「夫がうつ病と診断されて今後が不安」「収入が減って、住宅ローンや子どもの教育費は支払える?」
配偶者がうつ病と診断されたとき、病状の心配とともに、家計への不安が重くのしかかるのは当然のことです。
本記事では、夫のうつ病によって発生する経済的な危機を乗り越えるための具体的な方法を、FPが詳しく解説します。
利用できる公的支援制度や、ケース別の生活費シミュレーション、家族を守るためのメンタルヘルス対策まで幅広く紹介します。
この記事を読んでわかること
夫がうつ病になったら「傷病手当金」」「障害年金」などの公的支援をまず頼りましょう
夫が自営業の場合、受けられる公的支援が限られているため注意が必要
「共倒れ」を防ぐため妻自身の心のケアも大切に
目次
途絶えた収入を確保するためには?
会社員や公務員の場合、夫がうつ病で働けなくなっても、すぐに収入がゼロになるわけではありません。
公的保障や支援制度を活用することで、一定期間は収入を一定程度確保することができます。
一方、自営業の夫がうつ病で働けなくなった場合、利用できる公的制度は限られてしまいます。
まずは、公的制度の保障内容や利用条件について確認していきましょう。
当サイト経由での契約件数および各保険会社サイトへの遷移数をもとに算出(2025年11月1日―2025年11月30日)
夫の収入を補う公的支援制度
夫がうつ病で働けなくなった場合、利用できる公的支援制度には以下のものがあります。
利用できる制度は、夫が会社員か自営業かによって異なります。
また、申請には条件や期限が設けられているため、早めに確認し、手続きを進めることが大切です。
それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
傷病手当金
傷病手当金は、夫が会社員や公務員の場合に受け取れる給付金です。
連続した3日間の休業後4日目から支給対象になり、給与の約3分の2が通算1年6カ月間保障されます。
うつ病で働けなくなった場合、まずは残りの有給休暇を取得し、その後長期療養が必要であれば休職になることが一般的です。
有給休暇消化後、休職期間の4日目から傷病手当金が支給されます。
長時間労働やパワーハラスメントなど、明確に仕事が原因でうつ病を発症したと認められた場合は、傷病手当金ではなく労災保険の手当金を受け取ることになります。
働けなくなったときの大切な収入になる傷病手当金ですが、これまでの夫の給与が満額保障されるわけではないため注意しましょう。
また、傷病手当金を受給している間も、住民税や社会保険料の支払いは免除されません。
不足する生活費は貯蓄から取り崩すか、妻の収入でカバーする必要が出てくるかもしれません。
傷病手当金は自営業やフリーランスで働く人は対象外となります。会社員と比べて公的制度が手薄であるため、より一層自助努力による備えが必要です。
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障害年金
障害年金は、病気やケガが原因で仕事や日常生活に影響が出ているとき、現役世代を含めて受給できる公的年金です。
障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2階建て構造になっており、加入している公的年金の種類や障害等級によって受け取れる年金が異なります。
自営業やフリーランスで働く人の場合、障害等級1級もしくは2級に該当した場合、障害基礎年金を受け取ることができます。
会社員の場合、障害等級1級もしくは2級に該当すれば障害基礎年金と障害厚生年金のどちらも受け取ることができます。
会社員で障害等級3級に該当した場合は、障害厚生年金のみが支給されます。
受け取れる年金額は次のとおりです。
障害基礎年金(昭和31年4月2日以後生まれの方)
- 1級:103万9625円 + 子の加算額
- 2級:83万1700円+子の加算額
※子の加算額:2人目までは1人につき23万933円、3人目以降は1人につき7万9800円
障害厚生年金(令和7年4月分から)
- 1級:(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(239,300円)
- 2級:(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(239,300円)
- 3級:(報酬比例の年金額)
最低保障額62万3800円(昭和31年4月2日以後生まれの方)
※配偶者の加給年金は、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算される
報酬比例部分は、年金の加入期間やその間の収入によって決まります。
障害厚生年金の場合、年金加入期間が長く収入が高い人ほど、年金額が多くなる仕組みになっています。
(参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構)
(参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構)
失業保険(給付)
失業保険(基本手当)は、退職した人が再就職するまでの生活を支援する制度です。
うつ病でまったく働けない状態が続いている場合は失業保険を受け取ることはできませんが、求職活動ができる状態まで回復すれば申請が可能になります。
うつ病による自己都合退職でも、失業保険を受け取ることができます。
さらに、「特定理由離職者」もしくは「就職困難者」に認定されると、通常ある給付制限期間がなくなり、すぐに給付を受けられます。
就職困難者に認定されるためには、精神障害者保健福祉手帳か医師の診断書が必要です。
失業保険の給付金額は、離職時の年齢や収入によって異なります。詳しくは、ハローワークや厚生労働省の案内を確認してください。
(参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和7年8月 1 日から~|厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク)
Q.自営業の夫が働けなくなったら?
自営業やフリーランスの方は国民健康保険に加入しているため、原則として傷病手当金を受け取ることができません。
また、国民年金のみの加入となるため、障害厚生年金も受け取れません。
雇用保険への加入もできないケースが多く、求職中に失業給付を受けることもできません。
公的支援は会社員や公務員と比べて、非常に手薄です。自助努力として、いざというときの貯蓄を普段から積極的に行っておくか、就業不能保険など民間の保険を活用するなどの対策が必要になります。
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Q.専業主婦で夫が働けなくなったらどうすれば良い?
専業主婦の方が夫のうつ病により生活が苦しくなった場合、まず公的支援制度の利用を検討しましょう。
夫が会社員であれば傷病手当金や障害年金の対象となる可能性があります。
また、夫がうつ病を理由に退職した場合、健康保険と国民年金の変更手続きが必要です。
夫が会社員だったケースでは、国民健康保険への切り替えと、国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への変更が必要になります。
手続き期限は、退職の翌日から5~14日と定められていることが一般的です。
まずは自治体の担当窓口に相談してみましょう。必要な手続きに目途がついたら、妻自身が働いて家計をある程度支えていくことも検討しましょう。
医療費・生活費の支援
うつ病の治療にかかる医療費や、生活費を支援してくれる公的制度もあります。
代表的なものは以下の通りです。
- 自立支援医療制度:うつ病などの精神疾患で通院治療が必要な場合、医療費の自己負担額を軽減する制度。通常の3割負担から原則1割負担に軽減される。
- 高額療養費制度:1カ月の医療費負担が高額になった場合、自己負担上限を超えた差額が返還される制度。上限額は収入や年齢によって異なる。
- 精神障害者保健福祉手帳:精神疾患により長期にわたって日常生活や社会生活に制約がある場合に発行される手帳。税金の控除や減免、公共交通機関の運賃割引、公共施設の入場料割引など、さまざまな優遇措置が受けられる。等級は1級~3級まで。
- 特別障害者手当:精神または身体に著しく重度の障害を持ち、日常生活において常時特別な介護を必要とする20歳以上の在宅の方に支給される手当。支給額は月額2万9590円(令和2年4月より)。所得制限あり。
- 生活保護:収入や資産をすべて活用しても生活に困窮する場合に、国が最低限度の生活を保障する制度。生活費の支給に加え、医療費が無料になるなどのメリットがある。
夫がうつ病で働けなくなると、収入の減少と治療費の負担が重なり、家計に大きな影響を与えます。利用できる支援制度を知り、上手に活用することが大切です。
(参考:特別障害者手当(国制度)|東京都福祉局)
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無利子・低金利貸付制度の活用
生活費に困窮している場合、生活福祉資金貸付制度を利用できる場合があります。
生活福祉資金貸付制度とは
低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯などを対象に、生活を経済的に支えるための貸付制度のこと。無利子または年1.5%の低金利で借り入れが可能です。
生活福祉資金貸付制度はあくまでも貸付のため、将来的に返済する義務がありますが、銀行や消費者金融よりもはるかに低利子で貸付を受けることができます。
(参考:生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ「生活福祉資金貸付制度」があります。|政府広報オンライン)
妻(配偶者)が収入を得る方法
公的支援だけでは生活費が不足する場合、妻自身が働くことも視野に入れなければならないでしょう。
これまで専業主婦だった人や、扶養内で働いていた人も、状況に応じて働き方を見直す必要が出てくるかもしれません。
夫の看病や子育てとの両立を考えると、パートタイムや在宅でできる仕事から始めるのが現実的です。
すぐに正社員として働くのが難しい場合でも、まずは短時間の仕事から社会との接点を持ち、家計を少しでも支えることが、精神的な安定にもつながることがあります。
無理のない範囲で、自分にできることを見つけることが大切です。
ケース別:夫がうつ病で働けなくなった時の生活費シミュレーション
夫がうつ病で働けなくなった際の家計への影響は、状況によって大きく異なります。
夫の働き方や休職期間別に、どのような収入源があり、家計がどう変化するのかをシミュレーションしてみましょう。
【夫が会社員】うつ病で休職期間1カ月
夫が会社員の場合、休職期間中は傷病手当金と会社の休職制度が主な収入源となります。
【収入】
- 傷病手当金(支給開始日以前12カ月間の標準報酬月額の平均額の3分の2)
例)月収40万円の場合約26万7000円
- 会社独自の福利厚生がある場合は別途支給
【支出】
- 住宅ローン/家賃
- 光熱費
- 食費
- 子どもの教育費
- 医療費
会社独自の福利厚生がない場合、単純に収入が約3分の2まで減少し、支出はこれまで通りか医療費の負担によりこれまでより高くなる可能性もあります。
不足する額は預貯金で補うか、妻自身が働いて稼ぐ必要がありますが、夫が休職したばかりだと長時間働くことは難しいかもしれません。
もしものために、生活予備資金として使える貯蓄を普段から準備しておくことが大切です。
【夫が会社員】うつ病で休職から1年半経過
傷病手当金の支給期間は通算1年6カ月です。それ以降は障害の程度に応じて、障害年金を受給できる場合もあります。
【収入】
- 傷病手当金 0円
- 障害基礎年金・障害厚生年金(病状や年金加入状況に応じて)
例)障害等級2級に該当した場合、障害基礎年金で年額83万1700円、障害厚生年金で年額95万7020円(配偶者の加給年金額を含む)の計178万8720円を受給できる可能性
1カ月換算で約14万9060円
傷病手当金が途絶えた後は、障害年金を受給できたとしてもさらに収入が減少する可能性があります。
支出はこれまでとほぼ変わらないため、何らかの方法で生活費を補填する必要があるでしょう。
一方で、障害等級2級以上に該当すれば国民年金保険料は法定免除になるなど、公的な支援制度を利用できる場合もあります。
【夫が自営業】うつ病で働けず収入が途絶えた
自営業者の場合、傷病手当金は支給されません。
【収入】
- 障害基礎年金(病状や年金加入状況に応じて)
例)障害等級1級の場合 103万6625円103万9625円+子の加算額
障害等級2級の場合 83万1700円+子の加算額
※子の加算額は2人目まで1人につき23万9300円、3人目以降は1人につき7万9800円
※昭和31年4月2日以後生まれの方
自営業者が受け取れる障害年金は、障害基礎年金のみです。
また、うつ病で働けなくなってすぐに障害認定を受けられるわけではありません。
障害年金がもらえるのは、初診日から1年6カ月が経過した「障害認定日」以降となります。
うつ病になってから1年6カ月間は、収入が完全に途絶えてしまう恐れがあるため、自営業やフリーランスで働く人は特に注意が必要です。毎月の生活費分、赤字が出てしまうことも考えられるため、もしものときに備えて1年~1年6カ月分の生活費を生活防衛資金として貯蓄しておくと良いでしょう。
(参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構)
あなた自身を守るためのメンタルヘルス対策
夫がうつ病になったとき、看病する家族にも大きなストレスがかかります。
経済的な問題だけでなく、精神的な負担も計り知れないでしょう。
ここからは、あなた自身を守るためのメンタルヘルス対策をご紹介します。
「共倒れ」を防ぐことが大切
うつ病のパートナーを支える上で最も大切なのは、「共倒れ」を防ぐことです。
支える側が無理をしすぎて体調を崩してしまうと、家庭全体がさらに難しい状況に陥ってしまいます。
また、ストレスから妻がうつ病になってしまうリスクもあります。
夫の病状を理解しつつ、夫に過度な期待を抱かず療養をサポートすることが大切です。
すべてをひとりで解決しようとせず、友人や両親、兄弟など話しやすい人に相談することも大切です。
精神的に疲れてしまったときは、ひとりの時間を作ることも効果的です。
近くのカフェに行ったり、趣味に没頭したりすることで、適度な息抜きになるでしょう。
つらいときに利用できる相談窓口
夫の看病や家計の不安でつらいときはひとりで抱え込まず、以下の相談窓口の利用を検討しましょう。
- 精神保健福祉センター
- 市区町村の障害福祉課などの窓口
- 精神科・心療内科
- 家族カウンセリング
- パートナー・家族向けコミュニティ
精神保健福祉センターや市区町村の窓口では、無料で相談が可能です。
自身の不眠や精神的な不調を抱えている場合、精神科や心療内科の医師に相談するのがおすすめです。通常の診療は公的医療保険が適用されます。
カウンセラーによるカウンセリングは全額自費になるため、事前に費用を確認しておくと安心です。
もしもに備える保険選び
公的支援制度や貯蓄だけでは、もしものときに不安が残るかもしれません。
ここからは、うつ病で働けなくなる事態に備える民間の保険をご紹介します。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなったときに、毎月給付金が受け取れる保険です。
ただし、ほとんどの保険でうつ病などの精神疾患は入院時のみの保障となっています。
うつ病で在宅療養を続けている状態では給付金を受け取れないため、注意してください。
就業不能保険は、働けなくなってから一定期間を経過したのちに、保障が開始されます。
短期の療養ではなく、どちらかというと中長期間の休業をサポートすることが目的の保険です。
加入時には健康状態の診査があり、うつ病と診断されてから加入することはできないため、健康なうちに検討しておくことが大切です。家族のうつ病をきっかけに、自分自身の備えを改めて見直してみましょう。
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医療保険
医療保険は、病気やケガによる入院や手術の費用をカバーする保険です。
うつ病で入院するリスクに備えるなら、医療保険の加入も検討すると良いでしょう。
就業不能保険と同様、医療保険もうつ病と診断されてからでは加入が難しくなってしまいます。
ただし、引受基準緩和型医療保険であれば、過去の入院歴がなければ検討できるものも複数あります。
精神疾患の入院日数は長引きやすいため、今のうちに入院リスクに備えておくと安心です。
参考)精神疾患の平均在院日数
2023年の厚生労働省の調査によると、「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」の平均在院日数は118.2日となっています。
全体の平均在院日数28.4日と比較すると、非常に長いことがわかります。
一度精神疾患で入院すると、短期間で退院することは難しく、その分医療費負担も大きくなります。長期入院もカバーできる医療保険で備えておくと、もしものときも安心です。
(参考:令和5年(2023)患者調査の概況|厚生労働省)
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最終的な選択:離婚を視野に入れる場合の確認事項
夫のうつ病が長期化し、家庭の経済的・精神的負担が限界に達した場合、離婚を視野に入れることもあるかもしれません。
離婚を視野に入れる場合に注意しておくべきポイントをご紹介します。
離婚を検討する前に確認しておくべきポイント
民法で定められた離婚理由のひとつとして、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと」があります。
この「強度の精神病」に、うつ病が該当するかどうかは慎重な判断が必要です。
一般的には、統合失調症や認知症などで、長期間の治療を受けても回復の見込みがない状態を指すようです。
正当な離婚理由として夫のうつ病が認められるか、弁護士に相談してみると良いでしょう。
また、夫のうつ病が原因で離婚する場合、夫への慰謝料や養育費の請求が難しくなる可能性があります。
離婚後、経済的に独立して生活していけるか慎重に判断する必要があるでしょう。
専門家への相談
うつ病を理由とした離婚は、その他の理由で離婚する場合とは異なる複雑な事情が絡みます。
ひとりで悩まず、弁護士などの専門家に相談することが大切です。
法テラスや弁護士会、市区町村の役所で無料で相談することも可能です。まずは気軽に利用してみましょう。
まとめ
夫がうつ病で働けなくなったとき、妻は経済的にも精神的にも大きな負担を抱えることになります。
しかし、傷病手当金や障害年金などの公的制度を活用することで、ある程度の収入を確保することが可能です。
希望を捨てず、一歩ずつできることから始めていきましょう。
家族のためには、あなた自身が健康でいることが最も大切です。
「共倒れ」にならないよう、ひとりで抱え込まず、精神保健福祉センターやカウンセリングなどの相談窓口を積極的に利用しましょう。
また、もしもに備えるためには民間の保険も有効です。
特に精神疾患での入院は長引きやすいため、今のうちから引受基準緩和型医療保険などで長期入院に備えておくのがおすすめです。
うつ病は本人だけでなく家族にとってもつらい病気ですが、適切な支援や対策を講じることで危機を乗り越え、未来を考える余裕を持つことができます。
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