貯金1000万円あっても保険は必要?FPが保険の優先順位と見直しのポイントを解説

貯金1000万円あっても保険は必要?FPが保険の優先順位と見直しのポイントを解説

(最終更新日:

執筆者:

橋本 優理

監修者:

高橋 明香

「貯金が1000万円あれば、もう保険は必要ないのでは?」

こんな疑問をお持ちではありませんか?

ある程度の資産を築くと、これまで当たり前のように支払ってきた保険料が本当に必要なコストなのか、見直したくなるのは自然なことです。

本記事では、貯金が1000万円以上あるからこそ見直すべき保険優先順位を、お金の専門家であるFPが徹底解説します。

この記事を読んでわかること

  • 貯蓄が1000万円以上あれば医療保険の必要性は低くなる

  • 想定外の治療費等で貯蓄を取り崩したくないなら、がん保険や就業不能保険の加入を検討しましょう

  • 幼い子どもがいる家庭は、万が一に備えて掛け捨ての死亡保険を最低限用意しておくのがおすすめ

貯金1000万円なら「医療保険」は不要な可能性が高い

結論として、自由に使える貯金が1000万円以上ある場合、高額な医療費に備えるための医療保険は不要な可能性が高いでしょう。

日本の公的制度と貯蓄で、突発的な入院や手術には対応できる可能性があります。

理由1:公的制度「高額療養費制度」で医療費は月10万円以下に

日本の公的医療保険制度は、世界的に見ても充実しています。

特に「高額療養費制度」は、入院や手術を受けた際に医療費を大幅に削減できる優れた制度です。

高額療養費制度とは、1カ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合、その差額が払い戻される制度です。

上限額は年齢や収入によって定められており、現役世代であれば次のとおりです。

例えば年収約370万円~約770万円の世帯であれば、1カ月の自己負担額上限は8~9万円程度に収まります

さらに、同じ年に高額療養費制度を3回以上利用すると、4回目からは「多数回該当」となり、自己負担上限額が約4万4000円まで引き下げられます。

がん治療などで長期間の支払いが発生した場合でも、負担は一定まで軽減される仕組みです。

ただし、注意点もあります。

高額療養費制度は年収が高い人ほど毎月の負担上限額が大きくなります。

年収が1160万円を超えると、1カ月の医療費上限は26万円前後まで跳ね上がります

入院や手術が長引くと、想定以上に医療費がかさむ恐れがあるため、注意が必要です。

また、個室療養の際に必要になる差額ベッド代や先進医療にかかる費用は、別途全額自己負担が必要です。

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どんなケースでも「10万円以内で済む」わけではないため、制度の仕組みと保障範囲について正確に知っておくことが大切です。

理由2:1000万円が枯渇する病気は極めて稀

高額療養費制度を踏まえると、実際に貯金1000万円を使い切るほどの医療費がかかるケースは限定的です。

生命保険文化センターの調査によると、入院1回あたりの平均自己負担費用は19.8万円となっています。

貯蓄が1000万円あれば、問題なく自己資金で入院費用をまかなうことができるでしょう。

また、治療が長期化しやすいがんの場合でも、年収500万円の人が5年間治療を継続したと仮定した際の自己負担総額は次のとおりとなります。

高額療養費の自己負担上限:約8万円

治療4カ月目からは多数回該当:4万4000円


1年目の治療費:63万6000円

8万円×3カ月=24万円

4万4000円×9カ月=39万6000円


2年目以降の治療費:211万2000円

4万4000円×12カ月=52万8000円 ※2年目以降は健康保険加入者が変更されない限り多数回該当とする

52万8000円×4年間=211万2000円


5年間の治療費274万8000円

5年間治療を続けたとしても、医療費としての負担は300万円以内に収まる計算となります。

またこれに加えて健康保険が適用されない「先進医療」を受けた場合、陽子線治療や重粒子線治療の技術料は200万円~300万円ほどになるため、1000万円の貯蓄があれば十分まかなうことができる計算になります。

ただし、収入が多い人は高額療養費の上限額も上記のシミュレーションより高くなるため注意が必要です。

また、日本未承認の治療である「自由診療」を受けた場合、トータルの費用が1000万円を超えることも考えられます。

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自身がどんな治療を受けたいかによって、民間保険の必要性は変わります。

(参考:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター)

理由3:保険料を支払うより「運用」した方が合理的

医療保険に支払う保険料は、「起こる確率は低いがいざ起こると経済的な負担が大きいリスク」への掛け金です。

貯金が1000万円あればある程度のリスクには自己資金で対応できるため、保険料の支払がもったいないと感じる人もいるかもしれません。

例えば、月々3000円の保険料を30年間支払うと、総額は108万円になります。

もし同じように月3000円を積立投資し、年利5%で30年間運用できた場合、約245万円に増える計算になります。

保険料として消費してしまうお金をNISA等で資産運用することで、将来の資産を増やすことができるかもしれません。

とはいえ保険には、支払条件に該当したときに「決まった額」を受け取れる安心感もあります。

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資産運用と保険を上手に組み合わせることも、リスクヘッジのひとつです。

(参考:つみたてシミュレーター|金融庁)

ただし「死亡保険(生命保険)」は1000万円では足りないケースがある

万が一のことがあった場合、1000万円の貯蓄では不足するケースもあります。

死亡保険の目的は、医療費のような一時的な支出を補うことではありません。

大黒柱を失った家族が、その後の数十年にわたる生活費や子どもの教育費を維持するための、所得の代替となるものです。

では、死亡保険の必要性について考えてみましょう。

幼い子どもがいる家庭の必要保障額

子どもがいる家庭では、のこされた家族の生活費に加えて、将来の教育費を準備する必要があります。

2023年の文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの学習費総額は、すべて公立の場合で約614万円、すべて私立の場合で約1960万円となっています。

さらに大学費用をふまえると、数千万円規模の資金が必要になる可能性があります。

教育費とのこされた家族の生活費を、1000万円の貯蓄ですべてまかなうのは困難です。

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子どもがまだ幼い場合や扶養家族が多い場合、不足する額は死亡保険で用意しておく必要性が高くなるでしょう。

(参考:令和5年度子供の学習費調査|文部科学省)

遺族年金だけで生活できるかシミュレーション

一家の大黒柱が亡くなった場合、公的年金から「遺族年金」が支給される可能性があります。

のこされた家族の生活を支える大切な収入源となりますが、遺族年金だけでそれまでと同じ生活水準を維持するのは難しいのが現実です。

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、自営業やフリーランスの人が亡くなった場合は遺族基礎年金、会社員や公務員が亡くなった場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れる可能性があります

遺族基礎年金を受給できるのは、子のいる配偶者か子自身です。

2025年の実績では、遺族基礎年金の受給額は次のとおりです。


83万1700円 + 子の加算額(1人目および2人目 各23万9300円/3人目以降 各7万9800円)

子どもが1人いる配偶者が受け取る遺族基礎年金は、107万1000円で、1カ月換算で約9万円となります。

生活費や教育費をまかなうには不十分な額と言えるでしょう。

会社員や公務員の場合、基礎年金に上乗せして厚生年金も受け取ることができますが、受給額は現役時代の収入によって大きく異なります。

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幼い子どもがいる家庭の場合、年金だけに頼るのは心もとないのが実情です。

(参考:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構)

貯金1000万円の人が見直すべき保険の優先順位

貯金1000万円を達成したら、保険の見直しを検討しましょう。

すべての保険を解約するのではなく、リスクの大きさと貯金でカバーできる範囲を基に、優先順位をつけて整理することが大切です。

ここからは、解約や減額を検討して良い保険と、継続すべき保険をそれぞれ解説します。

【即解約・減額を検討】医療保険・個人年金

貯蓄である程度のリスクをカバーできるようになった今、次の保険は見直しの優先順位が高くなります。

  • 医療保険
  • 個人年金保険

高額療養費制度と1000万円の貯金があれば、入院や手術にかかる費用はほとんど自己資金で対応できます。

保険料を払い続けるより、その分を資産運用に回す方が合理的な場合もあります。

ただし、治療費が高額な先進医療に備えたい場合、主契約を最低限にして「先進医療特約」を付加したプランに見直すのもおすすめです。

個人年金保険は、生命保険料控除を利用できるメリットもありますが、NISA等で資産運用をしたほうが貯蓄効率が良い可能性があります。

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加入から10年以上経過していれば、解約せずに毎月の保険料支払だけをストップできる商品も多いため、一度確認してみることをおすすめします。

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【継続・乗り換えを検討】掛け捨ての死亡保険・がん保険・就業不能保険

一方で、貯金1000万円だけではカバーしきれないような、発生した場合の影響が非常に大きいリスクに備える保険は、継続を検討する価値があります。

  • 死亡保険
  • がん保険
  • 就業不能保険
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扶養家族がいる場合、1000万円の貯蓄ではのこされた家族の長期的な生活費や教育費をすべてまかなうのは難しい可能性があります。

割安な「掛け捨て型」の定期保険で、必要な期間だけ大きな保障を確保する考え方が合理的です。

また、貯蓄が十分にあったとしても、がん保険は継続を検討するのがおすすめです。

がん治療は長引く傾向にあり、貯蓄の多くを取り崩す事態に陥る恐れがあります。

1000万円の貯蓄は、子どもの教育費や老後資金のためと思って貯めてきたお金かもしれません。

その大半を予期せぬがん治療で使ってしまうのは、精神的にも大きな負担となるでしょう。

再発や転移にも備えられるがん保険に加入しておくことで、いざというときにも前向きに治療に取り組むことができます。

また、病気やケガで長期間働けなくなった場合の収入減少リスクは、医療費以上に家計への打撃が大きくなります。

特に傷病手当金のない自営業やフリーランスで働く人は、就業不能保険の加入を検討しておくと良いでしょう。

ゼロにするのが怖い人へ:賢い「保険の残し方」

「理屈では不要なのは分かったけれど、保険をすべて解約するのは不安」と感じる人もいるのではないでしょうか。

保険をすべて解約するのが怖い人は、保障内容を最適化し保険料を抑えながら、賢く保険を継続するのがおすすめです。

「掛け捨て」×「必要最低限」に絞って固定費を圧縮

保険には、解約時に返戻金がない「掛け捨て型」と、貯蓄機能も兼ね備えた「貯蓄型」があります。

貯金が1000万円ある場合、資産形成は保険に頼る必要性は低いでしょう。

保険は「保障」機能に特化させ、割安な保険料で必要な保障だけを確保できる「掛け捨て型」に絞り込むのが合理的です。

例えば、扶養家族がいるなら掛け捨ての死亡保険、自営業なら就業不能保険といったように、貯金だけではカバーしきれない大きなリスクに的を絞りましょう

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保険料を月々数千円程度に圧縮することで、残りの額を貯蓄や投資に回すことができます。

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ライフステージが変わるごとに見直しを行う

保険の必要性は、ライフステージの変化に応じて変わります。

一度加入したら終わりではなく、定期的に見直しを行うことが重要です。

特に、次のようなタイミングは見直しの良い機会です。

  • 結婚・出産:家族が増え、死亡保障の必要性が高まる
  • 住宅購入:団体信用生命保険に加入することで、必要な死亡保障額が減少する
  • 子どもの独立:教育費の負担がなくなり、必要な死亡保障額が大幅に減少する
  • 退職:収入が年金中心になり、家計の収支が変わる
  • 貯蓄の増加:医療保障の必要性が低くなる

例えば、子どもが独立すれば、高額な死亡保障は不要になります。

そのタイミングで保険を減額または解約することで、老後の家計負担を軽減できます。

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ライフステージの変化に合わせて定期的に保険の見直しをすることで、常に最適な保障を最適な保険料で維持しましょう。

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Q1

入院時の費用は?

参考:

貯金1000万円ある人の保険に関するよくある質問

ここからは、貯金が1000万円以上ある人の保険選びについてよくある質問に、プロがわかりやすく回答します。

Q. がんの「先進医療」を受けたら1000万円でも足りませんか?

A.1回の治療費だけで考えれば1000万円で十分対応が可能です。

がんの先進医療(重粒子線治療など)は公的保険適用外で、自己負担額は約200~300万円ほどです。

1000万円の貯蓄があれば基本的には対応可能でしょう。

先進医療を受ける頻度は高くないため過度な心配は不要ですが、貯蓄を取り崩す事態を避けたいのであれば、医療保険やがん保険に「先進医療特約」を付加しておくことをおすすめします。

特約の保険料は月々100円前後とお手頃なため、お守りとして契約しておくのも良いでしょう。

Q. 独身の場合、死亡保険は解約しても良いですか?

A.扶養する家族がいない独身の場合、高額な死亡保険は不要です。

自身の葬儀費用(約150万~200万円)などを貯蓄でまかなえるのであれば、解約して問題ないでしょう。

親族に迷惑をかけたくない場合は、葬儀費用分として少額の終身保険をのこす方法もあります。

Q. 貯金を取り崩すのが怖いです。安い保険なら入っても良い?

A.経済合理性だけでは割り切れない「安心感」も大切です。最低限の保障を確保しておくと良いでしょう。

もしもの際に貯蓄が減ることへの不安が強いのであれば、精神的な安定のために自身が納得できる範囲の保険料で加入を検討しましょう。

あくまで「お守り」と割り切り、家計を圧迫しない最低限の保障に留めることがポイントです。

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Q. 貯金1000万円あっても「介護」の備えは必要ですか?

A.介護は長期化しやすいため、今の貯蓄とは別に備えておく必要性が高いでしょう。

介護は期間が長期化しやすく、公的介護保険だけでは費用をまかないきれないケースもあります。

1000万円の貯蓄は大きな支えになりますが、どのような介護を望むかによっては不足する可能性も否定できません。

施設への入所を視野に入れる場合、必要な費用は在宅での介護よりも大きくなります。

ただし、介護リスクが高まるのは基本的に老後です。

現役で働いているうちは、資産運用で備えることを優先するのが合理的といえるでしょう。

Q. 今入っている医療保険を解約するタイミングは?

A.すぐに解約するのではなく、まず保障内容を正確に把握してから検討しましょう。

「貯蓄があるから保険は不要」とすぐに解約するのではなく、まずは保険証券等で保障内容を確認してみましょう。

先進医療特約など今後も継続しておきたい保障が付加されていれば、安易に解約せずそのままにするか、主契約を減額して保険料を抑えられるように工夫するのもひとつの方法です。

保険は解約するとその時点で保障が消滅します。

女性コンシェルジュ

元に戻すことはできませんので、解約のタイミングは慎重に判断する必要があります。

まとめ

貯金が1000万円を超えると、保険の必要性について改めて考える人も多いでしょう。

これまで「万が一」に備えるために支払ってきた保険料を、これからは「資産を増やす」ための投資に振り分けることを検討しましょう。

一方で、幼い子どもがいる場合は死亡時に備えて最低限の死亡保障を確保しておく必要があります。

どの保障の優先度が高いか、家族構成や家計の状況をふまえて判断しましょう。

ほけんのコスパでは、お手頃な保険料で万が一に備えられる保険を複数掲載しています。

保険料という固定費を最低限に抑えるため、まずは保険の見直しから検討してみましょう。

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監修者 ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者

高橋 明香

みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。

執筆者 保険ライター/2級FP技能士

橋本 優理

大学卒業後、ほけんの窓口グループ株式会社へ入社。約300組のライフプランニングを行い、保険販売業務に従事。その後、異業種にて法人営業を経験し、株式会社エイチームフィナジーで保険EC事業の立ち上げに参画。インターネット上で保険の無料相談ができるサービスの責任者として、自身も多くの世帯のライフプランニングを行う。2023年に株式会社モニクルフィナンシャル入社。経済メディア「LIMO」で300記事以上を執筆。現在は、より多くの人に、より気軽に、自分に合った保険の選び方を知ってほしいとの思いでコンテンツ制作や執筆作業に従事。 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、生命保険募集人資格、損害保険募集人資格保有。

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