保険で、定額個人年金保険と変額個人年金保険の2種類があります。
将来の年金原資となる保険料を支払った後、一定の年齢に達したら、一時金または年金を受け取ることができる仕組みです。
定額タイプは、将来受け取れる年金額があらかじめ決定している保険です。
変額タイプは投資信託で運用する保険です。
運用実績によって将来の年金額が変動するため、運用状況によっては払込保険料を下回る可能性もあります。
一方で、大きく資産が増える可能性もあるので、積極的に資産を増やしたい人は検討しても良いでしょう。
④亡くなった時の遺族の収入減に備える保険
一家の大黒柱や、家計を共に支えていたパートナーが亡くなった場合に備えるのが「死亡保険の保険」です。
まとまった葬儀代はもちろん、遺族の収入減を継続的に補うために加入しておきたい保険です。
死亡保険は、以下の商品を検討すると良いでしょう。
- 定期保険
- 終身保険
- 収入保障保険
それぞれの特徴について解説します。
定期保険
定期保険は、契約時に保険期間があらかじめ定められた死亡保険で、保険期間中に死亡や高度障害状態となった場合に保険金が支払われます。
保険料は掛け捨てが基本で、そのため割安な保険料で大きい保障を持つことができます。ただし、保険期間終了後の保障はなくなります。
契約を更新することも可能ですが、更新時の年齢で保険料が再計算されるため、その後の保険料は高くなります。
老後の葬儀代や遺族にお金を残したい場合など、年齢を重ねてから必要になる保障は、あらかじめ終身保険の活用を検討しておくと良いでしょう。
終身保険
終身保険は、一生涯保障が続く死亡保険です。
契約が継続する限り、遺族は保険金を受け取ることができるので、葬儀代や死後の整理資金などに活用することが可能です。
終身保険は貯蓄性が高く、途中で保険を解約すると解約返戻金を受け取ることができます。
万が一の保障機能と資産形成機能、両方を兼ね備えた保険といえるでしょう。
ただし、短期間で解約すると解約返戻金は支払った保険料に対して、ごくわずかな場合がほとんどです。
将来受け取れる解約返戻金は、保険の設計書などで確認することができるため、将来の資金需要の時期も考慮しておくと、計画的に資産形成を行うことができます。
収入保障保険
収入保障保険は、加入当初を最大として年数が経過するにつれて保険金額が徐々に減少していく死亡保険です。
「保険期間30年・保険金額10万円(月額)」というように、保険金額を年金月額で設定しています。
例えば契約から5年目に死亡した場合「年金月額10万円×12ヶ月×25年=保険金額3000万円」、25年目に死亡した場合は「年金月額10万円×12ヶ月×5年=保険金額600万円」、このように保険金額が推移します。
多くの場合、保険料は掛け捨てで、年金支払保証期間が設けられています。
定期保険のなかでも合理的な仕組みの保障で、他の定期保険と比較しても割安な保険料となっています。
最低限入っておくべき保険の種類【年代別】
年代別に最低限入っておくべき保険について解説していきます。
20代、30代におすすめの保険
20〜30代は、人生の節目となる大きなイベントが増えてくる時期。
結婚、マイホームの購入、子どもの誕生、転職を経験する人もいるかもしれません。
資産を形成しながら、生活の基盤を作り上げていく時期といえるでしょう。
このような大切な時期に万が一のことが起こった場合、家計へのダメージは大きくなりがちです。
万が一に備え、医療保険、就業不能保険への加入は検討しておきましょう。
特に既婚者は、配偶者や子どものために死亡保障への加入は最優先で検討しておきたいところです。
多くの場合、若い世代は体力的に恵まれているため、保険の必要性に疑問を持つことがあるかもしれません。
保険は万が一の事態が起きても、自分や家族が金銭的に困らないように加入するもの。
同年代でも病気やケガが理由で、金銭的に不本意な状況に置かれている人もいます。
自分にも起きる可能性があることとして、前向きに検討してみることをおすすめします。
40代、50代におすすめの保険
40〜50代のファミリー世帯は、子どもが独り立ちするまでの期間は死亡保険、就業不能保険への加入を続けておきたいところです。
ただし、子どもを育て養う期間は子の成長とともに着実に短くなっています。
子どもの教育費、住宅ローンの返済など、なにかと家計が圧迫されやすい状況なら、死亡保険金額も含め、加入中の保険を見直してもよいでしょう。
40代以降は30代と比べて病気のリスクも高くなります。
がんを例にあげると30代と40代では約3倍も罹患率が高まっています。
医療保険やがん保険への加入も検討しておくと安心です。
健康面や身体面での変化が生じると、健康診断での指摘が増えることも多くなります。
保険加入へのハードルも上がってきますので、万が一が起きても慌てないように早めに備えておきましょう。
働き盛りの独身の場合
働き盛りの独身の方は、少しでも保険料が安く、健康なうちに医療保険への加入を検討しておきましょう。
健康に不安を抱えたままで過ごしていると、健康診断の結果によっては、保険への加入ができなくなる可能性もあります。注意しておきましょう。
また、働き盛りの年齢で万が一のことがあると、遺失する利益は大きくなりがちです。
就業不能保険などに加入し、経済的な損失にも備えておくことも大切です。
死亡保険に関しては、結婚や子どもを持つ意向があるなら、保険料が安いうちに終身保険などに加入しておくのもよいでしょう。
貯蓄性の高い終身保険は葬式代や死後の整理資金を準備するだけでなく、自分自身の将来の資産作りにも活用できます。
子どもを養っている場合
子どもを養育している場合、死亡保険、就業不能保険、医療保険などを優先して検討しましょう。
住宅ローンの返済や家賃、水道光熱費などの固定費はもちろん、学校に関する費用、習い事、塾代など、子どもにかかるお金は子どもが成長するにつれて、どんどん多くなっていきます。
家計を支える大黒柱が死亡、あるいは入院や通院、病気などによる退職や休職するようなことがあると、家計に与える影響は計り知れません。
自分に何かがあった時、生活が困窮することは避けたいと考える場合は、死亡保障などへの加入を前向きに検討することをおすすめします。
定年退職した場合
定年退職のタイミングで年金生活に移行する人の場合、家族を養うための大きな保障は不要になることがほとんどです。
ただし、退職金や預貯金があり、相続などについて老後以降に対策したいという場合は、税制メリットがある貯蓄型の保険を活用するのも一案です。
老後は病気やケガで入院することが増え、いずれ介護の問題に直面する可能性も高くなります。
入院や通院の費用負担を減らすため、医療保険に加入して備えておくと経済的な不安は少なくなるでしょう。
介護に関しては終身型の介護保障保険などに加入しておくと良いでしょう。
安い保険料で保障を厚くしたいと考えている人ほど、若いうちから加入を検討しておくことをおすすめします。
そもそも生命保険に入る必要性とは?
最低限加入した方が良い保険について解説しましたが、そもそも公的保障が充実している日本で、なぜ生命保険は必要なのでしょうか。
生命保険の必要性について、保険のプロが解説します。
必要性①公的保障が適用されない部分をカバーする
日本の公的保障は手厚いという理由から「民間保険は不要」という意見もあります。
しかし、治療の種類や働けない期間によっては自己負担の費用が高額となり、手元にあるお金だけでは支払いが難しくなるケースがあることも事実です。
例えば、月収30万円(年収360万円)の人が闘病やリハビリなどで1年間仕事ができなかった場合の必要費用について見てみましょう。
医療費支払い:高額療養費適用の上限医療費×12ヶ月(※1)=約64万円
収入の補てん:傷病手当金ではカバーしきれない月収の3分の1×12ヶ月(※2)=約120万円
公的保障ですべてをまかなうことはできず、年間で180万円以上の出費となる可能性も否定できません。
保険は本当に必要ないのか、万が一が起こった場合を想定して家計を振り返ってみることも大切です。
※1:全国健康保険協会 高額療養費 を参考に下記で算出
(8万100円×3ヶ月)+(4万4400円×9ヶ月)=63万9900円
※2:傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 を参考
例:差額ベッド代
先進医療とは、厚生労働省が定めた高度な医療技術のことです。
診察や検査、投薬、入院料などの通常の治療と共通する部分は保険適用となりますが、先進医療にかかる費用は全額自己負担となります。
先進医療費だけで数十万〜数百万円の支払いとなるため、治療の選択肢をより広げたい場合は高額な支払いに備えておく必要があります。
参考)生涯負担する医療費は約2300万円といわれている
厚生労働省の資料によると、生涯でかかる医療費の総額は2300万円。
うち半分は70歳以上で必要になると示されています。
子どもの医療費は地域の助成により負担がない場合がほとんどですが、高齢者は所得に応じて1〜3割の支払いが必要です。
表によると70〜74歳の医療費は256万円となっており、自己負担が2割だと年間51.2万円、3割だと年間76.8万円になる計算です。
少子高齢化により自己負担割合は段階的に引き上げられることも想定されます。
老後の生活費に加え、将来の医療費まで備えるとなると、賃金が伸び悩んでいる昨今、家計への負担は極めて大きいといわざるをえません。
(参考:公的医療保険って何だろう?|厚生労働省)
参考)がんの発症率が高い50代の平均貯蓄額は「1305万円」
金融広報中央委員会の実施した「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」によると、金融資産を保有している世帯のうち、50代の平均貯蓄額(※)は1792万円・中央値は750万円です。
一部の資産を多くもつ世帯が全体の平均を引き上げており、実態に近い中央値とは1000万円以上の乖離が生じています。
参考までに各年代の貯蓄額を中央値でみると、30代370万円、40代500万円、50代750万円、60代1350万円、70代1420万円となっています。
また、60代で貯蓄額が大きく増えているのは、退職金が影響していると考えられます。
これから始まる老後生活を考えると、50代で平均に近い2000万円弱の貯蓄があったとしても、医療費で切り崩してしまうのはもったいないといえるでしょう。
※貯蓄額は預貯金以外に保険や有価証券も含んだ金額となっています。
参考)大企業の場合、健康保険組合の保障が充実している場合もある
大企業では健康保険組合の保障が充実しているケースもあります。
例えば、トヨタ自動車健康保険組合では、1カ月あたりの自己負担分の医療費が高額となった場合、「自己負担額-2万円」で算出した金額を受診月から原則3ヶ月後の給与に組み入れて給付されます。
これを「付加給付」と呼びます。
高額な医療費でも実質の支払いが2万円で済むことになり、一時的に費用を前払いできる貯蓄があれば民間保険の必要性は低くなるでしょう。
必要性②万が一のリスクに保障機能と貯蓄機能で備える
万が一のリスクには保障機能と貯蓄機能が備わった保険を選んでおけば、より柔軟に対応することができます。
たとえば、病気や事故によるケガなどで金銭的な負担が生じた場合、保障があれば、これまで貯めてきたお金を大きく減らすことなく治療に専念することができます。
貯蓄性の高い終身保険は死亡保障を得られる上に、解約返戻金を将来の生活費に活用することも可能です。
働き盛りの現役世代は、これからの人生が長いため、万が一のリスクに備え、できる範囲内でしっかりとした保障を準備することが大切です。
参考)生命保険の加入率
「公益財団法人生命保険文化センター」の調査によると民間の生命保険会社をはじめ、共済・郵便局などで取り扱っている商品を含む生命保険全体の加入率は82.1%です。
平成5年の79.1%以降もっとも高い加入率となっており、個人がリスクヘッジの一環として保険を活用していることがわかります。
なお、全体で見ると商品別の加入率は医療保険が73.1%、老後保障としての個人年金保険が21.7%です。
ほけんのコスパでは、医療保険はA生命・個人年金保険はB生命など「目的ごとに最適な商品」を組み合わせることができます。
新たな保険契約を検討している場合は、いくつかの保険を比較すると良いでしょう。
参考)年間払込保険料の平均
「公益財団法人生命保険文化センター」の調査によると、令和元年の年間払込保険料の平均額は全体が19.6万円、男性が23.4万円、女性が16.8万円となっています。
全体平均額は平成5年から8.8万円減少していますが、これは収入保障保険や更新のない終身医療保険など、新しいタイプの保険が登場したことで、結果的に保険料負担が軽減されたものと考えられます。
消費者にとって選択肢が増えていることは確かなので、長い間、保険の見直しをしていない人は契約内容を確認してみると良いでしょう。
自分に合う保険の選び方
自分に合う保険を選ぶには、備えておくべき保障の優先度と全体のバランスを取ることが重要です。
現時点で生活に余裕がなく貯蓄も少ない場合は、掛け捨て型の保険で保険料を抑えながら保障を持ちましょう。
比較的資金に余裕がある場合は、貯蓄型の保険を取り入れて「万が一のことが起こった場合」「結果的に健康で老後を迎えられた場合」の両方のケースで、支払った保険料を有効に使えるプランを組むと良いでしょう。
また、「がん保険」「介護保険」など一見同じように見える保険でも、保険金が支払われる条件は保険会社によって異なります。
保険を選ぶ時には保険料だけでなく、保険金の受け取りやすさなども考慮して検討しましょう。
まとめ:最低限入っておくべき保険は人それぞれ
生命保険は「万が一のことが起きなかったら保険料がもったいない」「公的保障で十分」という理由でいらない、不要だといわれています。
しかし、生命保険に加入することで「万が一のことが起こった時の備え」をしっかり作ることができるメリットがあります。
人によって備えたいリスクは異なるため、最低限入っておくべき保険も人によって異なります。
どんな保険が必要なのか悩んでいる方は、ほけん必要度診断を利用してみてはいかがでしょうか。