「医療保険に複数加入する意味はある?」「重複して給付金は受け取れる?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
現在の医療保障を手厚くするために、追加で医療保険の加入を検討していたり、両親が加入してくれていた保険と自分で加入した保険が重複してたり、さまざまな理由があるでしょう。
複数の医療保険に加入すればそれだけ保障も手厚くなる一方、そもそもの必要性や給付金をどちらからも受け取れるのかなどの疑問も出てきます。
この記事では、医療保険に複数加入するメリットとデメリットや給付金の受け取り方について詳しく解説していきます。
この記事を読んでわかること
医療保険は特別な事情がなければ1つの契約で十分
交通事故が原因で入院をした場合、自動車保険と医療保険のどちらからもお金を受け取ることができる可能性がある
医療保障だけを手厚くするのではなく、がんや死亡などその他のリスクについても備えることが大切
目次
医療保険に重複加入しても保障を受けられる
基本的に、医療保険に重複加入していても給付金の受取り基準に該当していれば、どちらからも給付金を受け取ることができます。
医療保険は、入院給付金や手術給付金が主な保障内容です。
もし、入院して手術を受けたようであれば、加入している医療保険のどちらからも入院給付金と手術給付金を受け取ることができます。
一方で注意が必要なのは、先進医療に関する保障です。
医療保険の先進医療特約では、公的医療保険制度対象外となる先進医療にかかる費用が全額保障されることが一般的です。
しかし最近では、先進医療を受けた病院に保険会社が直接費用を支払う、直接支払いサービスが増えています。
その場合、2つの医療保険に加入していたとしても、先進医療にかかった費用を二重で受け取れないケースがあります。
医療保険に重複して加入する場合は、先進医療特約はどちらかに付加していれば十分でしょう。
医療保険に重複して加入するメリット・デメリット
医療保険に重複して加入することには、それぞれメリットとデメリットがあります。
どちらも理解したうえで、自分にとって必要な医療保険を選ぶことが大切です。
メリット
医療保険に複数加入すると、保障が充実したり、今後の保険の見直しで有利になるケースもあります。
詳しく解説していきます。
保障が充実する
保険商品にはそれぞれの強みがあります。
そのため、医療保険を複数組み合わせることにより、保険ごとの強みを活かした保障が持てるメリットが生まれます。
例えば、医療保険には大きく分けて「定期タイプ」と「終身タイプ」の2種類があります。
一生涯保障が続く終身タイプに加えて、手厚く保障しておきたい時期だけ定期タイプを組み合わせることで、効率よく医療保障を準備することもできます。
特に、入院して仕事を休んだ際、すぐに収入が途絶えてしまう可能性がある自営業やフリーランスの人であれば、医療保険に重複加入するメリットが大きいかもしれません。
入院費だけでなく、収入の一時的な補填として医療保険を活用することもできるでしょう。
保険の見直しがしやすくなる
医療保険にいくつか加入していると、不要になった保障から解約することができ、保険の見直しをしやすくなるメリットがあります。
保険契約が1つの場合も、特約の解約や主契約の減額などはできますが、保険商品によってはそれらに一部制限がかかることもあります。
保障が必要な時期や用途ごとに分けて契約しておくほうが、解約しやすくなることもあるでしょう。
自身のニーズやライフプランに合わせて保障を組み合わせることで、将来の保険の見直しも柔軟に行うことができます。
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デメリット
医療保険に複数加入することで、保険料負担が大きくなってしまったり、いざというときの手間が増えてしまうデメリットもあります。
詳しく解説していきます。
保険料が増える
医療保障を手厚くしたいからといってむやみに複数の保険に加入していては、毎月の保険料負担が大きくなってしまいます。
一般的に、年間の保険料合計額は年収の6%〜8%程度に収まるよう工夫するのが良いとされています。
この保険料合計額とは、医療保険だけでなく死亡保険やがん保険なども含め、加入しているすべての保険の保険料を合計した額です。
資産形成目的で加入している保険がある場合はこの限りではありません。
しかし、掛け捨ての保険だけで毎月の家計を圧迫するほどの保険料負担になってしまうのは問題です。
医療保険を検討する際は、今後も継続して加入できる範囲の保険料になっているかを確認しておくことが大切です。
給付金を請求する手間や費用が増える
医療保険をいくつかの保険会社に分けて加入していると、いざというときの給付金請求で手間や費用が増えるデメリットがあります。
入院や手術をして給付金を請求する際には、それぞれの保険会社で手続きをしなければなりません。
場合によっては、診断書を2枚取り付ける必要もあるため、費用もその分増えてしまいます。
ただでさえ入院前後はさまざまな手続きがあり忙しいものです。
医療保険の請求は可能な限り簡便に済ませたいということであれば、契約は1つにまとめておくのが良いでしょう。
保障内容が重複しやすい
医療保険は商品ごとに強みが違うとはいえ、おおまかな保障内容は重複する部分が多くあります。
そのため、医療保険に複数加入しても、保障内容が重複してしまい必要以上の保障になってしまう可能性があります。
当然ではありますが、複数の医療保険に加入するとその分保険料も多く払わなくてはいけません。
人生におけるリスクは「入院」だけではないので、そのほかの考えられるリスクにも備えておく必要もあります。
まずは、自分が医療保険に加入する目的と、どれくらいの保障を必要としているかを整理したうえで保険選びをしましょう。
そもそも医療保険の複数加入は必要?
医療保険に複数加入することのメリットとデメリットを見てきましたが、実際に医療保険をいくつも契約することは必要なのでしょうか?
基本的に、医療保険は1つの契約で十分といえます。
1人でいくつもの医療保険に加入している人は多くありません。
それよりも、特約などを付加した保障の手厚い医療保険に1つ加入している人が多いでしょう。
近年では、短期入院に手厚く備える特約や、がんや三大疾病に備える特約、通院に備える特約など、さまざまな特約を医療保険に付加することができます。
自身が手厚く備えておきたい部分に特化した特約を付加し、安心できるプランを組むのがおすすめです。
また、医療保険だけでなく、がん保険などその他の保険と組み合わせて保障を持っておく人も増えています。
人生で考えられるリスクは、入院することだけではありません。
大きな病気に罹患して通院治療をしなければならなくなったり、その結果収入が減少してしまう可能性もあるでしょう。
さまざまなリスクを考慮し、できるだけ幅広く保障を用意しておきましょう。
医療保険の保障額を増額したい場合
なかには、加入中の医療保険の保障額に不安を感じていて、保障額を増額したいと考えている人もいるでしょう。
基本的には、すでに加入している保険の保障額は増額できない決まりになっていることがほとんどです。
そのため、保障額を増額したい場合は、追加で新たな保険を検討するか、現在の保険を解約して新たな保険に入りなおすかのどちらかになります。
健康状態に問題がなく、新しい保険に加入できるようであれば、現在の保険を新しい保険に乗り換えるのが良いでしょう。
医療保険は年々進化しており、保障内容も現在の医療事情に合わせたものに変化しています。
新しい医療保険に乗り換えることで、最新の保障を準備することができます。
一方、持病や既往歴があり健康状態に不安を抱えている人は、引受基準緩和型医療保険に追加で加入するケースが多いでしょう。
引受基準緩和型医療保険は、通常の医療保険に比べて保険料が割増しされているため、現在加入している医療保険を活かしたうえで、必要な分だけ追加で加入するのがおすすめです。
参考)入院時の自己負担費用の平均
実際に入院をするとどれくらいの費用が発生するのでしょうか。
令和4年度の調査によると、過去5年間に入院した人の自己負担額は平均19.8万円となっています。
最も多い回答は10万円~20万円ですが、入院日数が長くなるほど自己負担費用は高くなる傾向にあり、61日以上入院した人の平均負担額は75.9万円にものぼります。
この金額は、高額療養費制度適用後の治療費と、食事代や差額ベッド代などの雑費も含んだ合計額です。
入院時は、治療にかかる費用以外の出費も必要になることが多いため、注意しましょう。
思わぬ出費で家計に影響を与えないよう、健康なうちに準備をしておくことが大切です。
(参考:令和4年度「生活保障に関する調査」|生命保険文化センター)
参考)先進医療費用
先進医療とは、公的医療保険が適用されない高度な治療法のことをいいます。
治療にかかる技術料は全額自己負担となるため、高額な費用が必要になることもしばしばです。
例えば、がんの治療で用いられる「重粒子線治療」や「陽子線治療」は、1クールで200万円~300万円の自己負担が必要とされています。
そのほか、さまざまな病気の検査や治療で先進医療を活用できることがありますが、公的医療保険対象外のため費用負担が大きくなることは覚えておく必要があります。
費用の問題で治療の選択肢を狭めたくない人は、医療保険で先進医療を保障できる特約を付加しておきましょう。
がんに手厚く備えたい場合
病気の中でも特にがんに手厚く備えたい場合は、医療保険に複数加入するのではなく、がん保険を追加で検討するのがおすすめです。
がん保険とは、文字通りがんになってしまったときのための保険です。
医療保険は主に「入院」と「手術」が保障対象となりますが、がん保険の場合は入院の有無に関わらず、がんと診断された時点で給付金が受け取れたり、通院での薬剤治療も保障されるのが一般的です。
医療保険にがん保障特約を付加することもできますが、すでに医療保険に加入している場合は新たにがん保険を検討するのが良いでしょう。
特に、がんと診断された段階でまとまったお金を受け取ることができる「がん診断一時金型」のがん保険がおすすめです。
医療保険とがん保険どっちに加入すべき?
基本的には、まず医療保険を検討する人が多いでしょう。
医療保険は病気やケガの種類を問わず、入院や手術をしたときに保障される保険です。
病気やケガに幅広く備えておきたい場合は、医療保険から検討するのがおすすめです。
しかし、生涯で2人に1人が罹患するといわれている「がん」も非常に身近な病気で、備えておくにこしたことはありません。
がん治療やがん罹患後の収入減少に備えておきたい人は、医療保険と併せてがん保険に加入するのが良いでしょう。
一方、ある程度貯蓄があり、ちょっとした入院程度であれば経済的な不安がない人もいます。
経済的な不安がないようであれば医療保険には加入せず、治療が長引き経済的負担が大きくなることが予想されるがんに重点的に備えておくのも、選択肢のひとつです。
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医療保険が重複している場合の給付例
交通事故が原因で入院をした場合、自動車保険と医療保険のどちらからもお金を受け取ることができる可能性があります。
骨折での平均入院日数である約38日間、入院したと考えます。
医療保険で日額5000円の保障に加入していた場合、5000円×38日=19万円を受け取ることができます。
加えて自動車保険で人身傷害を付帯していた場合、医療保険とは別に自動車保険でも保険金を受け取ることができます。
自動車保険の人身傷害の場合、ケガの治療費や仕事を休んでいる間の休業損害、精神的な損害等も含めて保険金が計算されます。
自動車の運転をする人であれば、自動車保険に加入していれば医療保険は必要ないと考えるかもしれません。
しかし、自動車保険の人身傷害はあくまでも契約車両に乗っていて起こった交通事故が補償の対象です。
歩行中に交通事故に遭った場合でも入院給付金等の保障対象となる医療保険は、保障の基本として用意しておくのがおすすめです。
(参考:令和2年度患者調査|厚生労働省)
がんに罹患した場合
がんに罹患した人が医療保険とがん保険のどちらにも加入していたら、実際にどれくらいの給付金が受け取れるのでしょうか。
入院日額5,000円の医療保険と、がん診断一時金100万円のがん保険に加入していた場合で、実際に受け取れる金額を見ていきます。
まず、がんと診断された段階でがん保険の診断一時金100万円を受け取ることができます。
その後、がん治療のために入院や手術をすれば、次は医療保険から給付金を受け取ることとなります。
がんの平均在院日数は18.2日です。
平均日数程度入院したとすると、入院給付金の額は5000円×18日=9万円となります。
これに加え、手術を受けた場合は別途手術給付金を受け取ることができます。
また、がん保険の診断一時金を1回きりではなく、1年ごとに何回でも受け取れる商品もあります。
治療が長引いたり、再発や転移があったとしても、複数回診断一時金を受け取れるがん保険であれば、その都度給付金を受け取れて治療に専念することができます。
(参考:令和2年度患者調査|厚生労働省)
自分に必要な保険の選び方【ケース別】
人それぞれ、必要な保障の種類は異なります。
近年では、医療保険にさまざまな特約を付加できるようになっているため、1つの契約でさまざまな保障を用意することも可能です。
一方で、契約をすべて1つにまとめていると、将来的な保険の見直しがしづらくなってしまうこともあります。
また、医療保険とがん保険でそれぞれ保険料が低廉な商品を選ぶことにより、保険料を抑えられる場合もあります。
必要に応じていくつかの商品を組み合わせて保障を用意しておくのがおすすめです。
ここからは、自分に必要な保険の選び方をケース別に詳しく解説していきます。
保険料は抑えつつ幅広く保障を持ちたい人
できるだけ保険料は抑えたいということであれば、まずは医療保険に1つ加入しておくのが良いでしょう。
医療保険であれば病気やケガの原因を問わず、入院した際の費用が保障されるので、保険料を抑えて幅広く保障を持ちたい人にはぴったりです。
では、医療保険の保障額はどれくらいが適正でしょうか。
収入や家族構成によっても異なりますが、5日未満の短い入院であれば1日あたりの自己負担平均は約2.1万円とされています。
短い入院であっても、10万円前後の自己負担が発生する可能性があるので、それらを貯蓄と給付金でまかなえるよう考えておく必要があります。
日額5000円の医療保険だけではまかなえない可能性があるため、入院一時金の特約を付加するなど工夫するのがおすすめです。
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がんへの保障を手厚くしたい人
がんにしっかり備えておきたい人は、医療保険とがん保険を組み合わせて加入しておくのが良いでしょう。
医療保険だけでは、がんの長引く通院治療や、がん罹患後の収入の減少などに備えておくことはできません。
医療保険で入院や手術に幅広く備えつつ、がん特有のリスクにはがん保険で備えておくのがおすすめです。
では、がん保険の保障額はどれくらいあると安心できるでしょうか。
がんで手術や薬剤治療を受けた場合、高額療養費制度を利用して負担額を軽減させることができます。
高額療養費制度を利用した場合の自己負担額は収入や年収によって異なりますが、一般的な世帯年収の家庭であれば1カ月あたり8万円~9万円程度の自己負担額となります。
高額療養費制度には、4カ月目からさらに自己負担額が軽減される多数該当の制度もありますが、治療費だけでなく雑費などもふまえると、年間100万円前後の医療費が発生することが考えられます。
がんの診断一時金100万円を目安として、手厚く備えたい場合は薬剤治療の保障を組み合わせると良いでしょう。
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先進医療特約はがん保険と医療保険のどちらにつけるべき?
医療保険とがん保険に加入する場合、先進医療特約をどちらに付加するか迷う人もいるのではないでしょうか。
基本的には、医療保険に先進医療特約を付加しておくほうがおすすめです。
がん保険の先進医療特約の場合、対象となる先進医療を「がんの治療のみ」に限定していることもあるため、より幅広い先進医療に対応するのであれば医療保険に付加するほうが良いといえます。
先進医療特約は、契約している保険のどれかに付加されていれば問題ないので、迷ったときは医療保険に付加しておきましょう。
万が一のことがあったときの保障も持ちたい人
万が一の死亡保障も準備しておきたい人は、医療保険に加えて死亡保険を検討しましょう。
一部の医療保険には死亡保障を特約として付加することもできますが、保障額の制限があり、手厚い死亡保障を持っておくには不向きかもしれません。
また、医療保険と別に死亡保険を持っておくことで、将来的な保険の見直しがしやすいメリットがあります。
基本的には、病気やケガに対する備えと万が一の死亡に対する備えは、分けて考えておくのがおすすめです。
死亡保険には、一定期間のみ保障する「定期保険」と、一生涯保障が続く「終身保険」があります。
子どもが小さい間に手厚い死亡保障を確保しておきたい人には定期保険が向いていますが、葬儀費用などいつ必要になるかわからないお金を一生涯用意しておきたい人には終身保険が向いています。
ニーズによって選び方も異なるため、まずは「何のために」「いつまで」保障が必要かを明確にしておきましょう。
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まとめ
今回は、医療保険に重複加入するメリットとデメリット、おすすめの保険の選び方について解説してきました。
基本的には、医療保険にいくつも加入していても保障内容が重複してしまうことが考えられるため、特別な事情がなければ1つの契約で十分でしょう。
医療保障だけを手厚くするのではなく、がんや死亡などその他のリスクについても考えておく必要があります。
とはいえ、「自分にとってどんな保障が必要なのかわからない」「1人で保険を選ぶのは難しい」と悩んでいる人も多いでしょう。
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保険選びの参考に活用してみてはいかがでしょうか。