「独身に死亡保険はいらない?」「独身におすすめの保険は?」と、自分に合う保険選びについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
独身の場合、死亡保険の必要性が低いこともありますが、人によって貯蓄額やリスクへの考え方が異なるため一概に不要とはいいきれません。
また、独身の場合は万が一の他にも、自身が病気やケガで働けなくなったときのリスクへの備えについても考えておく必要性があります。
本記事では「死亡保険は必要?」と悩む独身の人向けに、死亡保険の必要性を判断するポイントやリスク別・年代別におすすめの保険について、保険のプロがわかりやすく解説します。
この記事を読んでわかること
①自分に万が一のことがあったときに経済的に困る家族がいない場合は、死亡保障の必要性は低い
②葬儀費用などを残してあげたい家族がいる人は、必要に応じて死亡保障を検討するのがおすすめ
③独身の人にとって、病気やケガによる入院や就業不能などの備えておきたいリスクがある
目次
独身に死亡保険はいらない?不要といわれている理由
独身であれば死亡保障は必要ないと考えている人は多いかもしれません。
しかし、経済状況やその人の考え方によって、全く不要とはいい切れない場合もあります。
まずは、独身に死亡保障は不要といわれている主な理由を、保険のプロが詳しく解説していきます。
経済的に困る配偶者や子どもがいない
一般的に死亡保障は、自分に万が一のことがあったときに残された家族を経済的に支えるためのものです。
しかし、独身者の場合は配偶者や子どもがいないため、大きな死亡保障の必要性は低いといえるでしょう。
中には、親や兄弟にいくらか死亡保障を残してあげたいと考える人もいるかもしれませんが、数千万単位の死亡保障を用意することはあまりありません。
そのため、独身の人は死亡保障よりも、医療保険やがん保険などのいわゆる「生存保障」を重視する傾向にあります。
参考)独身の死亡保険の加入率
ニッセイ基礎研究所の行った調査によると、独身の男女の死亡保険加入率は以下の通りです。
【男性】
- 定期保険:20代16.5% 30代13.8% 40代4.5%
- 終身保険:20代27.2% 30代42.5% 40代54.5%
【女性】
- 定期保険:20代14.7% 30代15.5% 40代4.5%
- 終身保険:20代28.4% 30代31.0% 40代36.4%
男女ともに、掛け捨てで死亡保障を用意する「定期保険」に関してはどの年代も加入率が低い傾向にあるようです。
一方で、貯蓄性があって一生涯の死亡保障を用意できる「終身保険」の加入率は20%~40%ほどあり、特に男性では加入率が高くなっています。
葬儀費用のお金を貯蓄でまかなえる
人が亡くなると、葬儀費用などの死亡整理資金は必ず必要になりますが、何千万もかかるわけではありません。
そのため、ある程度まとまった貯蓄があればまかなえると思う人も多いようです。
一方で、両親や兄弟のために葬儀費用分は死亡保障を用意しておきたいと考える人もいるでしょう。
実際には自分の経済状況や家族の希望によって、死亡保障の必要性は変わってくるといえます。
参考)葬儀費用の平均額
鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」によると、葬儀費用の平均は約111万円となっています。
近年家族葬のような小規模な葬儀が増えたことや、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、葬儀にかかる平均額は減少傾向です。
同調査によると、葬儀をした人のうち55.7%が家族葬だったことも分かります。
一方で一般葬をする場合、規模によっては300万円前後の費用が必要になるケースもあります。
どのような葬儀を挙げたいかによっても準備しておく金額は異なりますが、上記を踏まえて必要に応じて生命保険を利用して備えておくのもひとつの方法です。
独身に死亡保険は必要?必要性が高い人・低い人【診断チャート】
「自分に万が一のことがあったときに困る人がいるかどうか」が死亡保障の必要性を考える際の重要なポイントになります。
独身者の場合、親や兄弟などにお金を残しておきたいと考えるのであれば、死亡保障を検討しても良いかもしれません。
そのうえで、保険以外の方法で十分に備えを用意できているかどうかで死亡保障の必要性を測るのが良いでしょう。
2022年度の生命保険文化センターの調査では、死亡保障を保険で用意している人は約60%となっています。
死亡保険の加入率は比較的高くなっていますが、自分にとっての必要性を考えたうえで加入を検討しましょう。
死亡保険の必要性が高い人
自分に万が一のことがあったときにお金をのこしたい人がいて、保険以外の備えも用意がない人は死亡保険の必要性が高いといえます。
「葬儀費用だけでも残してあげたい」「その後の生活を支えてあげたい」など、思いによって用意する必要のある金額は変わるため、目的を整理して保険を選ぶのが良いでしょう。
また、保障額と合わせて、いつまで保障があれば安心かを決めます。
一生涯保障が必要であれば「終身保険」、今から一定期間の保障で良いようであれば「定期保険」を選ぶのが一般的です。
自分や家族が必要な保障を死亡保障で準備しておくことで、その後の安心につながります。
死亡保険の必要性が低い人
自分に万が一のことがあっても経済的に困る家族がおらず、葬儀も最低限で良いと考えている人は、死亡保障に重きを置かず他のリスクに備えておくのが良いでしょう。
特に、入院が必要になったときや長期間働けなくなってしまうなど、自分が経済的に困る状況に対して備えておくのがおすすめです。
独身の場合は死亡保障の必要性が低い人も多いため、まずは自分の家族状況や経済面も踏まえて、必要な保障を整理していきましょう。
独身が保険で備えたい死亡以外のリスク
独身の人にとってのリスクは、死亡時以外にもいくつかあります。
特に自分自身が経済的に困ってしまう状況に対しては、あらかじめ準備をしておくのが良いでしょう。
ここからは、必要性が高い順に、備えておきたいリスクを解説していきます。
1.病気やケガのリスク
病気やケガによって入院してしまう可能性は誰にでもあります。
独身の人の場合は特に、治療費の支払が家計の負担になってしまう可能性があります。
「公的医療保険が手厚いから民間の保険は不要」と考えている人もいますが、実際には治療の種類や働けない期間によって、自己負担額が高額になるケースもあるため注意が必要です。
また、公的制度の対象外になる費用もあるため、想定外の出費が発生することも考えられます。
治療費の支払が難しくなってしまったり、貯蓄が減少してしまうのもひとつのリスクです。
いざというときのために準備をしておきましょう。
参考)入院時の自己負担費用の平均
生命保険文化センターの調査では、平均の入院日数は17. 7日です。
8日~14日入院した場合の平均費用は16.4万円となっています。
平均日数程度の入院であれば、貯蓄から支払える人も多いかもしれません。
しかし、それまで計画的に貯めてきた貯金を目的以外のことに使うことに抵抗を感じる人もいるでしょう。
参考)差額ベッド代
差額ベッド代とは、入院時に個室療養をする際にかかる費用で、公的保障の対象外になります。
そのため、医療費とは別に全額を患者が支払わなければなりません。
1人部屋の平均費用は1日あたり約8000円となっており、2週間入院した場合は10万円~12万円の自己負担が発生します。
(参考:主な選定療養に係る報告状況|厚生労働省)
参考)先進医療の技術料
先進医療とは、厚生労働省が認めた高度な医療技術のことで、治療にかかる技術料は全額自己負担となります。
そのため、先進医療費だけで数十万円~数百万円の支払が必要になります。
費用の問題で治療の選択肢を狭めたくない人は、高額な費用がかかる治療にも備えておくのが良いでしょう。
2.働けなくなるリスク
自分が働けなくなり収入が減少するリスクは、特に独身の人であれば備えを検討しておくのがおすすめです。
病気やケガで働けなくなってしまったとき、会社員であれば「傷病手当」を受け取ることができます。
しかし、給付されるのは給与の約3分の2の金額のため、それまでの給与が全額保障されるわけではありません。
特に独身の人の場合、自分の収入が減少してしまうと家計に直結する人も多いでしょう。
また、「傷病手当」は会社員や公務員のみが受け取れる保障で、自営業やフリーランスの場合は受け取ることができません。
そのため、自営業などの場合は、会社員よりもさらに働けなくなるリスクに備える保障の必要性が高いといえます。
参考)働けなくなる可能性
実際どれくらいの人が傷病手当を受け取るような状況になるのでしょうか。
全国健康保険協会の令和3年度の調査では、20代で1000人に約7.5人、30代で1000人に約5.8人となっています。
つまり、20代30代の若い世代では平均0.6%~0.8%の人が傷病手当を受け取っていることがわかります。
受給する確率は低いといえますが、一定数の方が利用している点は注意すべきポイントです。
また、一度こういった状況になってしまうと、長期間家計に影響を与えてしまうことも考えられるため、もしものために備えておくのが安心です。
3.老後資金が不足するリスク
老後の生活費が公的年金だけではまかなえないことも私たちが抱えているリスクです。
老後資金をどれくらい準備しておけば安心なのか悩んでいる人も多いかもしれません。
今は人生100年時代ともいわれる、長生きの時代です。
若いうちから計画的に、老後のための資金形成をおこなっておくことに越したことはありません。
どれくらいの老後資金が必要か、将来かかる医療費や介護費用についても考えておくことで、ある程度の準備ができるでしょう。
できるだけ早いうちから老後に必要な資金を毎月コツコツと貯蓄しておくと良いでしょう。
参考)老後資金の目安
実際、老後の生活費はどれくらい必要なのでしょうか。
総務省の2022年度の調査によると、単身世帯の月平均支出額は16万1753円となっています。
一方、受け取れる老齢年金は同じく2022年度のデータで、厚生年金加入者が平均14万4982円、国民年金加入者が平均5万3615円です。
つまり、厚生年金加入者で約1万6000円、国民年金加入者で約9万円の赤字になることがわかります。
老後平均余命まで生きるとすると、それなりに大きな金額が必要になることがわかります。
また、データはあくまでも2022年度の情報であり、将来年金の受け取れる額に変化が生じたり、物価の上昇により支出額が増えることも考えられます。
4.介護のリスク
長生きの時代には介護のリスクも伴うため、安心して老後を迎えるために備えておく必要があります。
介護や支援が必要になる人は、80歳代前半で約3割、85歳以降は約6割といわれています。
40歳以上が加入する公的介護保険は日本の公的な制度です。
公的介護保険は介護状態になったときに1割~3割負担で介護サービスが受けられるもので、自己負担が一切発生しないものではありません。
また、介護状態になったときには、車いすの購入費用や家のリフォーム代など、さまざまな出費が考えられます。
もちろん、健康で長生きしたいと誰もが願っていますが、年を重ねるほど介護のリスクが高くなることは念頭に置いておく必要があるでしょう。
介護にかかる費用と期間
実際に介護が必要になってしまったとき、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
生命保険文化センターの調査では、月々の介護費用平均は8.3万円となっています。
介護の平均期間が5年1カ月のため、その間毎月介護費用が必要になるとすると、大きな出費になるといえるでしょう。
また、毎月の介護費用だけでなく、一時的な出費も少なくありません。
同じ調査によると、介護に必要な車いすやベッドなどの購入費、家のリフォーム費用で平均74万円の支出があるとされています。
将来必要になるかもしれない介護費用に対して、しっかり備えておくことが大切です。
独身におすすめの保険【独身・リスク別】
我々は日々の生活の中でさまざまなリスクを抱えていますが、民間の保険を利用することでそれらに備えておくことができます。
特に独身であれば、自分自身が経済的に困ってしまう状況はできるだけ避けたいものです。
ここからは、独身の人が検討しておきたい保険をおすすめ順に紹介していきます。
1.病気やケガに備える保険
まず、病気やケガで入院が必要になったときの治療費への備えを最初に検討しておくのがおすすめです。
加えて、大きな病気で通院治療が長引いてしまったり、収入が減少してしまうリスクもあります。
病気やケガのリスクに備えられる保険を紹介します。
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院や手術を受けたときに給付金を受け取れる保険です。
入院が必要になると、数万円から数十万円の自己負担が発生することがあり、入院が長引くとさらに負担額が増加します。
また、公的医療保険制度対象外の「差額ベッド代」や「雑費」なども発生します。
手持ちの貯蓄だけでは支払えないケースもあったり、家計に大きな影響を与えることもあるため、健康なうちに医療保険で備えておくのがおすすめです。
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がん保険
がん保険とは、文字通りがんに罹患したときのための保険です。
主に、がんと診断されたときに受け取れる一時金や、薬剤治療を受けた月に受け取れる給付金の保障がメインです。
医療保険は、あくまでも入院時に備えるための保険です。
しかし、がん治療は入院の前後で通院治療が長く続く特徴があります。
単身で仕事を継続しながらがん治療を受けるとなると、身体的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。
経済的な不安だけでも保険で解消しておけば、治療に前向きに向き合うことができるでしょう。
特にがんは罹患者数が多い病気でもあるため、医療保険とセットでがんへの備えを検討しておきましょう。
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2.働けなくなったときの収入減に備える保険
病気やケガが原因で働けなくなってしまうと、収入が減少してしまうリスクがあります。
独身の人の場合は特に、自身の収入が減少すると家計に直接的な影響を与えます。
そのため、治療費負担に備える医療保険だけでなく、収入減少に備えられる保険を検討しておくのがおすすめです。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで一定期間働けなくなったときに給与の補填のような形で毎月給付金を受け取れるタイプの保険です。
保障内容は保険会社によって異なりますが、入院時だけでなく在宅療養時も保障対象となるのが特徴です。
傷病手当で受け取れる金額や、自分がいつまで働くかなどのライフプランに合わせて、保障額や保険期間を決めましょう。
また、一般的に就業不能保険には免責期間が設けられています。
「60日以上の就業不能状態に該当したとき」「同一月に10日以上連続した就業不能状態に該当したとき」など、保険会社によって保障対象は異なるため、加入時に確認しておきましょう。
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3.老後に備える保険
老後の資産形成は計画的に取り組んでいく必要があります。
しかし、「なかなか貯蓄が増えない」「銀行で貯蓄していくだけで良いの?」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
保険商品の中には、老後のための資産形成を目的としたものもあるため、上手に活用していきましょう。
個人年金保険(定額・変額)
個人年金保険は、老後の資産形成に特化した保険です。
毎月支払う保険料が積み立てられていき、60歳や65歳になったときに運用していた資金を年金形式で受け取れる仕組みです。
個人年金保険は、保険会社が預かった保険料をどのように運用するかで種類が分かれます。
主に日本円や外貨で債券運用する「定額個人年金保険」と、投資信託を利用して運用する「変額個人年金保険」があります。
外貨建てのものや変額タイプのものは運用ができる一方、資産が変動するリスクもあるため、しっかりとメリットデメリットを理解したうえで商品を選ぶことが大切です。
また、個人年金保険を利用することで、生命保険料控除や個人年金保険料控除といった所得控除の効果も期待できます。
保険を上手に活用して、計画的に資産形成に取り組みましょう。
4.介護に備える保険
将来必要になるかもしれない介護費用についても、今から考えておいて損はありません。
自分で介護費用のために貯蓄をしておくのも良いですが、介護状態になったときに給付金を受け取れる保険商品を活用するのもひとつの選択肢です。
介護保険
介護保険とは、保険会社が定める介護状態に該当したときに給付金を受け取れるタイプの保険です。
公的保障のひとつである介護保険ではまかなえない自己負担分を、民間の介護保険を使ってカバーすることができます。
保険商品によって、要介護認定の保障対象や給付金の受け取り方も異なります。
また、掛け捨ての商品もあれば貯蓄性のある商品もあるため、それぞれの違いや特徴を踏まえたうえで保険選びをしましょう。
保険料を節約しすぎていざというときのために役に立たない保険では意味がありませんが、逆に保険料が毎月の家計の負担になっても良くありません。
ここからは、年代別に毎月支払う保険料の目安を解説していきます。
20代
20代のうちは入院やケガに備える医療保険を基本として、保障の基礎を作っていくのが良いでしょう。
保険は基本的に年齢が若いほど保険料が安くなる傾向があるため、20代であれば比較的保険料を抑えて保険に加入することができます。
将来のためにも、若いうちから保障を確保しておくことが大切です。
実際に20代が支払っている保険料の平均は、男性が年間約11.9万円、女性が年間約9.6万円となっており、月に換算すると約8000円~1万円前後の保険料が平均的な金額です。
もちろん、収入などの経済状況によって人それぞれ異なる部分ではありますが、ひとつの目安として参考にしてみましょう。
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