「医療保険とがん保険の違いは?」「自分はどっちに加入するべき?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
医療保険は入院時や手術時に備える保険であり、がん保険はがんに特化した保険です。
医療保険とがん保険は併用することができ、医療保険でがんに対する保障を特約として付加することも可能です。
一方で、併用する場合は保険料のバランスや保障の内容が重複しないようにするなど、注意が必要です。
本記事では医療保険とがん保険の違いを知っておきたい人に向けて、それぞれの特徴や仕組みの違い、どちらを選ぶべきか悩んだときの選び方を保険のプロが分かりやすく解説します。
この記事を読んでわかること
医療保険とがん保険の違いは、保障対象と保障内容、免責期間の有無
医療保険・医療特約の加入率はどの世代においても90%を超えている
保険は保障と保険料のバランスを見ながら加入を検討することが大切
目次
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医療保険とがん保険の違い【比較表】
医療保険とがん保険の違いについて、以下の比較表を参考に詳しく見ていきましょう。
①②保障対象と保障内容
医療保険とがん保険の共通の保障内容として「入院給付金」や「手術給付金」などがあります。
一見同じ内容に見えますが、保障の対象は大きく異なります。
医療保険はがんを含むさまざまな病気やケガに対して保障されるのに対し、がん保険はがんのみを保障の対象とします。
「がん保険は保障範囲が狭いため不要なのではないか」という意見もありますが、保障内容ががんに特化している分、幅広い保障内容が準備されています。
また、医療保険は「特約」という形でさらに保障を手厚くすることも可能です。例えば、「先進医療給付金特約」や「保険料払込免除特約」などが挙げられます。
がん保険については、がんと診断された際に給付金を受け取れる「診断給付金」や、抗がん剤やホルモン剤などの薬剤治療を受けるたびに給付金を受け取れる「薬剤治療給付金」が一般的な保障内容となります。
ほかにも放射線治療に対する保障や緩和ケアに対する保障などもあります。
Q.三大疾病保険との違いは?
医療保険はがんを含むさまざまな病気やケガで入院したり、手術を受けたりした際に給付金を受け取ることができる保険です。
一方、がん保険とはがんに特化した保障を持てる保険のことをいいます。がんによる入院や手術はもちろん、がんと診断された際に「診断給付金」を受け取ることができる商品もあります。
そして、三大疾病保険とはがんに加えて急性心筋梗塞などの「心疾患」、脳卒中などの「脳血管疾患」に備えることができる保険となっています。
③免責期間
免責期間とは保険会社が保険金、給付金を支給するまでの期間のことをいいます。免責期間中に発生した病気やケガなどに対しては保障対象外となります。
医療保険は一般的に免責期間がないため、保険に加入した後の入院や手術に関して、給付金をすぐに受け取ることができます。
しかし、医療保険であっても「がんに起因する保障内容は加入後90日間の免責期間がある」点には注意が必要です。
加入後90日以内にがんへの罹患が分かった場合は、契約が無効となります。よって、三大疾病保険についても、がんに関しては90日間の免責期間があります。
また、一般的にがん保険には90日間の免責期間の設定があるものが多いため、その点にも注意しましょう。
④1入院あたりの支払い限度日数
1入院あたりの支払限度日数については、がん保険は原則として無制限となっているため、入院が長期化した場合でも備えることができます。
支払限度日数は保険会社によって取り扱いが異なるケースがあるため、あらかじめ保障内容を確認しておくことが大切です。
一方、医療保険は契約時に「30日、60日、120日」などから支払限度日数を定めているため、日数を超えた分の保障はありません。
参考)平均入院日数
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、過去5年間で入院をした人の平均入院日数は「17. 7日」となっています。
病気の種類や症状の重さによって入院日数は変わりますが、「8日~14日」が24.1%、「15日~30日」が17.8%と、7日以上の入院を経験している人が多いことが分かります。
⑤通算入院支払い限度日数
通算入院支払限度日数についても、がん保険は一般的に無制限となっていますが、保険会社によって取り扱いが異なるケースがあるため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
医療保険に関しては、一般的に1000日や1095日で設定されている保険会社が多く、おおよそ「3年」というのが一つの目安になっています。
公的医療保険制度の適用外になる費用
現在日本では、現役世代の場合、医療費に対して自己負担額が3割になるなど、「公的医療保険制度」が整備されています。
公的医療保険制度を利用すれば、民間の医療保険やがん保険で備える必要性が低いと感じる人もいるかもしれません。
しかし、実際には公的医療制度の適用外になる費用があるため、思わぬ出費に見舞われる可能性があります。
公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4年度)生活保障に関する調査《速報版》」によると、直近の入院時の自己負担費用の平均額は19.8万円でした。
自己負担費用を少しでも減らしたい場合は、民間の医療保険の加入を検討しましょう。
例)差額ベッド代
公的医療保険制度の適用外になる項目の一つが「差額ベッド代」です。入院する際に個室を希望すると発生する費用です。
一般的に個室というと自分だけの部屋のように思いますが、医療機関によっては「4人部屋」から個室とみなされるケースがあるため、個室の定義には注意が必要です。
例)先進医療の技術料
先進医療の技術料もまた、公的医療保険制度の対象外となります。
上記の表を見ると、非常に高額な治療も含まれており、これらを全額自己負担でカバーするのは難しいといえます。
先進医療特約を付加した医療保険に加入しておくことで、高額の治療費をカバーしてくれるため、費用を気にせず安心して治療に専念することができます。
高額療養費制度の上限額
日本の公的医療保険制度には、「高額療養費制度」というものがあります。
年収ごとに自己負担額の上限が定められており、1か月の医療費がその上限を超えた場合は、超えた分の医療費が後で返ってくる仕組みになっています。
例えば、上記のウの区分に入る人で、1か月の医療費が100万円かかったとします。
実際の自己負担額は以下のような計算式になります。
【年収約500万円の人で、1か月の医療費が100万円かかった場合】
8万100円+(100万円‐26.7万円)×1%
=8万100円+7330円
=8万7430円
このように、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額を減らすことができます。
がんの罹患率
国立がん研究センターが行った「累積がん罹患リスク(2019年データに基づく)」によると、男女共に2人に1人はがんに罹患していることが分かります。
特に、男性の生涯がん罹患リスクは全体の65.5%となっており、3人に2人はがんに罹患するといっても過言ではありません。
がんの治療費
がんに罹患した際の年間の治療費について、公益社団法人全日本病院協会のデータによると、いずれの場合も1入院費用は100万円前後となっており、1日単価も6万円以上と高額になっています。
医療保険・がん保険の加入率
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、医療保険・医療特約の加入率はどの世代においても90%を超えていることが分かります。
また、がん保険・がん特約の加入率は、男女ともに40代が最も多くなっており、約半数を占めています。
30代~50代の加入率が高くなっており、このことから特に働き世代は医療保険やがん保険を検討する傾向が多いといえます。
医療保険がおすすめなのは「広く保障を受けたい人」
医療保険がおすすめなのは「広く保障を受けたい人」です。
医療保険ではがんを含むさまざまな病気やケガを保障対象としています。入院や手術、通院など幅広い保障内容が揃っており、まさに「基本の保障」だといえます。
また、比較的がんの罹患リスクが低い10代〜20代に関しては、将来の不測の事態に備える医療保険を優先するのも良いでしょう。
まずは医療保険で基本の保障を持ち、年齢が上がってきたタイミングでがん保険を追加で検討するのもおすすめです。
がん保険がおすすめなのは「がんにしっかり備えたい人」
がん保険がおすすめなのは、「がんにしっかり備えたい人」です。
既に医療保険に加入している人や、医療保険の必要性はあまりないが、がんだけには備えておきたい人などは、がん保険への加入がおすすめです。
がん保険は医療保険と比べるとがんに特化した保障内容となるため、がんに対して手厚く備えることができます。
また、医療保険とがん保険にそれぞれ加入することも可能ですが、医療保険に特約としてがんの保障を追加することも可能です。
一つの契約にまとめて保障を持ちたい人などは、医療保険と特約を組み合わせる方法を検討すると良いでしょう。
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20代
20代はまだがんの罹患リスクはそこまで高くない年代だといえます。
まずは、さまざまな病気やケガを保障範囲とする医療保険を優先する方が良いでしょう。
医療保険の保険料は、基本的には年齢が若いほど、同じ保障内容で加入する場合の保険料は安くなります。
20代の若くて保険料負担が小さい内に、一生涯の保障が持てる終身型の医療保険に加入しておくのも一案でしょう。
30代・40代
30代・40代は徐々にがんをはじめとしたさまざまな病気に罹患するリスクが高まってくる年代でもあります。
また、単身世帯なのか、家族がいる世帯なのかによっても、加入すべき保障内容や保障の手厚さは変わってくるでしょう。
医療保険、がん保険ともに加入者の割合は30代・40代で非常に高くなっていました。それだけ健康面が気になって加入する人が多いということの裏返しだともいえます。
加入を検討している場合は、少しでも年齢が若い内に加入することをおすすめします。
年齢が上がってからの新規加入は、毎月の保険料負担も多く、また、健康状態に懸念がある場合は加入できないか、できたとしても保険料が高くなったり、保障範囲が狭くなるなどの条件が付加されることもあります。
参考)年齢が上がるにつれてがんの罹患率が高まる
がんの罹患率は年齢が上がるにつれて高まっていきます。
年齢が上がってからがん保険に加入するとなると、負担しなくてはいけない保険料も罹患リスクと相まって高くなります。
また、がん保険には90日間の免責期間もあるため、加入を考えている場合は健康面も考慮して早めに検討するのが良いでしょう。
50代
50代での保険への新規加入は、40代までと比べても保険料が一般的に高くなります。
手厚い保障を求めることももちろん大切ですが、自分にとって優先すべき保障は何かをしっかりと見極めてから加入する必要があります。
保障範囲の広さを優先する場合は「医療保険」、がんに特化した保障を必要とする場合は「がん保険」といったように、保障と保険料のバランスを見ながら加入を検討しましょう。
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しっかり備えたい場合は保険の併用や特約も検討する
保障を充実させたい場合は医療保険とがん保険を併用することをおすすめします。併用することで、がんを含む、さまざまな病気やケガに備えることができるためです。
また、医療保険は「がん特約」として特約を付加することもできるため、1つの契約で保障範囲を広げることも可能です。
保険選びは個人の健康状態やライフスタイルによって異なるため、自身のニーズや予算に合わせて柔軟に選択することが大切です。
保険料のバランスを考える
医療保険とがん保険を併用する際に、負担する保険料がいくらになるのか、気にする人も多いでしょう。
保障内容を充実させようと思えば、医療保険とがん保険、両方に加入するのが望ましいですが、その分、保険料の負担が増す点に注意が必要です。
あらかじめ払える保険料の額をイメージして、その範囲内で加入ができるのか、できない場合は保障内容の優先順位をどうするべきかを考えましょう。
保障範囲が重複しないようにする
医療保険とがん保険を併用する際は、保障内容が重複しないように注意しましょう。
医療保険の保障内容は、入院給付金や手術給付金がメインですが、がんでの入院や手術でも給付を受けることができます。
がん保険の保障内容に入院給付金や手術給付金があると保障内容が被ることになります。
がん保険を検討する際は、医療保険でカバーできていない保障内容で加入するのがおすすめです。
医療保険とがん保険の賢い選び方
自分に必要な医療保険とがん保険の選び方について詳しく解説します。
医療保険の選び方
給付金の内容をふまえて、医療保険は以下の流れで選びましょう。
1.入院時・手術時の保障内容を決める
2.他の保障を付加するか決める
3.保険期間・保険料払込期間を決める
1.入院時・手術時の保障内容を決める
まずは基本保障となる「入院時」と「手術時」の保障から決めていきましょう。
入院時の保障は、1日入院するごとに受け取れる「入院日額」が基本保障となります。日額は3000円や5000円、1万円など幅広い金額から決めることができます。
1回の入院で保障される日数についても、30日や60日、120日などの中から設定ができます。
手術の保障は主に「入院日額×手術の種類によって決まった倍率をかけるタイプ」と「手術内容にかかわらず、決まった金額を受け取るタイプ」の2種類があります。
2.他の保障を付加するか決める
入院時と手術時の保障が決まったら、次はその他の保障(特約)を付加するかどうか決めていきましょう。
特約には「通院」や「特定疾病」、「先進医療」などが挙げられます。
特約を付加すれば保障は充実しますが、その一方で保険料負担は大きくなるため、その点には注意が必要です。
3.保険期間・保険料払込期間を決める
最後に保険期間と保険料払込期間を決めましょう。保険期間には「定期タイプ」と「終身タイプ」があります。
定期タイプは10年や15年ごとに更新があり、一定の年齢を迎えると更新できなくなり、満期を迎えることで保障が終了します。
一方、終身タイプは更新がなく、解約さえしなければ一生涯の保障を持ち続けることができます。
終身タイプの保険料払込期間には「短期払」と「終身払」があります。
短期払は「〇歳払」や「〇年間払」のように払込期間の終わりがあるタイプで、終身払は原則生きている間は払い続けるタイプとなります。
がん保険の選び方
がん保険を選ぶときは
・診断一時金の回数
・給付金がもらえるタイミング
・給付金の上限
などの条件を確認することが大切です。
また、がん保険でもらえる主な給付金は以下のとおりです。
ケース別に、がん保険の選び方について見ていきましょう。
最低限の保障のみを持ちたい場合
がん保険で最低限の保障のみを持ちたい場合は「診断給付金」を優先すべきでしょう。
診断給付金は「がんと診断された時点で一時金を受け取ることができる」という保障内容となります。
最初にまとまったお金を受け取ることができるため、精神的にも金銭的な不安は少し解消され、受け取ったお金はその後の治療費として使っていくことができます。
最近の診断給付金は複数回の給付が一般的となっており、再発や転移など、がんの治療が長引いた際にも対応できるようになっています。
保障を手厚くしたい場合
がん保険で保障を手厚くしたい場合は、診断給付金に加えて、特約を付加していくことをおすすめします。
例えば、放射線治療を受けた際に給付が受けられる「放射線給付金」や、抗がん剤やホルモン剤などの治療を受けた際に、治療を受けた月ごとに給付金を受け取れる「治療給付金」などがあります。
女性の場合は、乳がんや子宮がんなど、女性特有のがんに対する保障を付け加えることも選択肢の一つでしょう。
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Q.がん保険は既往歴ありでも入れる?
医療保険の場合は、「引受基準緩和型医療保険」といって、持病や過去の病歴がある人でも加入できるものが多くの保険会社で取り扱っています。
しかし、がん保険に関しては、がんの既往歴がある人に対して加入できる商品数は少ないというのが現状です。
がんの既往歴があっても加入できる保険も一部ありますが、選択肢が少なくなるため、自分が望む保障内容で加入できるかどうかは難しいかもしれません。
まずは現在の自分が加入できる保険を知ることが大切
医療保険もがん保険も、将来起こるかもしれない病気やケガ、がんに対して備えるための保険です。
そのため、過去に病気をしていたり、現在持病を患っていたりする場合は、どうしても加入に制限がかかってしまうことがあります。
いざ加入しようと思っても、健康状態を理由に加入できないということも起こりえます。
まずは、自分の現在の健康状態で加入できる保険があるのかを知ることが大切です。
まとめ
医療保険、がん保険を取り扱っている保険会社は数多くあります。
一つ一つの商品の特徴を理解し、比較したうえで自分に合った商品を探すのは難しいといえるでしょう。
まず、保険選びで悩んだ際は必要な保障と保険料のバランスを見ながら、複数の商品を比較しましょう。
どんな保障内容を優先したいのか、保険料の負担はどれくらいで検討しているのかなどによって、自分に合う保険は異なります。
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自分の将来にかかわる大切な保険です。しっかりと検討して自分に必要な保険を選びましょう。