「専業主婦は将来年金をいくらもらえる?」「老後のために今から年金を増やす方法はある?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。
将来の年金でどの程度老後の生活費をまかなえるのかは、気になるポイントです。
本記事では、専業主婦の年金制度の基本から、具体的な受給額、将来のために年金を増やす方法まで、社労士がわかりやすく解説します。
老後の生活設計に不安を感じる専業主婦の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
専業主婦が受け取れる年金は「老齢基礎年金」が基本
老齢基礎年金は満額受給の場合で、月額約6万9000円
会社員として働いている期間がある人、厚生年金に加入してパートで働く人は年金を上乗せ受給できる
専業主婦の年金の仕組み【第3号被保険者とは】
会社員や公務員に扶養されている専業主婦は、公的年金制度の「第3号被保険者」に区分されます。
第3号被保険者は、自身で保険料を直接支払うことはなく、将来老齢年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。
専業主婦は第3号被保険者。保険料の負担なしで老齢年金がもらえる
日本の公的年金は、働き方によって加入する種類が異なります。
自営業者などが加入する「第1号被保険者」、会社員や公務員が加入する「第2号被保険者」、そして第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者が「第3号被保険者」です。
第3号被保険者の大きな特徴は、自身で国民年金の保険料を直接納付する必要がない点です。
保険料は、配偶者が加入している厚生年金保険(以下、厚生年金)や共済組合などの制度全体で負担する仕組みになっています。
そのため、保険料を直接は負担しなくても、国民年金の保険料を納付したものとみなされ、65歳以降は老齢基礎年金を受給できます。
保険料 見積シミュレーション
人気の商品をカンタン比較

夫が自営業や退職した場合は手続きが必要なため注意
第3号被保険者でいられるのは、配偶者が厚生年金に加入している会社員や公務員である期間に限られます。
配偶者の働き方が変わった際には、自身の年金種別の変更手続きが必要となります。
例えば、配偶者が会社を退職して自営業者(第1号被保険者)になった場合、扶養されていた配偶者も第1号被保険者へ切り替わり、自身で国民年金保険料を納付する義務が発生します。
手続きをしないと年金未納状態になってしまうため注意しましょう。
また、配偶者が老齢基礎年金を受け取れる65歳になると、第3号被保険者である専業主婦(60歳未満)は第1号被保険者への種別変更手続きをしなければなりません。
手続きは事実が発生した日から14日以内に、お住まいの市区町村の役所窓口で行う必要があります。うっかり手続きを忘れてしまうことがないよう注意しましょう。
関連記事
【年代・モデルケース別】専業主婦がもらえる年金額はいくら?
将来受け取れる年金額は、年金加入期間などによっても異なります。
モデルケース別に、いくら年金を受け取れるのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。
20歳からずっと専業主婦の場合
20歳から60歳までの40年間、一度も会社員として厚生年金に加入した経験がなく、継続して専業主婦(第3号被保険者)だった場合、65歳から受け取れる年金は老齢基礎年金のみとなります。
この場合、40年間の全期間が保険料納付済み期間として計算されるため、老齢基礎年金を満額受け取ることができます。
令和7年度における老齢基礎年金の満額は、月額で約6万9300円(年額約83万円)です。
実際の厚生労働省の統計を見ると、国民年金受給者の平均月額は約5万8000円程度と、満額とは乖離があります。
統計では、過去に保険料の未納期間や免除期間がある人も含まれるため、満額よりも低い水準となっています。
念の為、過去に未納期間がないか事前に確認しておくと良いでしょう。
(令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局)
関連記事
会社員経験がある場合の上乗せ額は?
結婚前に会社員として勤務していたなど、過去に厚生年金の被保険者であった期間がある専業主婦の方は、65歳から老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が上乗せされます。
老齢厚生年金の受給額は、国民年金のように一律ではありません。
厚生年金に加入していた期間と、給与や賞与の額(報酬比例月額)に基づいて算出されます。
報酬比例部分を求める計算式(平成15年4月以後に厚生年金に加入していた場合)
平均報酬標準額×5.481/1,000×平成15年4月以後の加入月数
会社員時代が長く、収入が高かった人ほど上乗せされる老齢厚生年金の額も大きくなります。自身の年金受給額の概算は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
(参考:老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構)
(参考:報酬比例部分|日本年金機構)
計算例)30歳まで会社員だった場合(厚生年金に8年加入)
では、具体的にどのくらい年金額が上乗せされるのか、モデルケースで試算してみましょう。
例えば、22歳から30歳までの8年間(96ヶ月)会社員として勤務し、その間の平均月収が25万円(標準報酬月額26万円)だったと仮定します。その後、結婚を機に退職し専業主婦になった場合の年金額の目安は以下のようになります。
【老齢厚生年金(年額)の目安】
約13万6800円 (計算式:26万円 × 5.481/1000 × 96ヶ月)
【65歳からの年金受給額(年額)の目安】
老齢基礎年金(満額)約83万2000円 + 老齢厚生年金約13万6800円 = 合計 約96万8800円
このモデルケースの場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて年間約96万8800円、1カ月換算で約8万円の受給額になります。
会社員経験が8年あるだけで、将来受け取れる年金額が年間13万円以上増える計算になります。
自身の正確な年金見込額は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認しましょう。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2026年1月1日―2026年1月31日)
専業主婦が将来の年金を増やす5つの方法
老齢基礎年金だけでは将来の生活費に不安を感じる人も多いでしょう。
ここからは、専業主婦が将来の年金を増やすための方法と、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
方法①iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で運用商品を選び掛金を拠出する、私的年金制度です。
会社員や自営業者の場合、掛け金が全額所得控除になる大きなメリットがありますが、専業主婦(第3号被保険者)の場合は所得がないため所得控除の恩恵は受けられません。
しかし、運用益がすべて非課税になる点は魅力といえるでしょう。
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの口座内で生じた利益は全額非課税となります。
さらに、60歳以降に一時金として受け取る際には退職所得控除が、年金形式で受け取る際には公的年金等控除が適用され、税制優遇を受けられます。
iDecoはあくまでも私的年金のひとつなので、60歳未満では受取できない点には注意が必要です。
方法②パートで働き厚生年金に加入する
将来の年金額を増やすための直接的な方法として、パートなどで働き自身が厚生年金に加入する選択肢もあります。
厚生年金に加入することで、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が上乗せ支給されるため、将来の年金受給額を着実に増やすことができます。
また、病気やケガで働けなくなった際の傷病手当金(健康保険)や、障害を負った場合の障害厚生年金など、受けられる公的保障が手厚くなるというメリットもあります。
ただし、厚生年金に加入すると、給与から厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料などの社会保険料が天引きされるため、手取りは減少します。
また配偶者の扶養から外れることで、扶養控除などの恩恵も受けられなくなります。
メリットとデメリットを天秤にかけ、今後どのように働いていくのがベストかを考えてみましょう。
あなたはどっち?「扶養内パート」vs「厚生年金加入パート」【比較表】
専業主婦の働き方を考える際、「扶養の範囲内で働く」か「扶養を外れて厚生年金に加入する」かは重要なポイントです。
それぞれのメリットとデメリットを比較し、自分と家族にとってどちらの働き方が適しているかを考える必要があるでしょう。
いわゆる「収入の壁」には106万円の壁と130万円の壁があります。
130万円の壁は、勤務先の規模や条件にかかわらず、配偶者の社会保険の扶養から外れる年収のラインです。
106万円の壁は、勤務先の規模(従業員が51人以上)や労働時間など一定の条件を満たした場合、厚生年金への加入が義務付けられるラインです。
2026年10月以降は、106万円の壁における従業員規模の要件は撤廃され、以下の条件のみとなります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8000円以上
- 雇用期間の見込みが2カ月以上
- 学生ではない
厚生年金に加入してパートをする場合、106万円や130万円といった壁を気にすることなく、収入を増やすことができるのがメリットです。
一方で、給与額からは社会保険料が差し引きされるため、収入によっては厚生年金加入前よりも手取りが減る逆転現象が起こることがあります。
そのため厚生年金に加入して働く場合は、社会保険料の負担を上回る年収を目指す必要があります。
また年収が103万円を超えた場合、配偶者の扶養控除が適用外となるため注意しましょう。
年収が103万円を超えても、パートの年収が133万円以下、配偶者の収入が1000万円以下であれば配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
配偶者特別控除の控除額は、夫婦それぞれの収入によって大きく異なるため、事前に確認しておくようにしましょう。
厚生年金に加入しながら働くことで、将来の年金に厚生年金が上乗せされるため、受給額が増えることになります。
老後への対策としてはとても有効ですが、一方で社会保険料の負担により一時的に手取り額が減少したり、扶養控除などの税制優遇が受けられなくなるデメリットもあります。
また、子どもが小さいうちはパートで長時間働くのが難しいケースもあるでしょう。
自身と家族の状況などもふまえて、どんな働き方がベストかを考えてみましょう。
(参考:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省)
(参考:配偶者特別控除|国税庁)
方法③国民年金に任意加入する(60歳~65歳)
60歳になった時点で国民年金の保険料納付済期間が40年(480カ月)に満たない人は、60歳から65歳までの間、国民年金に任意で加入することができます。
任意加入制度を利用することで、老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができます。
学生時代に保険料を納めていなかった期間がある人や、海外に居住していて国民年金に加入していなかった期間がある人は、任意加入制度の対象になる可能性があります。
老齢基礎年金が満額受給でない人は、まずはお近くの年金事務所で加入資格や増額の見込み額を確認しましょう。
方法④付加年金に加入する
付加年金とは、毎月の国民年金保険料に少額を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やすことができる制度です。
対象者は、自営業者などの第1号被保険者や、前述の任意加入被保険者です。
専業主婦(第3号被保険者)の期間は加入できませんが、配偶者の退職などで第1号被保険者になるか、60歳~65歳で任意加入被保険者になった場合は付加年金への加入を検討できます。
付加年金の保険料は月額400円と、とてもお手頃です。
毎月400円を上乗せして収めることで、将来受け取る老齢基礎年金に「200円 × 付加保険料を納めた月数」で計算された金額が、生涯にわたって上乗せされます。
例えば5年間(60カ月)付加保険料を納めると、年金額が1万2000円(200円×60カ月)増えます。支払った保険料の総額は2万4000円なので、年金を受け取り始めてからわずか2年で元が取れる計算になります。
方法⑤繰下げ受給で受給額を増やす
繰下げ受給とは、原則65歳から受け取りが始まる老齢年金を、66歳~75歳までの希望するタイミングまで遅らせて受け取ることで、年金額を増額させる制度です。
年金受給を1カ月繰り下げるごとに、受給額は0.7%ずつ増額します。
この増額率は一度決まると生涯変わることはありません。
例えば、受給開始を70歳まで5年間繰り下げると年金額は42%(0.7% × 60カ月)増額されます。
上限である75歳まで10年間繰り下げた場合、年金額は最大で84%(0.7% × 120カ月)も増やすことが可能です。
65歳時点である程度の貯蓄があり、すぐに年金に頼る必要がない人にとっては、年金受給額を増やすとても有効な手段になるでしょう。
一方で、いくら長生きの時代といわれていても、自分が何歳まで生きられるか分からないので繰り下げ受給は不安と考える人もいます。
65歳時点での資産額やライフプランに合わせて、年金の受給年齢を決めることが大切です。
(参考:年金の繰下げ受給|日本年金機構)
保険料 見積シミュレーション
人気の商品をカンタン比較

専業主婦の年金に関してよくある質問
ここからは、専業主婦の年金受給に関してのよくある質問に、FPの筆者が分かりやすく回答します。
Q. 離婚した場合、年金はどうなりますか?
A.離婚した際には「年金分割」の制度を利用することができます。
年金分割とは、婚姻期間中に元配偶者が納めた厚生年金の保険料納付記録の一部を分割し、自身の年金記録として将来受け取ることができる仕組みです。
分割の対象となるのは、あくまで婚姻期間中の厚生年金部分に限られ、国民年金(基礎年金)は対象外です。
年金分割には、夫婦間の話し合いまたは裁判所の決定で分割割合を決める「合意分割」と、専業主婦(第3号被保険者)であった期間について、相手の厚生年金記録の半分を請求できる「3号分割」の2種類があります。
年金分割の手続きは、原則離婚した日の翌日から2年以内に行う必要があります。
(参考:離婚時の年金分割|日本年金機構)
Q. 夫が亡くなったら、遺族年金はもらえますか?
A.夫に生計を維持されていた遺族は、一定の要件を満たすことで遺族年金を受け取ることができます。
夫が会社員や公務員だった場合、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類を受給できる可能性があります。
遺族基礎年金は、亡くなった夫に18歳年度末までの子どもがいる場合に支給されます。
子どもがいない家庭や、すでに子どもが成人している場合は受給の対象外です。
例えば子どもの人数が1人の場合、遺族基礎年金の年間受給額の目安は、107万1000円(83万1700円+子の加算23万9300円)となります。
一方、遺族厚生年金は、亡くなった夫が厚生年金に加入していた場合に支給される年金です。
子どもの有無にかかわらず受け取ることができ、受給額は夫の厚生年金の加入期間や収入に応じて決まります。
(参考:遺族年金|日本年金機構)
(参考:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構)
関連記事
Q. 「第3号被保険者制度」はなくなると聞きましたが本当ですか?
A.2025年現在、第3号被保険者制度がすぐに廃止されると正式に決定したわけではありませんが、制度改正に向けた議論が進められていることは事実です。
第3号被保険者制度は1985年に創設された制度で、会社員や公務員に扶養されている配偶者を守るためのものでした。
しかし近年、少子高齢化が進んでいることや共働き世帯の増加など、社会構造の大きな変化に伴って、制度の見直しや将来的な廃止に向けた議論が進められています。
議論の背景には、保険料を納付している共働き世帯との公平性の問題や、扶養の範囲内で働くために労働時間を調整する「年収の壁」が、人手不足の一因とされていることなどが挙げられます。
2025年に成立した年金制度改革法では、第3号被保険者制度の在り方について、国民的な議論のもとで検討を進めることが盛り込まれました。
今後の法改正の動向を注視しつつ、制度に依存しすぎない働き方を検討し、将来のための資産形成に自主的に取り組むことが大切といえるでしょう。
まとめ
今回は、専業主婦が将来受け取れる年金額について、詳しく解説してきました。
専業主婦が受け取る年金は、国民年金から支給される老齢基礎年金が基本です。
20歳から60歳まで第3号被保険者だった場合の受給額は、満額で月額約6万9000円が目安となります。
過去に会社員として厚生年金に加入した期間があれば、加入期間や収入に応じて老齢厚生年金が上乗せされます。
ご自身の正確な年金見込み額は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認しておきましょう。
第3号被保険者制度については、将来的に見直される可能性も議論されています。
制度の変化に対応するためにも、まずは年金制度を正しく理解し、自身のライフプランに合った対策を早めに検討しておくことが大切です。
保険料 見積シミュレーション
人気の商品をカンタン比較




















