夏の暑さが年々厳しくなる中、熱中症の患者数は増加傾向にあります。
熱中症になるとどれくらい医療費がかかる?と疑問に思っている人もいるかもしれません。
中には、「熱中症で病院にかかると健康保険が使えない」と誤解しているケースもあるようです。
熱中症によって医療機関で治療を受けた場合、公的医療保険が適用されます。
また、入院が必要になった場合は、民間の医療保険で給付金を受け取れるケースもあります。
今回は、夏を迎える前に知っておきたい熱中症への備え方を、保険のプロが紹介します。
この記事を読んでわかること
熱中症の治療は健康保険が使える
入院が必要な場合や、夜間・休日の受診では自己負担額が高くなることもある
熱中症に備える少額短期保険や、医療保険に加入していれば、入院時の費用をカバーできます
目次
熱中症は健康保険を使える
熱中症で緊急搬送されたり病院で処置を受けた場合、健康保険の適用対象となり、現役世代であれば医療費は3割負担となります。
また、救急搬送が必要な場合、救急車の利用は基本的に無料です。
熱中症は命に関わることもあるため、緊急時には迷わず救急車を利用してください。
比較的軽傷の場合、数千円程度の支払いで済むことがほとんどですが、入院が必要な場合は自己負担額で数万円必要になるケースもあります。
また、夜間や休日に救急外来を利用すると、その分治療費が高額になることもあります。
いずれにしても、熱中症で治療を受けた場合は健康保険を利用できます。少しでも不安に感じたら、迷わず医療機関を受診しましょう。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2025年6月1日-2025年6月30日)
熱中症は「健康保険が使えない」と誤解される理由
熱中症の治療は健康保険が適用されますが、一部で「健康保険は使えない」との誤解が広がっているようです。
理由として、労災で熱中症になった場合は健康保険の対象とならないことから、通常の診療でも健康保険が使えないと誤認が生まれた可能性が考えられます。
業務中に熱中症になった場合、労災保険を請求できる可能性があります。
労災を使うときは健康保険を利用せず、労災保険の手続きを行う必要があります。
もし健康保険を利用してしまった場合は、切り替えのための手続きが必要になります。
また、熱中症に関する治療に「予防的措置」のイメージがあり、健康保険が使えないとの誤認につながっていることも考えられます。
もちろん、普段から水分補給を意識したり暑さ対策をすることは熱中症の予防策になります。
しかし、熱中症の症状が現れて医療機関にかかった時点で、熱中症の「治療」を受けたことになるため、健康保険が利用できます。
熱中症は民間の保険の保障対象になる?
熱中症の治療費は健康保険が適用されますが、民間の保険で受け取れるお金はあるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
医療保険の場合
熱中症が原因で入院が必要になった場合、医療保険で給付金を受け取れる可能性があります。
医療保険は、病気やケガによる入院・手術を保障する保険です。
熱中症も病気のひとつとされるため、中等症以上で入院が必要になったケースなど、入院給付金が支払われる場合があります。
また、保険会社によっては日帰り入院でも保障対象となることもあるため、加入中の保険の保障内容については事前に確認しておきましょう。
熱中症で受け取れる可能性がある給付金
・入院日額給付金
・入院一時金
など
また近年では、熱中症に備える特約を付加できる医療保険が一部の保険会社で販売されています。
関連記事
傷害保険の場合
傷害保険は、偶然の事故によるケガに対して給付金が支払われる損害保険です。
熱中症は通常事故ではなく疾病として扱われるため、傷害保険の対象外となることが一般的です。
ただし、一部の保険では熱中症を対象とした特約を付加できるものもあるため、あらかじめ保障内容や特約内容について確認しておきましょう。
死亡保険の場合
死亡保険は被保険者が死亡した場合に保険金が支払われる保険で、熱中症による死亡も保障対象に含まれることが一般的です。
熱中症は命に関わる病気です。万が一のことがあった場合は、加入している死亡保険で保険金がおりる可能性があります。
考えたくないことですが、万が一に備えて加入中の保険の内容は家族にも伝えておきましょう。
関連記事
熱中症とは
熱中症とは、高温多湿な環境に長時間さらされることで体温が上昇し、体内の水分や塩分が不足したり体温調節機能が働かなくなってしまうことで発生する病気です。
熱中症の症状は比較的軽いものから重篤なものまでさまざまで、放置すると命に関わることもあります。
特に高齢者や子どもは体温調節機能が未熟または低下しているため、リスクが高いとされています。
熱中症の重症度は、Ⅰ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)の3段階に分類されます。軽症ではめまいや立ちくらみ、大量発汗が見られ、中等症では頭痛や吐き気、倦怠感、虚脱感といった症状があらわれます。
重症では意識障害やけいれん、高体温が伴うため、早急な治療が必要です。
参考)熱中症で緊急搬送された人数
総務省によると、2024年5月~9月の熱中症による救急搬送件数は9万7578件にのぼります。
10年前の2014年は4万48件となっており、10年で倍以上に増加していることがわかります。
年齢の内訳を見ていくと、高齢者(満65歳以上)が最も多く5万5966人、全体の57.4%を占めています。
次いで成人(満18歳以上満65歳未満)が3万2222人で33.0%、少年(満7歳以上満18歳未満)が8787人で9.0%、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)が601人で0.6%となっています。
外で働くことが多い年代の人はもちろん、最もリスクが高いのは高齢者であることがわかります。
また、発生場所としては「住居」が最も多く3万7116人で、全体の38.0%となっています。
屋内でも、クーラーをつけずに高温多湿の中で過ごしていると熱中症のリスクは高まります。高齢者の場合暑さに気づきにくく、知らないうちに室内が高温になっていることもあるため、注意が必要です。
熱中症の医療費の自己負担額の目安
熱中症の治療にかかる医療費は、症状の重症度や治療内容によって大きく異なります。
健康保険が適用される場合でも一定の自己負担は発生するため、症状ごとに目安となる金額を把握しておくことが重要です。
ここでは、軽傷(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分けて解説します。
軽傷(Ⅰ度)の場合
軽傷(Ⅰ度)の熱中症は、症状としてめまい、立ちくらみ、筋肉痛、大量発汗などがみられます。
軽傷の場合は一般的に点滴治療や水分補給を行います。
仮に熱中症で点滴治療を受けたとすると、治療費の概算は次の通りとなります。
※2025年6月18日時点
- 初診料 291点
- 点滴注射 102点
6歳以上で1日分の注射量が500ml以上の場合
医療費概算 3930円
自己負担額(3割) 1179円
これに加え、熱中症の場合は血液検査や尿検査を行う場合があるため、2000円~3000円程度の自己負担を想定しておくと良いでしょう。
ただし、夜間や休日に救急外来を受診すると、追加料金が発生する可能性があるため注意が必要です。
中等症(Ⅱ度)の場合
中等症(Ⅱ度)の熱中症は、頭痛や吐き気、倦怠感、虚脱感などの症状が現れる段階です。
中等症になると病院への搬送が必要になり、短期の入院による治療が必要となることもあります。
入院が必要になった場合、初診料や入院基本料、検査料、点滴治療にかかる費用などが加算され、自己負担額は1日あたり数万円にのぼる可能性があります。
入院が長引くとさらに自己負担額は大きくなるため、注意が必要です。
重症(Ⅲ度)の場合
重症(Ⅲ度)の熱中症は、意識障害やけいれん、高体温といった命に関わる危険な症状がみられます。
救急搬送後に集中治療室(ICU)での治療やさまざまな検査、長期の入院が必要になることもあります。
入院が長引いた場合、医療費の総額が100万円以上になるケースも珍しくありません。
健康保険適用後の自己負担額は約30万円ですが、高額療養費制度を利用することでさらに自己負担額を軽減させることができます。
しかし、想定していない数万円~数十万円の出費は家計へ影響を与えかねません。
民間の医療保険で、入院費用をカバーしておくのも選択肢のひとつです。
(参考:熱中症について|全日本病院協会)
熱中症の予防方法ともしものときの備え
熱中症を防ぐには、普段から対策しておくことが大切です。
ここからは、熱中症の予防方法と、もしものときに備えられる民間の保険をご紹介します。
熱中症の予防方法
近頃は毎年のように猛暑が続いており、外出するのに危険を伴うほどの高温になることもあります。
日中は無理な外出を控え、屋内でもクーラーを使用するなどして温度管理をすることが大切です。
また、こまめな水分・塩分補給も欠かせません。
特に高齢者の場合、体温調節機能の低下によって暑さやのどの渇きを感じにくくなります。
室温を意識し、のどが乾いていなくても定期的に水分補給を行うようにしましょう。
熱中症に特化した保険
近年では、熱中症に特化した少額短期保険も販売されています。
保険期間は1日~7日間など短期のものから、1カ月~半年など中長期のものなどさまざまです。
レジャーやイベントの際に熱中症の保障を用意しておきたい人は、保険期間を数日単位で選べるものが良いでしょう。夏の間熱中症に備えておきたい人は、中長期で保険期間を選択できるものがおすすめです。
熱中症に備える少額短期保険は、あくまでも熱中症による治療や入院のみが保障対象になります。
そのほかの病気やケガも幅広くカバーしたい人は、医療保険への加入を検討しましょう。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2025年6月1日-2025年6月30日)
民間保険の活用
熱中症を含め、あらゆる病気やケガによる入院・手術に備えられるのが医療保険です。
熱中症で入院治療が必要になった場合、医療保険の給付金で費用をカバーすることができます。
熱中症による入院は比較的短い傾向にあります。
そのため、加入している医療保険で日帰り入院や1泊2日の入院も保障対象となっているかを確認しておくとよいでしょう。医療保険の保障内容が古くなっている人は、これを機に見直しを検討してみるのもおすすめです。
関連記事
緊急時の備え
夏を迎えるにあたり、万が一熱中症になってしまった時を想定して、事前準備をしておきましょう。
まず、緊急連絡先や近隣の医療機関を確認しておくことが重要です。
また、救急セットやスポーツドリンクなどの必需品を常備しておくと、いざというときに迅速に対応できます。
特に中等症や重症の場合は命に関わる可能性もあるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
事前に準備しておくことで、落ち着いて対処することができるでしょう。
熱中症で医療費が高額になったら?負担を軽減する公的制度
中等症や重症の熱中症の場合、入院が必要になり医療費が高額になる可能性もあります。
ここからは、熱中症の治療で利用できる公的制度についてみていきましょう。
高額療養費制度
熱中症で医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用することで負担を軽減することができます。
高額療養費制度とは、1カ月の医療費が一定の自己負担限度額を超えた場合、その超過分が返還される制度のことです。
健康保険や国民健康保険に加入している人は全員利用できる制度です。
自己負担限度額は収入や年齢によって異なり、69歳以下の場合は次のとおりです。
例えば所得が一般的な家庭の場合、ひと月あたりの限度額は約9万円程度とされています。
そのため、熱中症で入院し医療費が高額になったとしても、1カ月の自己負担額は最終的に9万円程度に抑えられることになります。
ただし、個室療養を希望した際の差額ベッド代や、入院中の食費は別途負担が必要です。
特に1人部屋を希望した場合、1日あたり8000円以上必要になることが一般的です。
「貯蓄が十分になく医療の負担に不安を感じる」「入院時は個室で療養したい」という人は、民間の医療保険を検討してみても良いでしょう。
関連記事
医療費控除
熱中症の治療にかかった医療費は、確定申告時に医療費控除の対象となる可能性があります。
医療費控除とは、1年間で支払った医療費の総額が10万円以上(所得が200万円未満の場合は所得金額の5%以上)となった場合、超過分を所得から差し引くことができる制度です。
熱中症の治療にかかった費用はもちろん、そのほかの病気やケガで医療機関を受診した際にかかった費用も合算することができます。
医療費控除を受けるためには、治療にかかった費用の領収書を保管しておくことが大切です。
対象となるのは治療費や処方薬の購入費、場合によっては通院に要した交通費なども含まれます。
まとめ
今回は、熱中症の治療にかかる費用や必要な備えについて解説してきました。
熱中症の治療にかかった医療費は、健康保険が適用されます。
現役世代の場合は3割負担で治療を受けられ、緊急時の救急車利用には費用がかかりません。
熱中症の症状が見られたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
ただし、熱中症で入院が必要な場合、重症度によっては自己負担額が大きくなる恐れもあります。
必要に応じて熱中症に備える少額短期保険や、民間の医療保険を検討しましょう。
ほけんのコスパでは、複数の保険会社の医療保険を掲載しています。
年齢と性別を入力するだけで簡単に保険料の比較も可能です。
ぜひ、保険選びの参考にしてください。
あなたの年齢で医療保険の保険料はいくら?
